女子は長野東が悲願の初制覇
   男子は倉敷が4年ぶり3度目

 

 高校駅伝の高速化はどどまるところを知らない
 気温は10℃と、この季節にしたは穏やか、風もほとんどなく絶好のコンディションだったとはいえ、男子は昨年につづいて大会新記録がとびだした。
 優勝した倉敷は「高校国内国際最高新記録・大会新記録」、2位の佐久長聖には高校最高新記録」と付されている。
 どうちがうのか?
 要するに走ったメンバーに外国人留学生が含めれているかどうかである。優勝した倉敷は外国人留学生がいた。2位の佐久長聖はメンバーは日本人だけの構成だったのである。
 つまりところ……。
 外国人留学生をふくむチームを記録のうえで別物あつかいしているのである。あくまで日本人だけで構成したチームの記録が正当なものであって、留学生のはいったチームの記録は別物なのだという考えが基本的に底流にある。
 日本人であれ外国人であれ同じ高校生である。だが外国人留学生には走れる人数も区間も制限し、記録のうえでも別物あつかいをする。いったい何のために外国人をうけいれているのか。国際的にも伍してゆけるランナーを育てるためではなかったのか。ならばおかしなワクをはめるのはいかがなものか。ともに互角に勝負のできる環境にしたほうが日本の長距離界に未来がある。
 要するにエース区間にケニア人留学生のランナーがぞくぞくとエントリーされてきて、かれらだけがテレビ画面に映るのがイヤなのである。それは高校駅伝だけでなく、実業団駅伝も同じである。実業団の場合はもっと徹底していて、外国人ランナーを1区間、最も短い距離の区間しか走らせない。
 ケニア人ランナーだけでトップ争いするさまがテレビでみるのがたえられない。それだけの話で外国人を受け入れながら、レースでは差別しつづけているのである。本末転倒とはこのことではないか。
 陸連関係者もメディアも因習姑息なアタマを、そろそろ切り替えたほうがいい。

 長野東が5区で大逆転
   仙台育英の連覇をはばむ


 女子のスタート時の天候は晴れ、気温は10℃、湿度50%、風は1.5mほどの微風というからランナーにしては絶好のコンディション……。

第1区(6.0km)
 昨年は仙台育英の米澤奈々香がスタジアム内からトップに立ち集団をひっぱったが、今年も仙台育英の杉森心音がトップに立ち、興譲館の奥本菜留海がつづいた。2人が集団をひっぱるかっこうでとびだしていったが、五条通りに出たところで、杉森がトップに立った。1kmは3:11と、まずは落ち着いた入りで、後ろは薫英女学院の水木佳菜、立命館宇治の山本釉未来、神村学園の田島愛梨、長野東の名和夏乃子らがつけている。
 1kmから2kmは3:08とピッチがあがり先頭集団はおよそ19チームがつけていた。米澤が抜け出すというのではなく集団ですすむ。
 中間点の通過は9:31、2から3kmは3:12と落ち着き、集団は12チームがつけていた。
 3~4kmは3:17で、仙台育英の杉森を先頭にして、興譲館の山本、長野東の名和、神村学園の田島、ルーテル学院の溝上加菜、立命館宇治の山本、薫英女学院の水本、鯖江の山口、山田の白木ひなの、順天の小川陽香、白鵬女の古田島彩らがつづいていた。
 トップ集団がばらけたのは残り1kmで、杉森がトップに立ち、水本、山本、古田島、名和がh抜け出した。
 残り300mで杉森と山本がスパート、しかし水本もついてきた。3人のラストのたたき合いになったが、最後は水本のスプリントがまさった。
 1区を終わって1位は薫英女学院、2位は4秒差で仙台育英、3位は5秒差で立命館宇治、4位は6秒差で長野東、5位は9秒差で白鵬。6位は14秒差で山田、7位は17秒差で順天、8位は22秒差でルーテル学院とつづいた。アンカーにカリバ・カロラインという大砲を擁する神村学園は32秒差の11位だった。

第2区(4.1km)
 タスキわたしのあと仙台育英の1年生・ジェロップが快走、300mで早くも薫英女学院の塚木夕藍をとらえてトップに立つ。ジェロップはその後も後ろから追わせず、じりじりと後続をひきはなし、仙台育英は連覇への足がかりを築いた。予定通りの展開というべきか。
 後ろから急追は長野東であった。落ちてきた薫英をとらえて3位に浮上すると、さらに前を追って、タスキ渡しの直前で立命館うじもとらえて2位までやってきた。さらに後方では世羅のローズ・ワングイが11人抜きで8位ばでやってきた。
 2区終了時はかくしてトップは仙台育英、13秒遅れで2位は長野東、3位は14秒遅れで立命館宇治、4位は山田で19秒遅れ、5位は順天で20秒遅れ、6位は24秒遅れで薫英女学院、7位は白鵬で24秒遅れ、8位は世羅で41秒遅れ、候補の一角・神村学園は44秒差の9位とつづいていた。

第3区(3km)
 トップをゆく仙台育英を立命館宇治と長野東が追う展開となった。仙台育英の1年生、長岡みゆきは1km=3:08、逃げるのだが、ここに切り札を配した立命館宇治、細谷愛子が追ってきて、のこり1kmではその差は8秒となった。
 細谷はなおも追い上げて肉薄するも、長岡はかろじてトップをまもった。
 かくしてトップは仙台育英がキープ、2位には立命館宇治がやってきて、その差は3秒、3位は長野東で17秒差、4位は白鵬で33秒差、5位は薫英女学院で33秒差、6位は順天で44秒差、7位は山田で49秒差、8位は神村学院で58秒差となった。

第4区(3km)
 トップをゆく仙台育英の渡邉来愛を立命館宇治の 池田悠音が追うのだが、渡邊がふんばって、その差はじりじりとひろがってゆく。神村学園との差は1分以上にひろがり、ほぼ優勝争いから脱落した。
 しぶとく追ってきたのは長野東の佐藤悠花である。立命館宇治の池田をとらえて1秒差で2位に浮上してきた。
 トップは仙台育英、2位は長野東で13秒差、3位は立命館宇治で14秒差、4位は薫英女学院で35秒差、5位は白鵬で38秒差、6位は順天で1分08秒差、7位は神村学園で1分15秒差、8位は筑紫女学院で1分18秒差。
 かくして優勝争いは上位3チームにしぼられ、1分以上後れを取った神村学園がどこまで追い上げるかが要注目であった。

第5区(5km)
 逃げる仙台育英は1年生の細川あおい、長野東はここにエースの村岡美玖を配していた。村岡はじりじりと追い上げ、2.6kmでとうとう細川に追いついた。そして西大路から五条通りに出たところでとうとうトップに立った。4kmではその差は12秒にまでひろがった。
 後ろからは七位発進の神村学園・ カリバ・カロラインが追ってくる。
 阪急電車のガードをくぐったところではトップは長野東の村岡、仙台育英の細川が追い、そして立命館宇治の瀬川はつづくも、後ろから神村学園のカロラインが迫ってくる。
 スタンドにトップで現れたのは長野東の村岡、力づよい走りでそのままゴールまで駆けぬけた。長野東の細川につづいて立命館宇治の瀬川はトラックにやってきたが、神村学園のカロラインが猛追、トラック勝負で3位をもぎとった。
 長野東は悲願の初優勝である。区間賞は4区の佐藤悠花だけだが、前半からつねに上位をキープして、トップからつねに17秒以内のところにつけていた。最終5区に配したエースの村岡で逆転トップを奪った。まさに理想的な展開だったというべきか。
 仙台育英や神村学園、世羅のように外国人留学生をもたないチームである。日本人だけのチームでも駅伝は戦えることを実証して見せた意味は大きい。
 候補で2連覇をねらった仙台育英は1区、2区で、おおきくリードして逃げ切る算段だったのだろうが、1区、2区のランナーがともに区間2位にとどまり、目算がくるった。神村学園は前半・中盤で、あまりにも置いてゆかれすぎたのが敗因。その結果、勝負がもつれて、長野東が漁夫の利を得たようである。


 3区の留学生が流れを変えた
   倉敷が大会新でねじふせる


 女子とは逆に男子のほうは今年も留学生がおおきく優勝を左右したといえる。3区の攻防がすべてというレース展開であった。

第1区(10km)
 スタンドから飛び出したのは今年も西脇工の長嶋幸宝であった。5条通りに出たところで後ろの集団との差は3秒……。1km通過は2:44、1~2kmは2:47、5kmの通過は14:30で区間新ペース、後ろとの差は26秒とひらいていた。昨年はここでペースダウンして集団にのみこまれたが、今年は快調である。6kmでは33秒差と開き、後ろの集団は32チームぐらいがつけていた。
 7kmすぎでは仙台育英の後村光星、佐久長聖の永原颯磨、八千代松陰の綾一輝など12チームがつけている。トップとの差は37秒とひらいてゆく。
 長嶋は苦し気な顔になるが、懸命に逃げてゆく。
 残り2km、後ろの集団は埼玉栄の小山翔也がひっぱり、佐久長聖の永原、八千代松陰の綾、大分東明の松井一、倉敷の南坂柚汰がつづいていた。
 残り1km、さすがに長嶋はへばってきたが、後ろも追い切れなかった。その差は23秒もあって長嶋はゆうゆうと逃げ切った。2位争いは熾烈だったが、佐久長聖の永原が混戦から抜け出した。
 かくしてトップは西脇工、2位は佐久長聖で19秒差、3位は八千代松陰で21秒遅れ、4位は埼玉栄で22秒遅れ、5位は倉敷で23秒遅れ、6位は大分東明で33秒差、7位は一関学院で34秒差、8位は西京で36秒差……。京都の洛南は44秒遅れの12位だった。

第2区(3km)
 距離の短いつなぎのこの区間、上位争いにはそれほどの変動はなかった。3区に留学生の大砲を持つ倉敷が、果たしてどのポジションをキープするか……。
 西脇工の小田伊織がトップをゆくも佐久長聖の浜口大和がじりじりと追い上げる。だが小田が逃げ切った。テレビには映らなかったが、後方では小林の服部哩旺が区間賞の快走、10人抜きで順位を17位まで押し上げてきた。
 かくしてトップ通過は西脇工、11秒遅れで2位は佐久長聖、3位は17秒遅れで倉敷、4位は17秒遅れで八千代松陰、5位は21秒遅れで埼玉栄、6位は32秒遅れで仙台育英、7位は37秒遅れで西京、8位は44秒遅れで洛南がつづいていた。

第3区(8.1075km)
 準エース区間のこの区間にはいると、トップ争いは熾烈となっった。
 最初に動いたのは佐久長聖の吉岡大翔、1kmではやくも西脇工の藤田大智をとらえてトップに立った。後ろからは倉敷の留学生・サムエル・キバティがひたひたとやってくる。 2kmすぎでキバタィは西脇工の藤田をとらえて2位に浮上、百万編ではトップの佐久長聖の吉岡との差はわずか3秒となった。
 吉岡がどこまで粘れるかがレースを左右する大きなポイントになった。
 白川通にはいったその差はみるみる詰まって、とうとう3,5kmで追いつき、キバティは一気に前に出た。だが吉岡も並みのランナーではない。けんめいに粘っていた。
 後ろからは大分東明のダニエル・ディリッが順位をあげてくる。
 中間点ではキバティが11:12、吉岡は10秒遅れと粘っていた。
 5kmすぎてキバティの独走となったが、吉岡がなんとか遅れないと粘り、後ろでは,大分東明のディリツと仙台育英のムチチが西脇工をとらえて4、5位に浮上してきた。
 キバティは区間新記録で駆け抜けでタスキリレー、予定通りとうべきか倉敷はトップに立った。
 かくして3区を終わって倉敷がトップに立ち、15秒遅れで佐久長聖。吉岡はけんめいにねばってその差を15秒にとどめた。3位以降は1分以上もはなれて、倉敷、佐久長聖のマッチレースの様相となった。

第4区(8.0875km)
 逃げる倉敷の桑田駿介、追う佐久長聖の 山口竣平、ともに2年生である。2kmでその差は10秒に詰まったが、そこから桑田は追わせなかった。3kmからはむしろその差が広がり始めたのである。
 中間点では両者の差は12秒、そこから山口は追いきれない。その差はじりじりとひろがり桑田の独走状態になっていった。ここで佐久長聖に追わせなかったことが勝負の大きなポイントになったといっていいだろう。このあたりから勝負の流れは一気に倉敷に傾いていった。
 4区を終わって倉敷と佐久長聖の差は詰まるどころか、逆に29秒とひらいてしまった。3位は八千代松陰、4位位以降は、仙台育英、西脇工、埼玉栄、大分透明が激しく競り合っていた。

第5区(3km)そして第6区(5km)
 逃げる倉敷をここでも佐久長聖は追いきれなかった。ランナーの力はほとんど互角、そこはトップに立ったモノの強さというべきか。その差はむしろひらいてゆく。5区を終わったところで31秒、6区を終わっても31秒……。

第7区(5km)
 倉敷はゆうゆうのトップ、アンカーの檜垣蒼が独走、中間点を大会記録上回る1時間53分51秒で通過。佐久長聖との差はさらにひらいてゆき、檜垣はそのまま4年ぶり3度目制覇のゴールにとびこんでいった。堂々の大会新記録である。
 倉敷は前半の1区、2区も好発進、3区の大砲キバティにタスキがわたったとき、トップとの差はわずか17秒、この時点で見通しは良好、優勝はほぼ手中にしてしまったといってもいい。
 しかし敗れたとはいえ佐久長聖も高校最高新記録である。3区のエース対決でも吉岡はキバティにくいさがって21秒しか負けていない。 これは他の留学生5人を上回っているのである。別物あつかいにしている留学生と互角以上に渡り合っているのである。
 そんなこんなで、もはや別物視する留学生の扱いを再検討する時期に来ているのではないか。


◇ 日時 2022年 12月25日(日) 女子:午前10時20分 男子:12時30分 スタート 
◇ コース:京都市・たけびしスタジアム京都(西京極総合運動公園 陸上競技場)発着 
男子:宝ヶ池国際会議場前折り返し7区間49.195Km 女子:烏丸鞍馬口折り返し5区間 21.975Km
◇ 天候:(午前10時)晴れ 気温:10.5度 湿度:63% 風:北西1.4m (正午)晴れ 気温:09.9度 湿度::50% 風:東1,5m
◇ 女子:長野東(名和夏乃子、窪田舞、仁科玲美、佐藤悠花、村岡 美玖)
◇ 男子:倉敷(南坂柚汰、植月俊太、サムエル・キバティ、桑田駿介、田坂愛翔、菱田 紘翔、檜垣蒼)
公式サイト
◇結果詳細:(男子)
      (女子)