千葉が2年ぶり10度目の制覇
   8区の中学生が流れを呼び込んだ!

 中学生から社会人までの女性ランナーがたすきをつなぐ駅伝である。
 東日本18の都道府県が「ふくしまマラソンコース」で、いわば東の日本一を競う大会ということになっている。だが、2週間後に全日本実業団女子駅伝があるため社会人のトップクラスは出てこない。実業団チームが選手をかかえこんでしまうのはしかたのないところだろう。それにもかかわらず出場に踏み切った2人、埼玉の阿部有香里(しまむら)と千葉の木村友香(ユニバーサル・エンターテイメント)の勇気を称えておこう。

 前回優勝の長野は高校生を中心に中学生、大学生のメンバー構成だった。高校生はすべて長野東高、大学生3人もすべて長野東高の出身者だったがら、中学生いがいはすべて長野東高校のランナーで構成されていた。今回も同じような構成の布陣で連覇をねらってきた。
 昨年はその長野に後塵を拝した千葉はリベンジに燃え、明らかに優勝をねらいにきていた。ユニバーサルエンターテイメントの主力のひとり・の木村友香、さらに大学駅伝のトップクラスというべき加世田梨花や関谷夏希という実力派をそろえて、区間オーダーをみるだけでも、いかにも気合がはいっていた。レースは前回同様に両雄のマッチアップになることは明かであった。

 

 第1区(6.0㎞)、千葉・長野の両雄がどういう位置どりになるか。興味はもっぱらその一点にあった。静岡の清田真央、埼玉の阿部有香里がひっぱる展開で幕開けた第1区、1㎞=3:22、2㎞=6:42と比較的ゆったりとした滑り出しで、18チームがひとかたまりの大集団となってたんたんと進んだ。
 動きが出てきたのは4㎞すぎで静岡の清田がペースアップ、集団はすこしづつ縦長になり、4.5㎞で、昨年、この区間で1位となった長野の和田有菜が仕掛けると集団はばらけはじめ、宮城の三浦瑠衣、埼玉の阿部、千葉の加世田、神奈川の吉村玲美、静岡の清田の6人がつづくという展開になった。
 残り1㎞ではトップの和田を中心に加世田、阿部、吉村がひとかたまりになり、三浦、清田ははやや遅れはじめた。
 残り400mでは和田、加世田、阿部の3人による猛烈なスパート合戦、最後はベテランの埼玉・阿部が追いすがる長野の和田、千葉の加世田を突き放した。
 トップは埼玉、2秒遅れで長野、4秒遅れで千葉とつづき、神奈川、宮城、静岡……ここまでが18秒のあいだに連なっていた。東京は11位とやや出遅れた。長野と千葉はほとんど差がなく絶好の位置に付けた。

 2区(4㎞)

にはいると、すぐに千葉の木村友香が埼玉の三ツ木桃香をとらえてトップに立ち、長野の高校生・小林成美もやってくる。小林は木村のうしろにピタとつけて、機をうかがうそぶり……。3位以降は神奈川、宮城、埼玉が集団をなして追っていた。
 トップ争いに動きがあったのは2.8㎞すぎ、千葉の木村が小林を引き離しはじめた。差はじりじりと開き、中継所では13秒になっていた。3位には宮城の高校生・木村菜七やってきてトップから22秒差、これは大健闘である。以下35秒差で神奈川、静岡が1分以内につけていた。

 

 3区(3㎞)にはいって千葉の石川英沙がトップを独走、だが長野の高安結衣がじりじりと追ってくる。長野の高安がその後も追い上げて、中継点ではトップ千葉に4秒差まで迫っていた。3位には神奈川がやってきたが、トップとの差は36秒差となり、ここで千葉と長野のマッチアップの構図ができてしまった。

  4区(3㎞)は中学生区間である。逃げる千葉の杉山明沙を長野の千葉麻里子が追ってくる。残り800mで追う長野の千葉は杉山をとらえ、残り600で置き去りにしてしまう。長野が逆転トップに立ったのである。後ろは、群馬の不破聖衣来が6人抜きで5位までやってきたのが眼に付いた。

 

 5区(5.0875)、6区(4.107㎞)、長野と千葉の死闘がつづいた。
 5区では長野の大学生・玉城かんなが逃げたが、すんなり逃がしてもらえなかった。千葉の高校生・風間歩佳がじりじりと7秒あった差を詰めて、中継所にほとんど同体でとびこんだのである。6区になってこんどは長野は高校生の松澤綾音、千葉は大学生の上田未奈となった。両者の息づまる並走がつづいた。残り400mで松澤がスパートしてひとたび上田をひきはなしたが、上田も粘って、最後はほとんど同じにタスキをつないだ。

 

 7区(4㎞)も大学生と高校生の対決である。千葉は成田高の藤村華純、長野は日体大の村上愛華で,両者の並走がつづいた。後ろはもう1分以上の差がついており、何も見えないという状態だった。並走する両者に変化が生じたのは残り1.5㎞の地点だった。長野の村上が藤村の前に出ると、その差はみるみるひろがったのである。
 7区を終わってトップは長野、2位は千葉でその差は29秒とひらき、長野がリズムをつかんだかんいみえた。だが……。


 8区(3㎞)、長野はこの中学生区間さえうまく乗り切れば、アンカーには細田あいが控えている。連覇は目前かと思われた。だが、千葉の中学2年生、南日向の走りは鮮烈だった。29秒あったその差を一気に差を詰めてきて残り1㎞で逆転してしまったのである。8区を終わってトップ千葉と長野の差は17秒……。最終9区は10㎞区間だから、まだまだ勝負のゆくえはわからない。

 だが8区の南の快走で千葉は完全にその勢いに乗ってしまった。そのあたりが駅伝の面白さというものだろう。千葉のアンカー・関谷夏希は、南のもたらした流れに乗って、ゆうゆうと逃げた。追う長野の細田あいも関谷に優るとも劣らぬ走力の持ち主だが、追い切れなかった。タスキが渡った時点で勝負がついてしまっていたのである。

 

 優勝した千葉は9区間のうち区間賞が5つ、文句なしの優勝である。優勝回数10回は大会史上最多である。
 連覇を逸した長野も区間賞2つ、高校生、大学生がムラなく実力を発揮した。最後は千葉の執念に屈したが、力的にはほとんど遜色なかった。勝敗はちょっとした勝負のアヤによるものであった。
 茨城が3位にやってきたのは大健闘である。4区以降の各ランナーの快走が光っている。区間賞はひとつもないが区間2位が4つと,各ランナーの走りにムラがなかった。
 優勝候補の一角といわれた静岡、清田真央 安藤友香という世界陸上マラソン代表の2人を擁し、常に上位をキープしていたが、伸びきれず最終的には4位に終わった。
 5位の神奈川も前半からつねに上位をキープ。7区では西山未奈美が区間賞をとるなど最終区まできわどく3位をキープしていた。
 6位の宮城も東京や埼玉など首都圏チームの上位にきたのだから大健闘である。1区で好位につけ一時は3~4位を占めていた。
 優勝した千葉は成田高、2位の長野は長野東高のランナーが中心になっていたが、いずれも12月の全国高校駅伝でひたたび相まみえることになる。大学生の加世田梨花、玉城かんな、赤坂よもぎ(名城大)、細田あい(日本体育大)、関谷夏希(大東文化大)ら大学生は暮れの富士山駅伝で、ふたたびその姿がみられそうである。


◇ 日時 2017年 11月 12日(日)12時05分スタート
◇ コース:福島市信夫ヶ丘競技場~国道4号~国道115号~フルーツライン折返し日本陸連公認「FTVふくしま」マラソンコース 9区間 42.195km
◇ 天候:出発時 曇 気温11.0度 湿度57% 風:西1.8m(12:00)
◇ 千葉(加世田梨花、木村友香、石川英沙、杉山明沙、風間歩佳、上田未奈、藤村華純、南日向、関谷夏希)
◇公式サイト http://www.fukushima-tv.co.jp/ekiden32/
◇総合成績  http://www.fukushima-tv.co.jp/ekiden33/record/index.php