名城大学が6年連続で2冠達成

      終始後続に影さえ踏ませず



 名城の牙城はゆるがなかった。
 昨年までのように図抜けたエースはいないが、オーダーに切れ目というものがない。メンバー全員が5000m15分台で出場チームを見渡してのダントツ。今年はナンノカンノといわれたが、終わってみれば名城一強の構図だった。
 名城の駅伝力はとびぬけているが、むしろ他校が弱すぎるといったほうがいいだろう。 名城に1区から行かれてしまえば、そこで勝負は決まりである。それを見越して仕掛けて来たのは立命館ぐらいか。前半重視のオーダーで名城の出鼻をたたこうとした。そのチャレンジ精神は評価しなければなるまい。他校は最初か勝とうという意欲はなかったようである。2位の日体大にしても3位の大東にしても、まるで優勝争いに絡んでの順位ではないから評価はできない。
 オーダーについていえば、ちょっと気になったことがひとつ……。
 拓殖大である。不破聖衣来を出場選手にエントリーしており、走れる状態にあるという情報を流しておきながら、最終的には区間オーダーでは補員にして走らせなかった。いわば見せダマにおわらせてしまったのであるが、もっとも拓大陣営にしてみれが、最初から出場させる気はなかったのだろう。
 目標は別にあるとすればそれは正しい判断だと思う。にもかかわらず、なぜ思わせぶりにエントリーしてきたのか。おそらく陣営の思いとは裏腹な外圧があったのだろう。出場選手にエントリーしておけば、駅伝ファンは、あるいは、と期待を抱く。そこのところがミソだったのだ。要するに、あえてアテ馬につかわれた。主催者側の商業主義的な大人の事情が裏にあったのだろうと思われる。

第1区(4.1km)
 上り坂のあるせいかスタートはゆったり、1km=3:24という入りだった。名城大の柳楽をマークするかっこうで、集団をなしてゆく。ペースがあがって、やや縦長になりはじめたのは2kmあたりで名城の柳楽あずみが前に出てきて、日体大の斎藤みう、立命館大の太田咲雪がやってくる。3人がすこしづつ後続を引き離し、3kmでは3者のたたき合いになった。最後の500m、ここで斎藤と柳楽が抜け出すかっこうにある。柳楽が一歩先んじたのは昨年の実績からの自信か、あるいは勝とうという執念が上回ったのかもしれない。
 かくして名城大がトップ、3秒差で日本体育大、3位は立命館大で4秒差、4位は中央大で10秒差、5位は大東文化大で15秒差、6位は拓殖大で16秒差、7位は全日本選抜で16秒差、8位は大阪学院大で22秒差、城西大は出遅れて28秒差の15位だった。区間賞は名城大の柳楽あずみである。

第2区(6.8km)
 トップの名城大のこの区間は米澤奈々香、追う日本体育大は尾方唯莉、差なく立命館大の村松灯がつづく。米澤と村松は全日本でも2区で激突、このときは村松がねじ伏せて区間所をもぎとってる。今回は米澤のリベンジなるか。それとも村松が追いつくか……。
 米澤は快調だった。2.5kmでは村松が尾方をかわして2位んああってくるが、その差は開きかあげんになっている。後ろは城西大、全日本選抜など5~6チームが集団をなして追っている。はるか後ろからは玉川大の山田桃愛が急追、9人抜きで順位をああげてくる。 5km通過は米澤がトップ、2位の立命館。村松との差は10秒ほどになる。米澤は快調で、残り500mでさらにギアアップ、村松との差を14秒にして中継所にとびこんでいった。
2位は立命館で14秒差、3位は日本体育大で24秒差、4位は全日本選抜で47秒差、5位は城西大で48秒差、6位は東北福祉大で49秒差、7位は大健闘の玉川大で53秒差、8位は大阪学院大で56秒差。大東文化大は9位で1分04秒差であった。区間賞は名城大の米澤奈々香がもぎとって、みごと村松にリベンジした。

第3区(3.3km)
 最短距離のこの区間はほとんど平坦なコース、1区、2区の連続区間賞で勢いのついた名城大は1年生の山田未唯を起用してきた。むろん初めての駅伝だが、100m以上のリードをもらってたなんと逃げた。
 追う立命館大は4年生の小林朝が懸命に追ってくる。立命館にしてみれば、希望をつなぐにはこの区間でふんばって差を詰めるほかない。
 そんな後続の思惑とは裏腹に山田はたんたんと前を行き、逃げ切ってしまった。立命館との差は20秒、6秒引き離したのである。
 3位は日本体育大で41秒差、4位は城西大で1分01秒差、5位は大阪学院大で1分06秒差、6位は全日本選抜で1分06秒差、7位は東北福祉大で1分13秒差、8位は大東文化大で1分13秒差であった。区間賞は名城大の山田未唯、駅伝デビューを最高のかたちで飾った。
第4区(4.4km)
 名城大の石松愛朱加は快調なペースで立命館大の外間礼那を引き離しにかかり、独走状態となってしまった。
 後ろのほうの順位争いは激しくなり、1.3kmあたりで大東大の四元桃奈が追い上げてきて城西大の石川苺、大阪学院大の千賀妃華にくらいついた。3人のマッチアップから石川が抜け出してきて3.5kmで日本体育大の柳井桜子を抜いて3位に浮上してきた。
 名城の石松はゆうゆうの楽走で5区のエース谷本七星にタスキをたくした。2位は立命館大で46秒差、3位は城西大で1分04秒差、4位は日本体育ぢで1分14秒差、5位は大東文化大で1分28秒差、6位は東北福祉大で1分46秒差、7位は拓殖大で1分48秒差、8位は玉川大で1分50秒差となっていた。区間賞はここも名城大の石松愛朱加であった。
 名城と5区に大砲ともいうべきワンジルを配する大東の差は1分28秒である。ワンジルと谷本に力の比較から、名城にしてみれば1分あれば安泰とみていただろう。

第5区(10.5km)
 およそ1分半もあれば、その差は500mもある。はじめて最長距離区間の5区に出てきた谷本七星は落ち着いた入りでどんどん体を前に運んでゆく。自分のペースで独走である。
 後ろでは4位発進の日体大・山崎りさが2.7kmで前をゆく城西大の高橋葵をとらえて3位に浮上、さらに立命館大の福永楓花もすぐ前にいる。
 さらに後ろから5位発進の大東文化大のワンジルが急迫、3.8kmでは城西大の高橋、さらに日体大の山崎を抜いて、4,4kmでは立命館大の福永も抜いて2位にあがってきた。
 5kmをトップ通過した谷本、2位にやってきたワンじるとの差は1分08秒、わずか20秒しかその差は詰まっいない。谷本が踏んばっていた。3位は立命館・福永で1分11秒差、日体大の山崎はそこから3秒遅れで追っていた。
 7kmになると谷本とワンジルとの差は300m、追撃もそこまでという感じになってきた。山崎が福永を抜いて3位まで浮上してきた。
 トップ名城と大東文化大との差は膠着状態となり、谷本がそのまま逃げ切って、キャプテンの増渕にタスキを渡した。
 2位は大東文化大で1分04秒差、3位は日本体育大で1分25秒差、4位は立命館大で1分33秒差、5位は大阪学院大で2分19秒差、6位は城西大で2分54秒差、7位は北川星瑠の快走で13位からやってきた大阪学芸大で3分07秒差、8位は中央大で3分07秒差。区間賞は大東文化大のワンジルガ獲得した。

第6区(6.0km)
 名城大の増渕祐香は全日本で走れなかったうっぷんを晴らすかのように爆走、後続はたちまち遠ざかっていった。おそらく自身の持つ区間新記録の更新しか眼中になかったのだろう。
 後ろでは大東文化大、日体大、立命館大がはげしく2位を争っていた。増渕はひとりわが道を行くという感じで4kmのラップは区間新ペース、名城大にとっては大会新記録を視野にはいってきた。
 増渕は後続を1分54秒もちぎってタスキ渡し。むろん区間新記録である。2位日本体育大、3位は大東文化大で2分13秒遅れ、4位は立命館大で2分23秒遅れ、5位は城西大で3分18秒遅れ、6位は大阪学院大で3分40秒遅れ、7位は中央大で4分02秒遅れ、8位は東北福祉大で4分30秒遅れ。区間賞は増渕祐香である。

第7区(8.3km)
 この区間はコースのなかで最大の難所というべきか。3kmすぎから4.6kmまで高低差169メートルの厳しいのぼりとない、3,8km地点には急激な下りがある。かつて、このほどパリオリンピック代表となった鈴木優花が大東文化大時代に、驚異のスピードで駆けのぼったが、今年はどうか……。
 名城大のこの区間は原田紗稀、2年生で駅伝初見参だが、たんたんと落ち着いて上ってゆく。もはや勝利を確信していたのだろう。
4,5kmでトップの名城と2位日体大との差は1分51秒、3位は大東文化大で2分13秒差、4位は立命館大で2分41秒差……。
 6kmをすぎてトップをゆく原田はさすがに苦し気な表情になったが、足どりにゆるぎはなく、しっかりした腕振りで体を前にはこんでいった。競技場のトラックに走りこんだ原田は仲間たちにむかえられ、6年連続2冠のゴールにとびこんだ。(最終区の区間賞は拓殖大の新井沙希)

 名城大はなんと6年連続で大学女子駅伝2冠を達成するという快挙! その強さはとどまるところをしらない。7区間のうち5区間で区間賞で、いちども先頭をゆずることはなかった。とびぬけたエース的存在をもっているわけではないが、メンバ全員が学生レベルではトップクラスにある。選手層が厚くて3区の山田のように、1年生では初めての駅伝なのに区間賞をとってしまう。2年生以上になると、ながねん引き継がれてきたであろう駅伝の走りかたをちゃんと心得ている。ここの実力に駅伝力加わって他の追従をゆるさない。 4年生はひとりだけで、他のメンバーは来年も残る。まだしばらくは名城の時代がつづくのだろう。
 2位には日本体育大がやってきた。もともと地力のあるチームだけに順当なところ。立命館だと同じように前半から仕掛ける作戦だったようだが、名城大をあわてさせるまでには至らなかった。
 3位は大東文化大がやってきた。ひとえに5区に登場したスーパーエースのワンジルの快走によるものだといえる。だが1年生が多いだけに、伸びしろはある。
 4位の立命館大は前半中盤の4区までは名城大にくらいついていた。前半重視の布陣で戦いを挑んだのはっすが古豪というべきか。だが一枚コマが足りなかった。長い距離をこなせるランナーの育成がこのチームの課題だろう。
 5位の大阪学院大はともかく6位には城西大がやってきた。城西は4区では3位まであがるなど大健闘で、いまやすっかり上位の一角を占めるまでになった。将来に期待感をもたあせるチームである。
 7位には拓殖大がやってきた。最終区の新井沙希が区間賞の快走で11位から一気に7位まで順位を押し上げてきた。スーパーエースの不破を欠いての入賞圏内突入はみごとだった。
 8位にやってきた東北福祉大、このところつねに入賞圏内に名を連ねるほど地力強化されているのは評価されるべきだろう。惜しかったのは中央大である。5区、6区の踏んばりで6区では7位まで順位をあげたが、最終的に10まで落ちてしまった。
 来季も名城大の牙城は揺らぎそうにないが、主力チームの名城包囲網の切磋琢磨を期待したいものである。

◇ 日時 2023年 12月30日(金) 午前10時00分 スタート
◇ コース:冨士・富士宮市
 富士山本宮浅間大社~富士総合運動公園陸上競技場 7区間 43.4㎞
◇ 天候:(午前10時)晴れ 気温:07.3℃ 湿度:372% 風:西南西1.1m
◇名城大学(柳楽あずみ、米澤奈々香、山田未唯、石松愛朱加、谷本七星、増渕祐香、原田紗稀)
公式サイト:
フジテレビ
結果