松本清張賞受賞作。正統派のローマンスです。
著者の山口恵以子さんは松竹シナリオ研究所で学んだとのこと。
映画のような長編ドラマのような、場面ごとの絵の鮮烈さ美しさ。
昭和十七年、ヨーロッパの香りを濃く漂わせるモダーンな上海租界。
ダンスホールで踊り手をつとめるのは白系ロシアやユダヤ系の女性。
歴史的な背景に目を向ければ、何気ない描写の緻密なことに驚きます。
財閥令嬢にして画家のヒロインは醜聞を武器に売れっ子になった強かな女性。
国策など知ったことではない彼女の華麗な洋装の意匠さえ物語の伏線です。
ヒロインをめぐる魅力的な登場人物たちとともに謀略に満ちた国際浪漫の旅へ。
meriyasu