別々の里親に引き取られた双子はその後どうなるの?
最近はちょっと、行動遺伝学の考察をキャッチアップしていました。
この分野で日本で有名なのは安藤寿康先生(慶応義塾大学名誉教授)の双子研究です。
通常、兄弟の遺伝子が50%共通であるのに対し、一卵性双生児は遺伝子がほぼ同じの天然クローンなんですね。
だから、この一卵性の双子ちゃんが養子に出されるなどして異なる環境で育ったらどんな違いが出るのか?を研究するのだそうです。(答えは後段へ)
行動遺伝学については色々と情報がありますが、最近私が手に取って読んだのはこの本です。
気鋭の論客である橘玲氏との対談…、いや、その…やっぱり読むのに体力が要る本です。![]()
このお二人の本なので、安直な内容ではないだろうとは思っていましたが、案の定、かなり高度で専門的な内容でした。
ともかく、この本に限らず安藤寿康先生の著作には必ず「遺伝率」という言葉が出てきます。
上記の本にもこのような一覧がありました。
パーソナリティにおける遺伝率・共有環境・非共有環境の影響(抜粋の抜粋)
| パーソナリティ | 遺伝率 | 共有環境 | 非共有環境 |
|---|---|---|---|
| やる気 | 57% | 0% | 43% |
| 集中力 | 44% | 2% | 55% |
| 計算 | 56% | 13% | 32% |
| 認知 | 55% | 18% | 27% |
| 学歴 | 50% | 25% | 26% |
| 基礎的な人間関係 | 30% | 36% | 34% |
| 健康への気遣い | 44% | 13% | 43% |
| 感情の不安定性 | 35% | 19% | 46% |
| 繰り返す抑うつ障害 | 52% | 4% | 44% |
| 多動障害 | 68% | 5% | 27% |
| ストレスと適応障害 | 33% | 0% | 67% |
| 情緒障害 | 63% | 6% | 32% |
| 広範囲の発達障害 | 70% | 7% | 23% |
Charles Murray(チャールズ・マレー)
『Human Diversity: The Biology of Gender, Race, and Class』より
ちょっとびっくりしますよね?
でもここで言う「遺伝率」は別に親の学歴がそのまま50%子供に遺伝するという意味ではなく…。
安藤先生によると、以下のとおりです。
遺伝率は、定義としては「表現型の全分散(ばらつき)に占める遺伝分散(遺伝で説明できるばらつき)の割合」ということ。
直感的には、「ある集団の中で相対的に、ある性質が後天的にどのくらい変わりやすい」かを表していると考えてください。つまり、遺伝率が50%の形質より、遺伝率80%の形質の方が、ある特定の社会の中で、環境によって相対的順位を変えにくいということを表しています。
(NewsWeekインタビューより)
私が行動遺伝学の話しで特に面白いと思ったのは
「ふつうは成長すればするほど学校や社会からさまざまな刺激を受けて、環境の影響が大きくなると考えます。でも実際には、そうではなくて成長とともに遺伝が顕在化する。」という点です。
で、冒頭で触れた双子の追跡研究の話しですが…、
「研究によって明らかになったのは、「あらゆる能力には遺伝がある」ということだった。
例えば、知能には4割から7割弱が遺伝の影響がある。大人になるほど遺伝の割合が増える。学業成績は、学年や科目によるが、1割強から5割強が遺伝で説明できる。知能に比べれば、学業成績のほうが環境の影響が大きい。」
— 安藤寿康氏インタビュー AERA DIGITALより
つまり、年齢を重ねるにつれて人は遺伝の影響が丸出しになるってわけですね。
やる気や集中力でさえ遺伝の影響があるんですから、落ち着きのない子に「集中しろ
」「もっと努力しろ」とはっぱをかけてもムリがありますね。
でもね、遺伝、遺伝~とういうけれど、実際のところ親に似ていない「誰に似たの?」っていう子も結構いますよね?
これについて安藤先生はこうも言っています。
「今回の本(教育は遺伝に勝てるか)で強調したかったのは、同じ親からでも、ものすごく多様な子どもが生まれうるということです。それはほとんど、私たちが住んでいるこの社会全体の遺伝的なバリエーションと同じくらいの確率です。つまり、親と似るのが遺伝だと思われているけれども、似ないのもまた、遺伝だということです」
(朝日新聞出版さんぽnote記事より)
遺伝子の組み合わせってものすごくたくさんバリュエーションがあるのだそうです。
ともかく、私としては八字(四柱推命)が扱う「生まれつきの個人差の存在」を、行動遺伝学でも遺伝というファクターで浮き彫りにしているのが面白いな~と思いました。
「運は遺伝する」の中に書かれていましたが、橘玲さんは遺伝子検査を受けて自分の気質を知ったそうです。
子供に「やる気を出せ」とか「なんでできないの」とか、口うるさく言う前に、そいういった検査で遺伝的な気質を把握するのも、なかなか有益なのではないでしょうか![]()
では、遺伝子分析が発達したら八字はもう不要なのでしょうか![]()
そういう疑問も浮かびますね。
私としてはこう思います
。
遺伝子検査が優れているところ:その人の先天的気質を細かく分析できる。
八字が優れているところ:その人の先天的気質が一生の中で、いつ、どのように表出するか、その時間経過による変化、タイミングを分析できること。
行動遺伝学も八字学も決して後天的な努力の意味を否定しているわけではありません。
環境や努力などで改善できる部分ももちろんありますよね。
ですが、勉強でも運動でも料理でも…とにかくみんな同じ土俵の上で競うのではなく、各人の努力が実を結ぶような、そんな自分に適した場所をそれぞれ探したほうがよいだろう、という考えが共通していると思います。
世間ではよく「置かれた場所で咲きなさい」と言いますが、
安藤先生は「咲ける場所に動きなさい」とおっしゃっています。
なお、冒頭ご紹介した本の中で「運は遺伝するのか」に関する議論はほんのちょっとです。
「遺伝的な性格や知能がその人の選択や行動に影響を与えることから、結局、運でさえも遺伝に影響される」とのこと。
要するに、病気になったり、強盗に遭ったり一般に運が悪かったとされる偶然も、じつは25%が遺伝で説明でき、例えば「危険な場所にいる」ことや「目立つ行動をとる」などにも遺伝の要素があるのでは?という考察をしています。
当たり前と言えば当たり前ですけどね。
改めて、すべてが遺伝の長い影に覆われているという事実は、つまり生まれつきの気質に決定される部分が大きいという八字のスタンスと整合性がありますね![]()
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