名城大が大会新で初制覇
  中盤からトップをうばって圧勝

 

 大学女子の駅伝競走は2つ、10月に仙台でおこなわれる「全日本大学女子駅伝」と富士・富士宮市でおこなわれる本レースである。
 全日本大学女子駅伝は予選会から勝ち上がるチャンピオンシップの大会だが、全日本の上位校が顔をそろえる本大会も優勝校に文部科学大臣杯が授与されることになっており、レースの格としては同等のあつかいとなる。したがって両大会を制して初めて名実ともに大学女子日本一となる。
 とくに本大会が富士山コースになり、「富士山女子駅伝」になってからは、総距離数も富士山コースのほうがながく、全日本を制しても富士山で破れれば、大学日本一は色あせたものとなる。


 2013年に富士山コースになってから京都の立命館大学が5連勝している。立命館大は一昨年は松山大に、昨年は名城大に全日本でやぶれたが、この富士山駅伝ではともに圧勝してリベンジしている。
 それゆえに今年の全日本の覇者・名城大学にとって、名実ともに大学女子日本一と評価されるためには、立命館大、大東文化大をねじふせて優勝する必要があった。つまり名城の真価を問う大会だったのである。

 

 ポジジョンの奪い合いというべき第1区、名城は青木和を配して、いかにも勝ちにきているふうだった。1㎞=3:13の入りで、立命館大の中田実優、京産の安田萌加がひっぱるかたちではじまり、2㎞あたりでは名城の青木も前に出てくる。
 レースが動いたのは3㎞で、ここで名城の青木がとびだし、今回から正式参加となった全日本大学選抜の佐野英里佳(拓殖大)が追ってきて、集団から抜けだした両者のマッチアップとなす。はげしい先頭争いがつづいたが、最後は佐野が競り勝った。
 全日本大学選抜がトップ通過、2秒遅れで名城がつづき、3位は大阪学院大、4位は白鵬大、立命館とつづいて4秒遅れ、大東文化大は5秒遅れの6位、東農大は9秒遅れの7位と、有力どころはまずまずの位置をキープした。


 2区にはいっても全日本選抜の勢いはとまらなかった。この区間に配されていた五島莉乃(中央大)がハイペースで逃げたのである。この区間に名城大は和田有菜、立命館は佐藤成葉というエースを投入していた。五島を和田が追い、佐藤がその後ろから追撃を開始するが、五島との差はじりじりとひらいてゆく。五島は3:07、3:09、3:07というハイペースでトップを快走、二人に追わせなかった。
 かくして2区を終わっても大学選抜がトップをキープ、2位名城との差を22秒、3位立命館との差を33秒にしてしまった。大東文化は1分08秒遅れの5位、東農大は1分17秒遅れの9位に低迷、かくして優勝争いは名城と立命館にしぼられた。


 3区にはいっても全日本選抜は樺沢知佳奈(慶應義塾大)という力のあるランナーを配しており、トップを快走、2位名城との差を28秒、立命館との差を42秒までひろげた。


 名城と立命館がようやくトップをゆく大学選抜をとらえたのは4区だった。
 名城の松浦佳南が全日本大学選抜・加藤優果(中京学院大)を追い、3㎞でとうとうとらえてトップに立つ。さらに立命館の松本美咲も3.3㎞で加藤をとらえて2位に浮上した。4区を終わってトップ名城と2位立命館の差は22秒として、エース区間の5区に突入したのである。


 名城の加世田梨花はトップをゆうゆうと逃げる。立命館の加賀山美里が追い、後ろかた大東文化の関谷夏希がやってくる。5㎞地点では名城と立命の差は48秒とひらき、大東文化の関谷はそこから48秒となり、関谷が追ってくる。背後からは京都産業大の棚池穂乃香が7人抜きで6位までやってくる。
 加世田の快走はその後もおとろえず、立命館との差を63秒とひろげ、完全にレースの主導権をにぎった。立命館は大東文化に追われるかたちとなり、その差は13秒となって5区に突入した。


 6区の名城・玉城かんなは加世田のつくった貯金で余裕をもってトップをゆうゆうと独走、逆に追ってくる立命館との差を1分45秒にしてしまい独走態勢をつくってしまった。立命館はむしろ後ろからやってくる大東文化大に追われ、その差26秒となり2位も危なくなってしまった。


 最終7区(8.7㎞)は高低差の激しい難コース、前回は立命館の真部亜樹が区間新の快走で5連覇のテープを切ったが、今回は名城大の高松智美ムセンビと大東文化大の鈴木優花というスーパールーキーが快走した。
 トップをゆく名城の高松は軽やかな走りで傾斜のきつい坂道を楽々と駆け上がり、後続との差をひろげ、後半も追ってきた大東文化の鈴木に追わせなかった。最後まで快調なピッチでタスキをゴールまではこんでいった。
 立命館の真部は、二人のスーパールーキーにあおられたかたちで、2㎞手前で追ってきた大東文化大の鈴木にとらえらえてしまい、一気に突き放されてしまった。

 

 名城大は2位の大東文化大に1分29秒もの差をつける圧勝、これで名実とも大学女子日本一の座についた。勝因をあげれば、勝負どころの3区と5区で加世田と高松がフルに力を発揮したこと、さらに4年生の快走が光る。1区の青木和が差のない区間2位、4区の松浦佳南が区間1位で奪首、6区では玉城かんなが区間1位で独走態勢をつくりあげたのである。
 2位の大東文化大は5区の関谷夏希と7区の鈴木優花の区間賞で最後の最後に2位までやってきた。優勝争いしてのものえはないので2位といえ、あまり評価できないが、来年もこの二人は健在なので、3強の一角として、さらに上積みはあるだろう。


 6連覇をねらった立命館大は名城や大東文化にようにスーパーエースはいない。それでも各ランナーは堅実で大きく崩れない。名城と優勝争いをしていたのは2位の大東文化ではなく立命であった。さすがは伝統校である。
 注目すべきは全日本選抜である。今回から静岡選抜とともにオープンではなく、正式参加となったが、単独チームでは出られない大学のなかから選りすぐったランナーがそろい、3強につづく4位にくいこんだ。3区まではトップを占め、後半も上位から落ちなかった。
 東京農大、京都産業大は前半の遅れで流れにのりそこなったようである。
 
 名城大、大東文化大、立命館、この3校が近年のビッグスリーを占めているが、皮肉にも強豪といわれるこの3校の卒業生で、長距離・マラソン選手として大成したランナーはほとんど皆無という現実、これはどういうことなのだろう。


◇ 日時 2018年 12月30日(日) 午前10時00分 スタート
◇ コース:冨士・富士宮市
 富士山本宮浅間大社~富士総合運動公園陸上競技場 7区間 43.4㎞
◇ 天候:(午前10時)晴れ 気温:03℃ 湿度:52% 風:北西2.0m
◇名城大学(青木和、和田有菜、加藤綾華、松浦佳南、加世田梨花、玉城かんな、高松智美ムセンビ)
◇公式サイト:https://www.fujisan-joshiekiden.jp/
◇結果:http://www.fujisan-joshiekiden.jp/press/result.pdf