仙台育英が2度目のアベックV
  女子:2年ぶり4度目、男子は12年ぶり8度目のV

 

 女子のスタートは、曇天でほとんど無風状態、気温10℃、湿度67%といえば、願ったりかなったりのコンディションである。
 1㎞の入りが3:17とまずまず、比叡山の北川星瑠、諫早の弟子丸小春、須磨学園の土井葉月、仙台育英の小海遥、神村学園の木之下沙椰らの顔が見え隠れする横長の展開で五条通りをたんたんと東に向かってゆく。
 1~2㎞も3:16、だが西大路通りにはいったところでレースは動いた。立命館宇治の三原梓が集団を割って先頭に躍り出たのである。3㎞通過が9:46、三原は積極的に先頭に立って集団を引っ張った。躍動あふれる走りで後続をひきはなしにかかった。
 だが残り1㎞で常磐の星野輝麗、小海、和歌山北の小倉稜央が追ってきた。そして残り800で小海と小倉が三原をとらえてしまう。大健闘の小倉がトップに立つも、ラストの上り坂で小海が小倉をとらえた。
 1区を終わって仙台育英がトップ、ほとんど差なく和歌山北が2位、3位は常磐とつづき、以下は長野東、筑紫学園、須磨学園、諫早、成田、立命館と、ここまでが30秒以内につける展開で幕明けた。


 2区にはいると、仙台育英の米澤奈々香と和歌山北の吉田藍がトップを激しく争い、1.3㎞で仙台育英が単独トップに立つも、後ろから神村学園のバイレ・シンシアと興譲館のエスタ・ワンブイが急追してくる。2.2㎞ではシンシアとワンブイが2位をとらええる。神村のシンシアの勢いはとまらず、3.1㎞ではとうとう仙台育英の米澤もとらえてトップに立ち、ワンブイも2位までやってくる。
 2区終了地点ではトップが神村学園、5秒遅れで興譲館、そこから1秒遅れで仙台育英とつづき、区間1位となったテレシア・ムッソリーニの世羅がトップから19秒暮れで4位までやってきた。
 3区にはいると、トップをゆく神村学園の黒川円佳を仙台育英の清水萌が追っかけ、両者のマッチアップとなる。しかし残り50mのスパートで清水が黒川をふりきって、ふたたびトップに立った。2位の神村学園との差はわずか3秒、3位以降は30秒以上はなれ、ここで優勝争いは仙台育英と神村学園の対決に収斂されていった。
 4区にはいっても仙台育英の1年生・山中菜摘が区間賞の走りで、トップをまもり、追いかける神村の鳥居華も区間2位とゆずらない。その差は、5秒……。かくして勝負はアンカーにゆだねられたのである。
 白熱のアンカー対決……。仙台育英は強かった。木村梨七は神村の中須瑠菜との差をじりじりとその差をひろげて、相手に追わせることなくそのままゴールまで突き抜けていった。


 優勝した仙台育英は2年ぶり4度目の制覇である。区間賞3つで、2区いがいはトップをゆずらなかった。終わってみれば圧勝である。
 2位の神村学園も3位以下を1分以上も離しており、チーム力は仙台育英と拮抗していた。もし1区の紛れさえなければ、仙台育英と順位が逆になっていても不思議ではない。

 

 男子は第70回の記念大会で出場は58チームとなった。
 第1区は八千代松陰の佐藤一世、北海道栄の小野隆一朗が集団を引っ張り、1㎞=2:41、1~2㎞=2:50というペース。2㎞すぎで、ようやく縦長になったものの、3㎞をすぎても先頭集団には40校あまりがつけていた。5㎞の通過が14:33、先頭集団は25ぐらいになった。ここで世羅が遅れ始まる。
 7㎞すぎで先頭集団は10チームあまりとなり、佐藤のほか鎌倉学園の児玉真輝、東農大二の石田洸介らの顔もあった。主導権をにぎっていたのは佐藤でのこり900mで抜けだすかにみえたが、九州学院の鶴川正也も追ってくる。だが最後の400m、佐藤のスパートが勝った。
 1区を終了して、八千代松陰がトップ、2秒遅れで学校法人石川、4秒遅れで九州学院とつづき、以下は北海道栄、倉敷、仙台育英、ここまでがトップから10秒遅れ、あとは佐久長聖、東農大二とつづき、ここまでが18秒遅れであった。


 2区にはいるとトップ争いはめまぐるしくなった。学法石川がひとたびトップに立つも2㎞手前では、また八千代松陰が奪首、残り900あたりでは、再び学法石川とせめぎあいがつづいた。さらに仙台育英もやってきて、最後は八千代松陰がトップでタスキをわたしたものの、トップ争いは混沌としてきた。
 2区を終わってトップは八千代松陰、2秒おくれで仙台育英が2位に浮上、差なく学法石川がつづき、トップから3秒おくれれ佐久長聖、5位には8秒遅れで倉敷がやってきた。依然として勝負の道筋はいまひとつみえてこないが、3区に勝負をかける倉敷が上昇ムード……。
 3区にはいると八千代松陰、仙台育英、学法石川がはげしくトップを争うなか、倉敷のキプラガットが追ってきて1.2㎞すぎで、早くも先頭集団をとらえてしまう。2.2㎞あたりからは独走状態となり、後続はどんどんとおいてゆかれた。中間点では八千代松陰、仙台育英を22秒もひきはなし、7㎞では43秒もの大差をつけてしまった。
 かくして準エース区間の3区を終わって、倉敷がトップに立ち、2位の八千代松陰との差は58秒、3位の仙台育英とは64秒もの大差をつけてしまった。


 4区以降、倉敷のペースで流れてゆくのか。つなぎの4、5区で、後続との差がひろがるようであれば、流れは一気に倉敷に傾いてゆく。逆に差が詰まるようならば、6区に留学生を配した仙台育英にも、あるいは……というケースもあるかも。そんな展開がみえてきた。
 ポイントとなった4,5区……。
 倉敷と2位に浮上してきた仙台育英との差は。じりじりと詰まりはじめた。4区で54秒、5区で48秒である。勝負は6区の動向にゆだねられ、かくして、にわかに微妙な雲行きになってきた。3位以降は大差がつき、完全に両チームのマッチアップの様相……。
 さて注目の6区……。
 仙台育英のディラングは猛然と前を追った。1㎞でなんと18秒もつめて、区間新記録ペースで突っ込んでいった。中間点では、その差34秒、その後も追撃ははとまらず、倉敷の石井大輝の後ろにディラングがみえたかと思うと、その姿はどんどんと大きくなってくる。石井はなんとか逃げ切ったが、その差はなんとわずか5秒……。留学生の区間新の快走で仙台育英は、とうとう倉敷の影をとらえ、勝負はアンカー決着にゆだねられたのである。
 逃げる倉敷の長塩寛至、追う仙台育英の吉居駿恭、1.3㎞で吉居は長塩に追いつき、2,2㎞では吉居が前に出ようとするも、長塩は譲らず併走状態がつづく。4㎞すぎで逆に長塩がスパートをかけるが、吉居も離れなかった。両者は並走状態でトラックにとびこみんできて、ラスト勝負になった。勝負が決したのは第2コーナーだった。仙台育英の吉居は一瞬、並走する倉敷・長塩の表情を横目でうかがったかと思うと、そこで一気にスパートをかけた。直線ではかぶっていた白い帽子を握りしめ、およそ10mほどの差をつけ、右手人さし指を高々と突きあげてテープをきった。

 

 仙台育英は最終区逆転で12ぶりの制覇である。区間賞が2つ。7人全員が区間ヒトケタ順位で走るという安定した力が勝因だろう。倉敷は予定通りに3区でトップに立った。レースの大半を、この倉敷が支配していたが、4区5区で、いまひとつリズムに乗れなかったのである。

 仙台育英の優勝は女子が2年ぶり4度目。男子は12年ぶり8度目である。男女アベックVは2015年の世羅(広島)以来4年ぶり。なお仙台育英は1993年以来で、26年ぶり2度目の同時優勝である。


◇ 日時 2017年 12月22日(日) 女子:午前10時20分 男子:12時30分 スタート
◇ コース:京都市・西京極競技場発着 男子:宝ヶ池国際会議場前折り返し7区間49.195Km 女子:烏丸鞍馬口折り返し5区間 21.975Km
◇ 天候:(午前10時)曇り 気温:10.0度 湿度:67% 風:0.0m (正午)曇り 気温:10.0度 湿度::65% 風:南南東0.4m
◇ 女子:仙台育英(小海遥、米澤奈々香、清水萌、山中菜摘、木村梨七)
◇ 男子:仙台育英(喜早駿介、白井勇佑、吉居大和、菊地駿介、山平怜生、ムチリ・ディラング、吉居駿恭)
◇公式サイト:http://www.koukouekiden.jp/
◇結果詳細:(男子)https://cdn.mainichi.jp/vol1/2019/12/22/20191222hrc00m050100000q/0.pdf?1
(女子)https://cdn.mainichi.jp/vol1/2019/12/22/20191222hrc00m050041000q/0.pdf?1