Hondaが堂々の連覇達成
  中盤で逆転して押し切る

 

いまひとつ見えてこない
   日本の長距離の未来


 ニューイヤー駅伝で今年も一年がはじまった。
 東京オリンピックのあと、いまだ日本の長距離を背負う新しい貌がみえてこない。そんな、いわば過渡期というべき混沌とした時代がいまだつづいている。
 いったいファンとして誰に注目して、何を基軸に駅伝の最高峰というべき本大会を観ればいいのか。まったく雲をつかむような手ごたえのなさをかみしめながら、とうとう年が明けレースを迎えてしまった。
 設楽悠太・啓太はすでに過去に人となり、若手の東京五輪組の相澤晃も伊藤達彦も松枝博輝も出てこない。マラソン代表の3人はすで過去の人。
 だが、しかし……
 そのうち、ひとたびリタイヤした大迫傑が現役復帰して、GMOインタネットグループからエントリーされてきた。
 見どころといえば、この大迫の走りぐらいなもの。そんなわけでなんともメダマのとぼしい大会になってしまった。この大迫の走りが日本長距離の現状を測るひとつのモノサシになるのではないか。この帰り新参の大迫に区間上位を奪われ、名をなさしめるようでは、日本の長距離の現状はなんとも心もとないということになる。
 さて駅伝レースそのものの勝負のほうはいかに……。
 前回、優勝旗を紛失して意気消沈したのか、それとも優勝したら悪いと思って深謀遠慮したのか、優勝候補筆頭といわれながら富士通は精彩なく12位に落ちた。今年はその富士通の復活なるか。いっぽう富士通の脱落で、悲願の初優勝を遂げたHonda、あれは漁夫の利で、鬼のいぬまの洗濯だったのか。その結果はひとえに今年の成績ひとつにかかっていた。
 そういう意味でHondaにとって今年のニューイヤー駅伝はさに真価を問うレースとなった。


 復活! 村山紘太

第1区(12.3km)
 風がほとんどないなかでスタート、1kmの入りが2:56、1~2kmが3:10とスローの展開でたがいにけん制しあって、なかなか前に出たがらない。住友電工の中村祐紀、トーエネックの蝦夷森章太が前に押し出された恰好、Hondaの小袖英人ら主力はそのうしろにかくれている。
 36チーム一団の護送船団方式で3km通過、15:07秒で、超スローである。5kmの通過が15:07秒、たまりかねて旭化成の茂木圭次郎がうしろから前に出てきて、さらに三菱重工の的野遼太もついてくる。
 6.4kmで茂木が先頭に立ってひっぱしはじめる。後ろにはHondaの小袖あがついている。7~8kmになってペースは2:56と、ややあがってきたが、いぜんとして集団はくずれもしない。
 9.5kmの登り坂になって的野がトップ、SGホールディングスの佐藤悠基もついていくる。
 10km通過は29:33、下り坂になって的野がスパートすると集団がばらけはじめる。サンベルクスの市村朋樹、富士通の塩澤稀夕、佐藤悠基、小袖がついてくる。そんななかで10.8km、九電工の舟津彰馬と埼玉医科大グループの木榑杏祐がからんで転倒、だがすぐに起き上がって前を追う。
 先頭争いが激しくなったのは11.3kmあたりがった。塩澤と佐藤がとびだし、小袖とJR東日本の片西景がつづくという展開になる。そして11.9kmでは小袖、塩澤、佐藤のスパート合戦になったが、いつの間にかついてきていたGMOの村山紘太が一気にかわして、中継所にとびこんでいった。
 かくして1区を制したのはGMOで2位はHondaでタイム差なし、以下ヤクルト、富士通、JR東日本、マツダ、トヨタ自動車、コモディイイダ、トヨタ紡織、SGホールディングスとつづき、35位のトーエネックまで、わずか39秒というダンゴ状態でつづいた。区間賞は復活の村山紘太……。

第2区(8.3km)
 ほとんど団子状態で突入した2区は外国人特区である。出場36チームのうち32チームまでがケニア人ランナーを走らせる。順位はめまぐるしく変転して、1区の結果はご破算になってしまうのである。
 タスキわたしのあと,すぐに14~15チームが先頭集団をなして進む。3.8kmになって25位発進の九電工のコエチが急追してきて4km手前で一気にトップに立った。5km=13:04というハイペース、6.4kmではコエチがトップ、富士通のべナード、トヨタ自動車九州のマイナ、SUBARUのベンソン、三菱重工のエマヌエルがつづく。
 残り600mになってベンソン、エマヌエルが抜け出して、最後はSUBARUのベンソンがトップに立ってタスキをつないだ。2位は三菱重工で01秒差、3位は九電工で06秒差、4位は富士通で06秒差、5位はトヨタ自動車九州で13秒差、6位は日立物流で13秒差、7位はHONDAで22秒差、8位はヤクルトで23秒差とつづき、旭化成は34秒遅れの12位、GMOは41秒遅れの18位、トヨタ自動車はなんと55秒遅れの23位であった。


復活・大迫傑の区間2位を
     どのように見るか


第3区(13.6km)
 あらためてヨーイドンとなったこの区間、ここで、どの位置をキープするかが勝負の分かれ目になる。少なくともトップの見える位置でエース区間の4区のランナーに繋ぎたいところである。
 注目の大迫傑はこの区間に登場する。果たしてどのような走りを見せるのか。18位からどこまでやってくるのか。もっぱらの興味はそんなところ。
 トップをゆくSUBARUの梶谷瑠哉に三菱重工の林田洋翔が追いついて並走、そのうしろから富士通のオリンピアン・坂東悠汰がやってくる。そのうしろからはHONDAの川瀬翔矢である。黒崎播磨の田村友佑もやってくる。
 後方では23位は発進のトヨタ自動車の太田智樹が9人抜きで一気に14位まで順位をあげてきた。
 7.4kmではHONDAの川瀬とSGホールディングスの鈴木塁人がトツプ集団い追いついた。富士通の坂東はこのあたりから発汗が目立ち、すずずると遅れ始める。7.6kmではGMOの大迫が8位集団においつき、日立物流の牟田祐樹、GMOの大迫、トヨタ自動車の太田、トヨタ紡織の大池達也、黒崎播磨の田村らと前を追い始める。
 10kmになると先頭は村田と梶谷、川瀬が少し遅れ始める。後ろでは太田と大迫が坂東をおらえて6位グループとなる。さらに12kmでは4位集団をなすヤクルトの荻久保寛也とSGホールディングスの鈴木塁人をとらえて4位グループとなっった。
 トップ争いは13kmで三菱重工の村田が前に出た。そして、そのままタスキをつないだ。
 かくして先頭に立ったのは三菱重工、2位はSUBARUで1秒差、3位はHONDで25秒差、4位はSGホールディングスで25秒遅れ、5位はトヨタ自動車で28秒遅れ、6位はヤクルトで29秒遅れ、7位はGMOで31秒差、8位は富士通で47秒差となった。
 注目の区間賞争いはトヨタ自動車の太田智樹がかろうじてなんとか大迫傑を押さえて獲得した。



勝負どころの5区、6区で
Hondaが抜け出した


第4区(22.km)
 最長区間のこの区、三菱重工にしてみれば予定通りのトップというべきか。井上大仁が1km=2:39で入るとリードをひろげはじめた。後ろはSUBARUの照井明人、トヨタ自動車の西山雄介、HONDAの小山直城、SGホールディングスの湯澤舜がつづき、さらに後は富士通の横手健、GMOの吉田祐也が追っている。
 7.6kmになるとトヨタ自動車の西山が照井をとらえて2位に浮上、8.2kmでは横手と吉田が照井をとらえた。
 後方では黒崎播磨の細谷恭平が9kmすぎで9位まで浮上、さらにそのうしろからはKaoの池田耀平が区間新ペースで追い上げ10kmでは7人を抜きで11位までやってくる。 
 中間点を三菱重工の井上がトップ通過、18秒遅れでGMOの吉田、HONDAの小山、富士通は横手がならんで通過、その後ろは湯澤、西山、照井などがつづいていた。
 トップ争いに変化がうまれたのは15kmすぎだった。Hondaの小山が追撃を開始、17kmすぎに2位に浮上するとトップをゆく井上との差を詰めはじめたのである。懸命に逃げる井上、18kmではとうとうその差は4秒となる。小山の追撃はなおもとまらず18,5kmで井上をつかまえてしまい、とうとうトップを奪ったのである。だが井上にもプライドがある。懸命にくらいついていたが、19,7kmでとうとう力尽きてしまった。
 かくしてHondaがここでトップに立ち、12秒遅れで三菱重工、同タイムで3位はトヨタ自動車、4位はGMOで17秒差、5位はSGホールディングス、6位は27秒遅れで富士通、7位は細谷で黒崎播磨がやつてきて、33秒差。8位は池田の快走でKaoで37秒差とつづいた。区間賞は後方から追ってきたKaoの池田耀平である。

第5区(15.8km)
 待望のトップに立ったHONDAはここに青木涼真を配していた。
 向かい風のなか、青木はたんたんと前をゆく。後ろからは富士通の塩尻和也がやってきて2.5kmではSGホールディングスの 川端千都をとらえて5位までやってくる。
 3,8kmではトヨタ自動車の 丸山竜也が2位集団から抜け出して青木との差を7秒までつめてきた。しかし青木はそこからペースアップ、5kmではその差をふたたびひろげはじめる。
 中間点ではトップはHNDAで2位富士通との差は30秒、そこから30秒遅れでGMO、さらに31秒遅れでトヨタ自動車となっていた。
 11kmを青木は31:41でトップ通過、2位には富士通とGMOでその差は30秒、1秒遅れでトヨタ自動車となっていた。
 青木はそのままトップでフィニッシュ、2位にはラストスパートで今江のGMOがやってきてその差は34秒、3位は38秒遅れで富士通、4位はトヨタ自動車で41秒遅れ、5位は三菱重工絵55秒遅れ、6位はSGホールディングスで56秒遅れ、7位はSUBARUで1分50秒遅れ。8位は中電工で1分52秒おくれとなっていた。区間賞はHONDAの青木涼真である。


第6区(11.9km)
 5区でリズムアップしたHONDAのこの区間は昨年と同じく中山顕である。5kmは15:03とゆうゆうとトップをゆく。富士通の浦野雄平が2kmでGMOの一色恭志をとらえて2位に浮上、懸命に中山を追った。5kmでは31秒差まで迫ったがそこまでだった。後ろで勢いのあったのはトヨタ紡織・羽生拓矢だった。6人抜きで7位まで浮上、なんと中山をおさえて区間賞をもぎとった。
 かくしてトップHONDAと2位の富士通との差は46秒、3位には三菱重工がやってきて59秒差、4位はSGホールディングスで1分06秒差、5位はGMOで1分25秒差、6位はトヨタ自動車で2分09秒差、7位はトヨタ紡織で2分22秒差、8位は中電工で2分41秒差だった。

第7区(15.7km)
 トップをゆくHondaの木村慎はゆうゆうの楽走、5km通過が14:17と堅調、2位の富士通との差は47秒と追わせなかった。ここで、さすがの走りを見せたのはトヨタ自動車の服部勇馬だった。
 7位発進の服部は1分10秒の差があった位集団をとのさをつめ、12.4kmでGMOの渡邉利典、三菱重工の吉田裕晟、SGホールディングスの橋爪孝安にとりついたのである。
 HONDAの木村はリードを保って連覇のゴールにとびこんでいった。2位には富士通、3位争いは最後までもつれ、4チームのたたきあいになったが、ラストのスパート合戦でトヨタ自動車の服部勇馬が制し、なんとか区間賞をもぎとって面目をたもった。

 

 

Hondaの時代が到来
 

 優勝したHONDAは2連覇を達成、中盤からレースを支配して安定した闘いぶりだった。区間賞こそひとつだが区間2位が3人もいる。このチームはいままでなんどかチャンスがありながら、どこかの区間で手痛いポカをするという悪いクセがあって苦杯をなめてきた。ところが昨年から今年にかけて、レースで安定した力を発揮できるようになった。それが最大の勝因だろう。エースの伊藤達彦を欠いても圧勝できたのは大きな収穫であろう。Honda時代は当分つづくのかもしれない。
 2位の富士通は3区の坂東で勢いに乗れなかったのが敗因、他のランナーはそれなりに力を発揮している。チグハグなレースぶりで流れにのれなかった。
 3位のトヨタ自動車もバランスが悪い。どこかちぐはぐで流れに乗りそこなった。
 大健闘は8位入賞の中電工である。前半出遅れ、中盤かの4区で一気に10位まで押し上げ、しぶとく粘りぬいた。
 意外だったのはかっての王者・旭化成でなんと16位、それにコニカミノルタは18位である。それほど大きく戦力が低下したとは思えないのに……。あるいは会社が駅伝に注ぐ熱量が低下したせいなのか。時代の移りを感じる結果である。  

◇ 日時 2022年 1月 1日(日=祝) 9時15分 スタート 
◇ 気象 天気:晴 気温2.1 湿度44% 北西3.8m
◇ コース:群馬県庁スタート~高崎市役所~伊勢崎市役所~太田市尾島総合支所~太田市役所~桐生市役所~JA赤堀町~群馬県庁をゴールとする7区間100km
◇Honda東日本(小袖英人、ジャクソン カベサ、川瀬翔矢、小山直城、青木涼真、中山顕、木村慎)
TBS公式サイト
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