長野が大会新で3連覇
  中盤から抜けだして10回目の制覇!

 

 今年最後の駅伝レースである。
 全国規模の都道府県対抗形式の駅伝といえども、男子と場合はすこし大会の重みがとがうようである。
 女子の場合は女子駅伝そのももの発祥の大会であり、中高生だけではなく、大学生。実業団ランナーにとっても、いわば檜舞台のひとつである。男子の場合は階層ごとにいくつもの駅伝があるので、どちらかというとエキシビション、お祭り的な色彩が濃厚だといえる。
 だが、年初から目いっぱいのレースをしてきた大学生、実業団のランナーはともかく、中高生にとっては、やはり大学生、実業団のランナーとチームで走れる晴れの舞台だということになるだろう。よって本大会は中高生に勢いがあり、強いチームが上位を占めるケースが多い。
 現在2連覇中の長野は昨年、あの上野裕一郎がアンカーをつとめて2連覇のゴールテープを切った。上野が爆走してというのではなく、中高生の切りひらいたビクトリーロードを上野がタスキをゴールまで運んでいったという感じであった。
 長野は今シーズンも強かった。5000m13分台の高校生をずらりと配して、シナリオ通りのレース運びで中盤からはまさに独壇場、最後は箱根で悔しい思いをしたあの駒澤大の鈴木芽吹が区間新でしめくくった。圧倒的な強さを発揮したといえる。

第1区(7km)
 レースは長崎の川原琉人がひっぱるかたちで幕あけた。1km通過は2:44、川原と岐阜の安島莉玖が一列目、後ろには京都の井上朋哉らがつけていた。宮島街道にはいったところで川原がスパートしてひとたび抜け出したが、ここは後ろもついてくる。
 3km通過は9:49、川原、安島、井上がやや前に出て、後ろには兵庫の折田壮太がひかええいる。主導権はつねに川原の手中にあり、先頭集団は15チーム。
 4kmを過ぎると、川原、安島、井上が集団を抜け出し、岡山の桑田駿介が追ってきた。なんども仕掛けたのは川原であった。4.3kmで前に出ると、井上がついてくる。長野の濱口、折田も……、そして埼玉の松井海斗も追ってきた。
 5kmすぎでは川原、井上、折田、濱口、安島がトップグループを形成、しかしここでも仕掛けたのは川原で5.3kmでロングスパート一気に前に出て、後続をひきはなしにかかった。井上、折田、井上、濱口など7チームが懸命に追うが、川原がそのままつきぬけた。19:31は区間記録を7秒更新である。
 かくしてトップは長崎、2位は6秒遅れで埼玉、3位は7秒遅れで岐阜、4位は7秒遅れで長野、5位は7秒遅れで兵庫、6位は12秒遅れで京都、7位は大阪で15秒遅れ、8位は17秒遅れで神奈川となった。
 候補の長野、埼玉、兵庫、大阪も絶好のポジションをキープしたといえる。

第2区(3km)
 中学生区間の短い区間、トップ争いが熾烈になった。
 トップをゆくのは長崎の百田好希、後ろからは兵庫の梅田大陸、岐阜の久保俊太、埼玉の利根川悠樹の2位集団が追ってきて、中間点をすぎてた1.8kmでとうとう追いついてしまう。後ろからは長野の中澤侑己も追っている。
 トップ争いは最後まで熾烈だった。
 最初に動いたのは埼玉の利根川、のこり400mでスパート、だが、のこり300mで兵庫の梅田がトップに立って、利根川が追ってゆくが、長崎の百田がもりかえしてきて、3人のマッチアップ、最後は梅田がわずかに抜け出した。
 かくして兵庫がトップ、差なく2位は長崎、3位は埼玉で01秒差、4位は岐阜で09秒差、5位は京都で15秒差、6位は長野で16秒差、7位は神奈川で17秒差、8位は岡山で21秒差となった。区間賞は和歌山の田中悠大で08:20、40位から一気に25位まで順位を押し上げた。

第3区(8.5km)
 一般区間のこの区、大学生・実業団のランナーが登場である。
 トップをゆく兵庫は坂東悠汰で1kmは2:43、とても走りは本調子ではない。すぐに長崎の林田洋翔、埼玉の久保田徹が追いついて、トップ集団になってしまう。後ろの4位集団との差は11秒……。そこには長野の伊藤大志がいる。32位発進の群馬・塩尻和也ははるか後方である。
 トップ集団からは坂東がこぼれてゆき、3.6kmでは追ってきた長野の伊藤、7人抜きの大阪の葛西潤にもとらえられてしまう。8位発進の岡山の黒田朝日は4kmで京都をとらえて5位までやってくる。
 トップ争いを制したのは埼玉の久保田、5kmすぎでは、2位は長崎、3位は大阪、4位は長野、5位は兵庫、6位は岡山、7位は京都、8位は神奈川とつづき、候補の一角・千葉は9位に甘んじていた。
 大阪の葛西の勢いはとまらない。6.3kmでは長崎をとらえて2位に浮上、トップの埼玉とも11秒まで迫ってきた。だが葛西の追撃もそこまでで、埼玉の久保田が逃げ切って中継所にとびこんだ。
 埼玉がここでトップ、2位は大阪で15秒差、3位は長崎で26秒差、4位は長野で26秒差、5位は岡山で39秒差、6位は千葉で45秒差、7位は兵庫で47秒差、8位は東京で1分11秒差であった。区間賞は大阪の葛西潤で23:22は区間新記録である。

第4区(5km) 
 トップをゆく埼玉のこの区間は長部虎太郎、後ろから長野の永原颯磨が猛然と追い上げてくる。
 JR前空駅東(廿日市市大野)の折り返しでは、トップ埼玉と永原で追う長野の差は17秒、後ろは27秒遅れて大阪、岡山、長崎、そこから40秒遅れて兵庫と千葉が競っていた。
 中間点では12秒差まで永原が追ってきた。
 長部は粘り強くトップをまもっていたが、永原の追撃は急で、じりじり背後に迫り、のこり800mでとうとう長部をとらえてしまった。
 首位交代、ここでトップに立ったのは長野、10秒遅れで2位に埼玉、3位は岡山で25秒遅れ、4位は大阪で44秒遅れ、5位は兵庫で47秒遅れ、6位は千葉で48秒遅れ、7位は東京で1分04秒遅れ、8位は1分15秒遅れで福岡となった。なお区間賞は長野・永原颯磨で14:03。

第5区(8.5km)
 長野のランナーは前回MVPで全国高校駅伝Vメンバーのひとり山口竣平(佐久長聖)で、後ろはどんどんと遠ざかってゆく。ここから長野の独り旅がはじまった。
 中間点では2位の埼玉との差は34秒、後ろは岡山、そのうしろは兵庫、大阪、千葉が競り合っていた。
 後ろからの追い上げに勢いをしめしたのは千葉、鈴木琉胤(八千代松陰)で、4人抜きで6,3kmでは埼玉を抜いて2位までやってきた。
 2位争いの激しい攻防を尻目に山口はゆうゆうトップでタスキリレー、勝負の流れは一気に長野に傾いた、2位は千葉で55秒遅れ、3位は埼玉で1分15秒遅れ、4位は岡山で1分25秒遅れ、5位は福岡で1分27秒遅れ、6位は兵庫で1分28秒遅れ、7位は京都で1分38秒遅れ、8位は大阪で1分43秒遅れであった。区間賞は長野の山口竣平で24:47である。

第6区(3km)
 中学生区間である。ここも長野の滝澤秀斗がトップをしっかりまもった。この区間になってライバルの千葉がようやく2位まで押し上げてきた。トップと2位との差はすこし詰まったが、長野の滝澤がトップをキープした。2位の千葉との差48秒だが、アンカーの鈴木芽吹なら、これでも十分のアドバンテージだったろう。
 かくして6区を終わってトップは長野、2位は千葉で48秒差、3位は岡山で1分23秒差、4位は兵庫で1分23秒差、5位は埼玉で1分26秒差、6位は京都で1分41秒差、7位は大阪で1分46秒差、8位は東京で1分49秒差となっていた。区間賞は北海道の吉田星で08:40秒だった。

第7区(13.0km)
 トップをゆく長野の鈴木芽吹は気合が入っていた。ここで箱根の悔しさを晴らそうというわけか。もう後ろからは誰もやってこない。まったくの独走にもかかわらず懸命にひた走る。後ろとの差はみるみるひろがっていった。
 5kmになるとトップ長野と2位の千葉との差は1分29秒、3位の埼玉との差は1分41秒にひろがった。
 2位以下は混沌としていたが、そのなかから抜け出してきたのは埼玉だった。埼玉のアンカー・荻久保寛也は今回も快走、じりじりと千葉の伊豫田達弥を追い上げて、8.5kmではとうとう千葉をとらえてしまい、並走状態にもちこんだ。
 長野の鈴木は終始ペースをゆるめることなく、9kmでは2位グループの埼玉と千葉との差を1分59秒にしてしまう。長野の大会新記録、鈴木の区間新もみえてきた。
 鈴木の後ろで千葉と埼玉がはげしくしのぎを削っていたが、11km手間で埼玉の荻久保が前に出ると、千葉の伊豫田にはもう追いすがる余力はなかった。
 長野の鈴木はぶっちぎりでゴールへ。鈴木芽吹は36:52、20年ぶりの区間新、チームとしての2:17:00は大会新記録となった。

 長野は大会新記録で3連覇、しかも10回目の制覇。中盤の4区でトップに立つのはシナリオ通りだっただろう。中・後半4区間のうち、3区間で区間賞を獲得、2位を2分以上もぶっちぎる圧勝であった。
 長野には実業団ランナーはひとりもいない。だが高校生、大学生は超一流、佐久長聖の先輩・後輩が爆走して、まったくつけ入るすきを与えなかった。実力的にも一枚抜けた存在だったといえる。
 2位には埼玉がとびこんできた。千葉を交わしたのは大健闘というべきか。3区の久保田徹(大東文化大)と7区の荻久保寛也(ひらまつ病院)の快走が光っている。
 3位の千葉、4位の京都、6位の兵庫、7位の福岡、8位の東京、ここまでが入賞だが、ほぼ順当な結果だといえる。
 今シーズンの駅伝レースは本大会をもってすべて終了した。
 次のシーズン(2024-25)は、パリ・オリンピックを終えてからになるから、日本長距離にとっても新しい時代の訪れ、次代を背負う若い力のあるランナーの登場を期待したい。


◇日時 2020年01月21日(日)12時30分スタート
◇場所 広島市
◇コース 広島・平和記念公園発着/JR前空駅東折り返し、7区間48Km
◇天候:晴れ 気温:14.6℃ 湿度:60.0% 風:東北東 1.0m(スタート)
◇長野(濱口大和、中澤侑己、伊藤大志、永原颯磨、山口竣平、滝澤秀斗、鈴木芽吹)
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