宮城が29年ぶり2度目の制覇
  後半の追い上げてアンカー決着!

 

  本大会「全国女子駅伝」、日本女子の駅伝の歴史は、この大会から始まっている。
 現在は中学、高校、大学、実業団と女子でも駅伝大会が整備されているが、それらは本大会がベースになっている。
 現在は駅伝シーズンの掉尾をかざるオールスター駅伝というような色彩が濃厚だが、初期のころは女子ランナーにとって晴れの檜舞台だったのである。増田明美や松野明美、福祉加代子、赤羽有紀子らも、本大会から育っていった。
 いわば顔見世的な大会となった現在も、今シーズン活躍したトップ選手が顔を見せるが、とくに大学生、実業団の選手は、それぞれチャンピオンシップの大会で、目いっぱい走ったあとなので、今大会でもベスト・パフォーマンスを期待しづらいという側面がある。 よってトップクラスの選手でも、紛れが多く、いつも優勝チームの予想がきわめてむずかしいのである。
 今回もオーダーをみわたして、優勝候補の筆頭ではないかと思われた東京が、前半で大きく出遅れてしまい、最終アンカーの新谷仁美をもってしても入賞圏にもやってこれなかった。またしても東京は初優勝をのがしたのである。
 本命不在、かくして優勝争いは最終区までもつれた。
 優勝した宮城は優勝候補の一角ではあったが、連覇をねらう大阪、地元の京都、兵庫など強敵ぞろいだった。だがメンバーのベースとなる高校生が強く、それぞれバランスよく機能して総合力で突き抜けた。京都、大阪、兵庫の地元勢、愛知、神奈川の大都市圏以外から優勝チームが出たのは2010年の岡山以来、14年ぶりのことである。

第1区(6.0km)
 雲一つない良く晴れた京の冬空……。
 スタートと同時に大分の奥本菜瑠海がトップに立った。暮れの高校駅伝と同じようにトラックの周回からトップに立ち、競技場を先頭で(1:12)とびだしていった。五条通りにに出ると石川の五島莉乃が追ってきて並走、さらに鳥取の真也加も出てきて先頭集団をひっぱった。
 1kmの通過は3:07と速い。後ろの集団とは5秒の差がついていた、だがトップ集団は早くも1.5kmで動きがあり、五島が抜け出して単独トップに躍り出た。1~2kmは3:01と区間新ペースである。
 西大路にはいったところでトップの五島と2位集団の奥本、真也加との差は8秒となり、ここから五島の独り旅がはじまった。2~3kmは3:08……
 中間点を五島は9分15秒で通過。18秒差で奥本、真也加がつづき、その後ろの4位集団との差は25秒差と大きくひらいた。
 4kmになって後続集団が追い上げ、奥本と真也加は千葉の田浦英理歌がひっぱる4位集団位のみこまれた。
 五島はなおも快走、5kmでは田浦がひっぱる2位集団との差はさらにひろがっていった。 快走する石川県のランナーに沿道から声援や拍手がまきおこるなか、五島はトップでタスキリレーした。
 かくしてトップは石川、2位は35秒遅れで千葉、3位は熊本で36秒遅れ、4位は大阪で37秒遅れ、5位は愛媛で38秒差、6位は静岡で39秒遅れ、7位は群馬で40秒遅れ、8位は宮崎で42秒遅れ……。京都は44秒遅れの11位、兵庫は59秒遅れの20位、さらに東京は2分14秒遅れの43位、エース木村友香をして大きくでおくれてしまった。区間賞は木村の同僚である五島莉乃で18:49……

第2区(4.0km)
 2区はカーブの多い4kmコースで、コースどりが大きなポイントになる。この日の解説者・小林祐梨子が29人抜きの快走で区間新記録をマークした区間である。短い区間だが、前半のポイントになりつつあり、各チームともに主力クラスのランナーを投入してきている。
 今回は兵庫の田中希実がどのような走りをするかが見どころのひとつだった。
 トップをゆくのは石川の猿見田裕香、千葉の村上美優、熊本の竹原さくらが追ってゆく。猿見田は1km=3:24とゆったりした入り、後続との差はみるみる詰まり始める。後ろからは20位発進の兵庫・田中希実がハイピッチで追い上げ、順位をあげてくる。
 北大路に出たところでは、千葉、熊本、宮崎がトップに肉薄、田中は2km通過が6:08、猛然と追ってくる。2kmでは15人抜きで5位までやってきた。もはや先頭がみえている。
 そして2.5kmでは千葉、熊本をとらえてトップに立ってしまう。田中は区間新はならなかったが、19人抜きで兵庫を20位から一気に首位まで押し上げた。
 2位は千葉で14秒差、3位は熊本で16秒差、4位は宮崎で23秒差、5位は宮城で25秒差、6位は埼玉で26秒差、7位は神奈川で29秒差、8位は広島で29秒差とつづいた。区間賞は田中希実で12:11である。小林の区間記録には4秒とどかなかった。

第3区(3.0km)
 3区は中学生の区間、京都御所に沿って烏丸通りを下り丸太町を東にゆく。短い区間だが、意外に順位争いが熾烈になる。
 田中希実の快走で好リズムに乗ったのか。兵庫の藤田莉沙が快走、うしろとの差をひらいてゆく。安定した走りでトップをゆく。
 ここで追い上げてきたのは11位発進の静岡・遠藤蒼依だった。丸太町にはいってからぐんぐんと追い上げ、兵庫を射程におさめるまで迫ってきた。
 トップは兵庫がまもり、2位は静岡で8秒差、3位は神奈川で22秒差、4位は千葉で26秒差、5位は群馬で33秒差、6位は広島で34秒差、7位は宮城で36秒差、8位は愛媛で40秒差であった。区間賞は静岡の 遠藤蒼依で9:16。

第4区(4.0km)
 銀閣寺のそばから白川通りを上ってゆくコースで後半が勝負どころとなる。高校生が出場することが多く、前回は京都の山本釉未(立命館宇治)が区間賞をとったが、今回は実業団、大学生が多く顔をならべている。
 トップをゆく兵庫は、前回と同じ 石松愛朱加、8秒遅れで2位にきている静岡の齋藤みうが追ってきて1.2kmでは斎藤が石松を抜いて首位に躍り出た。
 百万遍の交差点ではトップが静岡、4秒遅れで兵庫、後ろは神奈川と千葉が並走、その後ろは宮城、滋賀、熊本が5位集団を形成、さらに熊本、広島、徳島、群馬とつづいていた。
 白川通の上りにさしかかって、2.7kkmになって、2位にさがつた石松がふたたび斎藤を抜いて首位を奪還。3kmになるとスパートして斎藤をひきはなし、そのままトップでタスキリレーした。
 2位は静岡で7秒遅れ、3位は神奈川で10秒遅れ。4位は千葉で10秒遅れ、5位は宮城で20秒遅れ、6位は滋賀で34秒遅れ、7位は大阪で35秒遅れ、8位は徳島で37秒遅れ、9位は広島で38秒遅れ、10位は熊本で45秒遅れとなっていた。区間賞は福島の鈴木葵で12:51であった。。

第5区(4.107km)
 跨線橋をこえて折り返し地点の京都国際会館までの4kmあまりのコースである。
兵庫の高校生・池野絵莉を4位発進の千葉の山﨑りさが追い、そのうしろでは静岡の大谷芽以と神奈川の勝呂遥香が競っている。
 追い上げる山崎、1.8kmで池野をとらえた。だが池野もゆずらない。ひとたび山崎がトップに立ったが、池野が粘りの走りで跨線橋をくだって並走状態にもちこんだ。後ろでは広島、宮城、神奈川、大阪がはげしく3位を競り合っていた。
 トップ争いはのこり300mで池野がスパート、追ってきた山崎をふりきった。池野は区間新、山崎も区間新である。区間賞はタイムで7秒上回った山崎で12:45 。 
 かくして2位は千葉で3秒遅れ、3位は広島で43秒遅れ、4位は宮城で44秒遅れ、5位は神奈川で44秒遅れ、6位は大阪で48秒遅れ、7位は京都で1分05秒遅れ、8位は熊本で1分12秒遅れ……。区間賞は、9位は埼玉で1分15秒遅れ、10神奈川であった。

第6区(4.0875km)
 白川通を南下するコース、突っ込んで入った兵庫の杉永美空は快走。1km=3:03、2km=6:26……、後ろの千葉との差をひろげにかかる。
 3位集団の宮城の橘山莉乃と神奈川の金子陽向が並走しながら前を追ってゆく。
 兵庫はそのまま逃げ切ってトップ通過。2区の田中によるリズムアップがいぜんとしてつづいている。
 トップは兵庫、2位は千葉で19秒遅れ、3位は宮城で40秒遅れ、4位は神奈川で41秒遅れ、5位は大阪で52秒遅れ、6位は広島で57秒暮れ、7位は京都で1分10秒遅れ、8位は静岡で1分28秒遅れ。区間賞は 岡山の谷本観月で13:06。なお東京はいぜんとして低空飛行で2分29秒遅れの20位であった。

第7区(4.0km)
 兵庫の 塩﨑彩理はここでも懸命に逃げた。追ってくる千葉との差はひらいてゆく。2kmでは21秒、3kmではさらにひろがった。
 今出川通りに出たところではトップ兵庫と千葉との差は25秒、その後ろで並走する神奈川と宮城と差は49秒……。
 兵庫の塩崎は安定した走りで、8区の中学生にタスキリレーした。
 2位は千葉で24秒差、3位は宮城で47秒差、4位は神奈川で50秒差、5位は大阪で56秒差、6位は京都で56秒差、7位は広島で1分00秒差、8位は埼玉で1分52秒差となっていた、区間賞は京都の太田咲雪で12:31。

第8区(3.0km)
 中学生区間である。
 注目は宮城の男乕結衣で、3000m最速ランナーである。
 トップを行く兵庫の朝日小都子を千葉の伊藤夏樹が激しく追い、宮城の男乕が追い、後ろは大阪の 田谷玲と京都の山本留衣が4位集団をなしている。
 男乕の追い上げは急で 2.1kmでは千葉の伊藤をぬいて2位に浮上、さらにトップの朝日にも迫る勢いをしめした。2,7kmではその差10秒を切るまでになった。
 だが兵庫の朝日はトップをまもりアンカーにタスキをたくした。2位は宮城で9秒差、3位は神奈川で35秒差、4位は千葉で35秒差、5位は大阪で35秒差、6位は広島で46秒差、7位は京都で55秒差、8位は静岡で1分57秒差。区間賞は宮城の男乕結衣で9:41であった。

第9区(10.0km)
 8区を終わってトップの兵庫から7位の京都までわずか55秒、どのチームにもチャンスはあるという展開になった。勝負はアンカー対決にもちこまれた。
 逃げる兵庫は太田琴菜、9秒差で宮城の小海遥が追ってゆく。小海はのぼりでじりじりとその差を詰め始める。そしてとうとう2.8kmで太田をとらえて、後ろについた。
 後方も動きがあり、7位発進の京都の川村楓が快走、3kmでは神奈川の 出水田眞紀、千葉の上杉真穂もとらえて、一気に3位まで浮上してきた。そしてさらに前を追ってゆく勢いをしめした。
 中間点では太田と小海が並走、5秒遅れで川村、そこから1秒遅れで千葉の上杉、そこから20秒遅れで神奈川の出水田、さらにそこから20秒遅れで、広島の谷本七星と大阪の中野円花が並走でつづいていた。とくに京都・川村の追撃に勢いがあった。
 兵庫と宮城トップ争いは5.4kmで小海が前に出て決着がついた。太田にはもう追いすがる余力はなかった。その落ちてきた太田を京都の川村が5,6kmでとらえて2位にあがってきて、小海を追い始めた、小海の背中は目の前にある。
 かくして残り3kmぐらいになって宮城と京都のマッチアップになったのである。
 西大路通りから五条通りに出たところでトップ宮城と居との差は6秒……。だが、そこから小海は粘り強かった。あと2kmの地点からスピードアップして突っ放しにかかる。その差はふたたび10秒となってしまった。
 川村の追撃もそこまでで、小海はゆうゆうトップで競技場にもどってきた。勝利を確信したのか、余裕の表情……。かくして宮城は29年ぶり2回目の制覇を果たしたのである。
 最終区、京都の川村と宮城の小海のせめぎあいは、実に見どころがあり、最後まで目がはなせなかった。ともに今シーズンの充実ぶりを象徴的にものがたっていた。区間賞こそ川村(31:41nにゆずったものの、小海の走りも弾けていた。

 優勝した宮城は終始10位以内につけ、各ランナーともに安定した走り、とくに仙台育英の高校生が暮れの悔しさを晴らそうと踏んばった。高校生が強い上に男乕結衣というスーパー中学生がいる。さらに実業団のランナーも持てる実力を発揮した。宮城にはほかに米澤奈々香のようなランナーもいる。層の厚さでも抜けているといえる。
 2位の京都はさすがというべきか。前半は後手を踏んだが、懸命に耐えた。中盤から押し上げ、後半になってトップ争いに絡んできた。宮城を上回る2つの区間賞は光っている。
 3位の広島は大健闘ではないか。中盤からつねに上位につけ、最終区の谷本七星の快走で3位まで押し上げてきた。
 4位の千葉、4位の神奈川、2連覇をねらった大阪も安定した力をしめした。ともに最終区まで優勝争いにからんでいた。
 惜しまれるのは兵庫である。2区・田中希実の快走で、2区以降ほとんどレースを支配しながら、最終区で7位まで順位をおとした。最後の最後で紛れが出てしまったのが惜しまれる。シーズン最後のレースで、目いっぱいレースで戦ってきた実業団ランナー、そのツケがまわってきて最後の最後に明暗が出てしまった結果といえるだろう。
 今年はパリ五輪の年である。
 まだ代表のすべてが決まったわけではないが、中長距離の田中希実、マラソンの鈴木優花は本大会にも出場した。一山麻緒も駅伝育ちである。彼女たちが世界を舞台に戦う姿をとくと見定めたいと思う。

◇ 日時 2024年01月14日(日)12時30分スタート
◇ 場所 京都市
◇ コース たけびしスタジアム京都発着 宝ヶ池国際会議場前折り返し9区間49.195Km 
◇ 天候:晴れ 気温:07.0度 湿度:46% 風:北北西0.7m(12:00)
◇ 宮城(細川あおい、壁谷衿奈、林楓夏、佐々木梨七、長岡みさき、橘山莉乃、力丸楓、男乕結衣、小海遥)
公式サイト
NHK:
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