名城大が史上3校目の4連覇を達成
    3区から独走でゴールに突き抜けた



 38回をかぞえる大学女子駅伝のチャンピオンシップ!
 おおかたの予想どおり、名城大学が、独りわが道をゆく、という異次元の走りで圧勝、史上3校目となる4連覇を達成した。
 かつて京都産業大学が4連覇(1994-97)、立命館大学が3連覇(2006-08)、5連覇(2011-15)という記録があるが、今回、名城大学が4連覇を達成して、記録の上で両校と肩をならべるところまできた。学生駅伝はとかく一年で戦力が一変するものだが、名城は選手層が分厚い。優勝メンバー6人のうち5人が残る。それゆえ来年もトップの座はゆるがず、立命館大学と肩をべるところまでくる可能性がたかいとみる。

 名城は昨年走った優勝メンバーがそっくりエントリーしてきたが、そのうち一人だけ入れ替えて、1年生をつかってきた。1区から6区まで、すべて区間賞をとり、文字通り完全優勝をもくろんでいて、事実、それはかなり確度がたかかったが、他の大学とて意地があろう。欲張りな名城のもくろみに待ったをかけたのは、今回優勝を争うであろうとみられていた大東文化大でも、戦力充実の日本体育大でもない。皮肉にも優勝とは縁がないとみられていた伝統校の立命館大だった。

 第1区(6.6㎞)……
 本大会に関していえば、見どころはわずかに、この1区と2区のみで、3区以降はたんたんと流れ、観戦するレースとしては、いささか盛りあがりにかけていた。
 名城大は3枚のエースのうちの1枚・和田有菜を配してきた。来年はチームの大黒柱になる選手である。むろん1区から突っ放す作戦とみた。5000mの持ちタイムの比較で1区のメンバのうち、和田はアタマひとつもふたつも抜けている。だが、ロードの駅伝は走ってみなければわからない。
 レースは関西大の柳谷日菜が引っ張る展開ではじまった。名城大の和田有菜、松山大の西山未奈美、石巻専大の斎藤凛、関西外大の西出優月、立命館大の飛田凛香らが前に出てきて、大東文化大の松山玲美は和田をマークするように後ろにピタとついている。
 1㎞の通過が3:16とまずまず、2㎞をすぎてもペースはあがらないが、和田が先頭にとびだしてきて、東洋大の田浦英理がならびかける勢い。
 2.5㎞あたりから集団はばらけはじめ、新潟医療福祉大、中大、環太平洋大などがこぼれてゆく。
 3㎞通過は9:39で先頭集団は14チームで、東洋大の田浦英理が引っ張り、ペースは1㎞=3:09に上がった。松山大はここで遅れはじめた。
 4.5㎞をすぎえ先頭集団は9チームほどにしぼられた。名城の和田、立命館の飛田、大東文化大の秋山、日本体育大の岡島楓、東洋大の田浦、大阪学院大の室伏香音など……。 トップ集団に変化があらわれたのは5㎞すぎ。ここで和田がスパートをかける。これに反応したのは立命館の飛田、小坂学院大の室伏で、大東の秋山はおいてゆかれる。
 和田がエースの主導権をにぎったのだが、立命館の飛田がくらいついてはなれない。和田と飛田では、5000mの持ちタイムが38秒もの差がある。だが飛田は一歩もゆづらない。和田は引き離そうとするが、飛田は背にぴったりくっついている。
 両者のマッチアップになったが、残り700m、こんどは飛田が渾身のスパートをかける。 その差はひろがり和田は懸命の形相で追ったが、差はつまらない。思いがけず足下をすくわれた和田は力みのせいだろう。差はじりじりとひろがり、飛田はそのまま中継所にすっとんでいった。立命館大がトップに立ったのはひさしぶりである。
 1区の通過は立命館がトップ、8秒遅れで名城大、13秒遅れで大阪学院大、大東文化大は4位で16秒遅れ、5位は日本体育大で19秒差、6位は健闘の東洋大で24秒差、7位は大健闘の石巻専大、8位は福岡大で32秒遅れ、シード組では関西大が9位で33秒遅れ、城西大は43秒遅れの11位、松山大は44秒遅れの12位発進となった。

 2区(3.9㎞)にはいると、名城大が追いあげてくる。名城・山本有真は1㎞で早くもトップをゆく立命館の西原愛華においついた。後ろは日本体育大、大東文化大が追っている。山本はすぎには前に行かない。西原の並走がつづいたが、残り200mで山本がスパートをかけ、ここで名城はやっと先頭に立つ。
 2区を終わってトップに立った名城大と立命館大との差は7秒、3位には日本体育大が追ってきて、トップと10秒差、4位は大東文化大で15秒差、以下は福岡大、関西大、大阪学院だ、関西外語大とつづいた。ちなみに2区の区間賞は名城の山本ではなく、日本体育大の1年生・保坂晴子であった。

 3区(6.9㎞)になって、やっと名城大のエンジンがかかった。小林成美が快走、立命館大の中田美優との差をじりじりとひろげはじめた。その後ろでは大東大・山賀瑞穂と日体大・一瀬美結とがはげしく3位をあらそっていたが、2位をゆく中田との差はひろがってゆく。
 小林と中田との差はどんどんひろがり、4㎞で24秒、5㎞では40秒となり、ここでとうとう名城の独走状態となった。かくして3区にして名城大の制覇はたしかなものとなったのである。
 3区を終わってトップは名城大、2位の立命館大との差は1分03秒、3位には日本体育大がやってきて1分31秒差、4位は大東文化大で2分16秒差、万年2位の大東は今回もまた前半で大きく後れをとって優秀争いかr脱落した。
 4区、5区、6区……
 トップに立った名城大の独演ショーとなった。3区の小林成美の区間新記録につづいて4区では1年生の増渕祐香も区間新に近い記録で区間書、5区の加世田梨花も区間新記録の快走で2位にやってきた日本体育大との差を2:52とした。もう前を行く先頭の姿はみえない差である。そして最後はアンカーの高松智美ムセンビが楽々と走って区間新記録(ただし区間2位)で、ゴールにとびこんでいった。
 名城大は史上3校目となる4連覇、5度目の優勝である。

 4区以降はもっぱら焦点は2位争いであった。前半のレースを支配した立命館大は4区まで2位をまもっていたが、5区で日本体育大と大東文化大に追われて、みつどもえの争いになる。
 名城大・加世田がトップを独走する後ろで、2位立命大の松本美咲を日体大の栗原泉、さらに大東の関谷夏希が追ってきたのである。
 1.3㎞で早くも日体の栗原は立命の松本においついて2位集団となるも、2㎞で松本は栗原に置いてゆかれる。さらに7㎞すぎで40秒差ぐらいあった関谷にも交わされてしまった。かくして5区を終わって2位をめぐる攻防は、日本体育大学と大東文化大学の争いになり、最終区にもちこされたのである。
 大東文化大学はエースの鈴木優花を6区に配している。故障あがりゆえの深謀だったろうが、さすがは学生駅伝を代表するランナーである。6区の1㎞すぎで鈴木は日体大の宮内志佳をとらえてしまった。はるか前方をゆく名城の高松の後ろ姿もみえないポジションにいたが、終わってみれば区間新記録で、同じく区間新の高松を上回っていた。
 5区と6区、大東文化大はここに2枚の大コマを配して追い上げたが、それでも名城とは2分51秒もの大差がついてしまっていた。

 優勝した名城大は突出していた。昨年の優勝メンバーが全員のこっていた。だが、そっくりそのまま6人起用せずに、ひとり入れ替えて、1年生をつかってきた。その1年生がもうすこしで区間新という記録で快走、区間1位を獲得している。
 6人のメンバーのうち3人が区間賞、3人が区間2位をしめた。そして4つの区間新をマークしている。選手層が図抜けて分厚く、まったくつけいる余地のない圧勝であった。
 大東文化大は今回もまた2位に甘んじた。4区までで名城に2分32秒も離されてしまっては、すでにして優勝戦線から脱落している。5区、6区のエース2枚をしても、追い切れなかった。2位とはいえ、優勝争いにいちども絡んでいないだけに、あまり評価できない。

 3位の日本体育大は立命館大を交わしての3位、価値ある表彰台である。2区の1年生保坂晴子の区間賞で弾みがついた。他のランナーも全員が区間5位までに名を連ね、堅実に走った。戦力充実で今後が期待できるチームになっている。

 立命館大は4位に終わった。だが1区、2区でトップを走り、前半の主役をつとめ、4区までは名城とほとんど互角に渡り合っていた。5区の松本美咲が区間11位におわり失速したが、それまで優勝争いをしていたのはこの立命館である。コマが一枚不足していたというべきだが、4位とはいえ、その戦いぶりは着順以上に評価できる結果である。

 以下、5位は関西大学、6位は大阪学院大学、7位には城西大とつづき、シードののこりひとつは松山大と拓殖大が競い、松山大が20秒先んじた。

 本大会の上位のチームは12月30日、全日本大学選抜駅伝で再戦するすることになる。選抜駅伝は77区間43.4kmで、区間も距離もふえ、きびしい上り坂のある難コースである。立命館大が5連覇したあと、現在、名城大が2連覇中である。
 名城大は選手層が厚さにものをいわせて、ここでもあっさり3連覇をやってのけるだろう。

◇ 日時:2020年10月25日(日)午後0時10分スタート
◇ 場所:宮城県仙台市
◇ コース:仙台市陸上競技場(スタート)→仙台市役所前市民広場(フィニッシュ)6区間計38.0㎞。
◇ 天気:晴れ 気温:16.8℃  湿度49:% 風:西南西5.1m
◇ 名城大学(和田有菜、山本有真、小林成美、増渕祐香、加世田梨花、高松智美ムセンビ)
◇詳しい結果:https://iuau.jp/ev2020/38weki/rel001.html
             ; http://www.morino-miyako.com/pdf/result_202010.pdf
◇公式サイト:http://www.morino-miyako.com/
◇NTV:http://www.ntv.co.jp/morinomiyako/