名城大が5年連続2冠を達成
   後続に影さへ踏ませずにゴールへ

 

 

 直前でちょっとした異変!

 このところ名城大が異次元の強さをみせつける大学女子駅伝にあって、興味の的はもっぱら宇宙人のように異次元のような強さをみせる拓殖大の不破聖衣来の走り……。メディアもファンもそれを注目し楽しみにしていた。
 だが意外にも最終オーダーで不破は外れてしまった。
 おそらくテレビをはじめメディアもスポンサーも悲鳴をあげたことだろう。5区で不破が走るシーンがなければ番組の興味は半減どころの騒ぎではない。だが、そんなことを百も承知の拓殖大陣営、エントリーしておきながら、あえて最終オーダーから外したのだ。ハナから出さない腹なら、エントリーしなければいい。ファンに気を持たせたのは許しがたいが、なにもかも承知にうえで思い切った勇気に拍手を送りたい。
 むろん予感がないわけではなかった。直前の予告番組で不破にほとんどスポットが当たらなかったからである
 異変はまだある。
 当日のオーダーをみて、「うーん」と思わずうなった。
 立命館大の第1区のランアナーが村松結から柳井綾香に変更されているではないか。当日にメンバー変更がゆるされるのは、そのランナーに何らかの異常があった場合にのみである。村松結は村松灯、飛田凛香とならんで立命館の3本柱のひとりである。
 立命館は1区、2区にエース級2枚をならべて名城大の出鼻をたたく腹だったのだろう。スタート前でその目算はあえなくくずれたのである。そうなればスタートからもはや名城の独壇場というべきで、何をポイントにレースを観ればいいのか、思わずため息が出てしまった。



 1年生3人で勝負を決めた名城大

第1区(4.1km)
 浅間大社をとりまく市内をぐるりとまわら第1区、大東文化大学の吉村玲美、名城大の柳楽あずみ、城西大の兼子心晴が集団をひっぱる展開でスタートした。1km=3:22だからゆったりとしたペースである。
 ペースがあがったのは2kmあたり、柳楽がトップに立つと集団はタテ長になり、なんとここで立命館大の柳井綾香がずるずると集団からこぼれていった。早くもトップに立った名城大、柳楽は快調に飛ばし、吉村がうしろにつき、日本体育大の柳井桜子がつづいた。 柳楽の勢いはとまらず。3kmすぎでは完全に抜け出しそのままトップで中継所にとびこんでいった。意外だったのは立命館大の柳井綾香、当日変更で心の準備もできていなかったのか、なんと最下位の24位まで落ち、早くも立命館大はここで上位戦線から脱落したのである。
 1区を終わって名城大がトップ、9秒遅れで日本体育大、10秒遅れで大東文化大、17秒遅れで城西大、18秒遅れで全日本選抜、20秒遅れで大阪学院大、21秒遅れで東北福祉大、同じく21秒遅れで関西大とつづき、拓殖大は40秒遅れの13位、立命館大はここで1分以上の後れをとった。

第2区(6.8km)
 トップをゆく名城大は1区とおなじく1年生の石松愛朱加、日本体育大の山崎りさが追ってきた。そのうしろは大東文化大、大阪学院大、城西大、東北福祉大、全日本選抜がダンゴ状態でつづいている。長い下りでの攻防であった。立命館大はエースの1枚・村松灯が最下位から順位をあげてくる。
 3km手前で、日体・山崎は石松を追い、その差は3秒差、3位グループからは東北福祉大の金澤佳子がぬけだしてきた。
 後ろの立命館大・村松は5kmでは6人抜きで18位、6km手前では10人抜きで14位までやってきた。
 トップの石松は粘り強かった。中盤から日体の山崎に追わせず、逆にその差をひろげてタスキを渡したのである。
 かくして2区を終わってトップは名城、10秒差で2位は日本体育大、3位には28秒差で東北福祉大がやってきて、これは大健闘。4位は大東文化大で43秒差、5位は大阪学院大で43秒差、6位は全日本選抜で43秒差、7位は大阪芸術大で45秒差、8位は城西大で46秒差となった。

第3区(3.3km)
 繋ぎのこの区は比較的に平坦なコースである。そんな繋ぎの区間に名城大はエースの1枚・米澤奈々香を配してきた。タスキをもらってぶっとんでいった米澤を追うものはだれもいない。2位の日本体育大をひきはなして、もはや名城大は独走状態となった。
 3位以降は大東文化大、東北福祉大、城西大、大阪学院大、全日本選抜があいかわらず競り合っていた。
 米澤は区間新ペースで2位の日本体育大に大差をつけ、1区から3区まで、1年生3人でほぼ優勝を確定してしまった。2位は日本体育大で43秒差、3位は全日本選抜で1分01秒差、4位は城西大で1分04秒差、5位は東北福祉大で1分07秒差、以下は大阪学院大、大東文化大、大阪芸術大とつづいていた。


 名城は王者の走り
  うしろではようやく立命館大が追撃


第4区(4.4km)
 3区と同じく繋ぎの区間、富士川の河川敷からの風をうけるが平坦なコース、名城大のスピードランナー・増渕裕香は3区の米澤の勢いをもらって、快調に飛び出していった。もはや後ろは誰も来ない。追う日体大からもトップをゆく名城のランナーの後姿すらみえないほど差が開いている。
 2位の日本体育大の後ろでは30秒ぐらいのあいだに6チームほどがはげしく順位を争っていた。だが1区で遅れた立命館大は、まだそこから40秒ぐらい遅れて12位に低迷していた。
 4区を終わってトップの名城大と2位の日本体育大との差は1分02秒、その差はひらく一方になった。3位以降は城西大、大阪学院大、全日本選抜、東北h串大、大阪芸術大、拓殖大とつづいていた。

第5区(10.5km)
 最長のエース区間で、しらす街道、田子の浦港、富士市の中心街、吉原商店街を駆け抜ける。平坦でスピードを競う区間である。
 名城大の山本有真は落ち着いた王者の走りで、たんたんとピッチをきざんでゆく。後ろから追い上げ急だったのは立命館大の飛田凛香である。2kmでは早くも2人をぬき、その後もピッチをゆるめず3,5kmではすでに5人抜きで7位までやってきた。
 山本の後ろは日本体育大の尾方唯莉、全日本選抜の小松優衣と大阪学院大の永長里緒が城西大の伊藤柚葉をかわして尾方を追い始めた。
 飛田の勢いはとまらず、名城・山本と区間賞争い、5.5kmでは7人抜きで5位までやってきた。さすがはエースのの走り。さらに関西大の磯野美空も7人抜きで6位まで押し上げてきた。
 名城大。山本はゆうゆうの独走、2位との差をさらにひろげた。
 5区を終わって名城大と日本体育大との差は2分28秒、3位には全日本選抜がやってきて2分37秒差、4位は大阪学院大で2分53秒差、5位は立命館大で3分06秒差、以下は関西大学、東北福祉大、城西大であった。

第6区(6km)
 天気さえよければ富士山がよくみえる。カメラをかまえて選手の通過を待ちたいポイントがいっぱいある区間である。ながくつづく田園地帯をまっすぐにのびるコースを名城大のキャプテンの小林成美がひとりわが道をゆく。日本体育大の嶋田桃子が見えない名城の背中をけんめいに追う姿が健気というべきか。
 最終区をまえにトップ名城大と日本体育大との差は2分06秒。嶋田がふんばって区間賞をもぎとった。3位は全日本選抜で大健闘。4位以下は大阪学院大、立命館大、関西大、東北福祉大、城西大とつづいた。


 大阪学院大が2位争いを制す

第7区(8.3km)
 最終区は3kmすぎから激しい高低差のあるコースである。名城大の谷本七星はやわらかいゆったりしたフォームで楽走、1km=3:12、坂道もものともせずに駆け抜けてゆく。4.2kmの中間点を13:48で通過して、きびしい上り坂につっこんでいった。
 うしろでは4位発進の大阪学院大の佐藤千紘が全日本選抜をかわして3位に浮上、日本体育大の赤堀かりんを追い始める。
 きびしい上り坂の6kmをすぎて、さすがに谷本のペースがにぶりはじめる。涼し気な笑みさえただよっていたその顔がゆがみ、苦し気に首を振りながら坂道をのぼってゆく。しかし表情は苦しげだが、足もとはしっかり動いている。
 後ろでは大阪学院大の佐藤が6,5kmで日体大の赤堀との差を10秒にして、追撃態勢に入る。さらに後ろでは大東文化大の山賀瑞穂が11位から一気に入賞園内に順位をあげてくる。
 名城大の谷本は苦しみに耐えながらも後続をちぎった。グラウンドにはいってきたときには、もう顔に笑みがもどっていた。5連覇のゴールだといわんばかりに高々とあげた右手、5本のゆびがくっきりとみえるように手のひらひろげていた。

 優勝した名城大学は5年連続の2連覇、今年も図抜けた強さを発揮した。7人のうち5人までが区間賞、圧倒的な選手層の厚さが強さの秘密だろう。7人のうち3人が1年生、4年生は2人だけ。5人までが残るから来年も安泰である。
 2位には最後に大阪学院大が日本体育大をとらえてやってきた。全日本3位、本戦が2位で安定した成績をのこせるのは地力がついた証拠だろう。
 3位の日本体育大もつねに上位にいて、前半はしぶとく名城にくらいついていた。
 4位には日本選抜がとびこんできた。混成チームながらつねに上位をキープしていたのは大健闘というべきだろう。
 5位には立命館大がやってきた。このレースは1区の遅れがすべてだったが、名城にくらべて選手の層の薄さが露呈したというべきか。前半出遅れながらの追いあげ、やはり地力のあるチームだといえる。
 ほかでは、最終11位に終わったが、東北福祉大の健闘が眼についた、2区では3位までやってきて、以降もつねに上位をキープ、6区までは入賞圏内にいた。そいう意味では、つねに入賞圏内につけていた9位の大阪芸術大も健闘したといっていいだろう。


◇ 日時 2022年 12月30日(金) 午前10時00分 スタート
◇ コース:冨士・富士宮市
 富士山本宮浅間大社~富士総合運動公園陸上競技場 7区間 43.4㎞
◇ 天候:(午前10時)晴れ 気温:06.1℃ 湿度:52% 風:北北西2.8m
◇名城大学(柳楽あずみ、石松愛朱加、米澤奈々香、増渕祐香、山本有真、小林成美、谷本七星)
公式サイト
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