立命館が堂々の3連覇!
 先行、逃げ切りで影さえ踏ませなかった!


 霊峰・富士のふもとでくりひろげられる大学女子の選抜駅伝、標高差が172mというタフなコースである。平地の全日本よりも、あるいは紛れがあるやも、と思いきや、王者はやはり強かった。
 全日本5連覇の立命館は大会直前になって大森菜月が練習中に転倒して左膝を打撲。菅野七虹が故障から復帰したと思ったら、こんどはかわりに全日本制覇の原動力となった大森を欠くことになった。
 菅野が復帰したのはおおきいいが故障あがりだから未知数である。他のチームならば衝撃が走ることだろう。だが現在の立命館は選手層がいかにも分厚い。替わりはいくらでもいるよと、豪語するかのようなレースぶりであった。


 第1区の請負人である大森菜月を欠いて、立命館はいったい誰を1区に配してくるのかがもっぱらの興味はそこにあった。
 大森がいなければ常識的には菅野だろう。競り合いでの強さは大森よりも菅野のほうが勝っている。だから菅野は第1区のランナーとしてむしろ適役だとさえ思っている。もし菅野を5区か6区の起用してくれば、故障が癒えたとはいえ、まだ不安残しとみなければならない。そういう意味で前日のオーダー発表がたいへん気にかかっていた。
 第1区が菅野七虹であるとわかったとき、これで、立命館の勝利は動かないだろうと確信した。1区起用なら、すでにトップギアで走れる状態までもどっている証だとみたのである。

 1区(6.6キロ)はスタートから中継所まで78mの高低差がある長い下り坂である。大東文化大の福内櫻子が積極的に前に出得引っ張ったのは、なんとか立命館に一泡吹かせようという執念からだろう。大阪学院大の新井沙紀枝、松山大の上原明悠美、名城大の青木和、そして立命館の菅野七虹がつづくという展開。
 2㎞すぎでは名城の青木和がトップに立ち、このあたりからペースが少しずつあがりはじまた。タテ長の展開になり、3.8㎞で立命の菅野、松山の上原、名城の青木が肩を並べる展開になるも、登り坂の4.4㎞あたりで候補の一角・大東文化の福内がなんと、意外にもここで遅れていった。
 先頭集団のイニシャティブを握ったのは立命館の菅野であった。新井、青木、上原とのサバイバルレースになったが、勝負強さではやはり菅野が一枚ぬけていた。4.9㎞で上原が置いてゆかれ、5.2㎞では新井が遅れた。最後は菅野と青木との叩き合いになったが、菅野が5.5㎞でスパート、力強い走りで後続を振り切った。
 2位には6秒差で大阪学院大、9秒差で名城、松山大は11秒差の4位と好位置をキープしたが大東文化大は31秒差の9位と出遅れて明暗をわけた。


 2区(3.5㎞)と3区(4.4㎞)は穏やかな下りコースである。しかし東海道線の高架橋などアップダウンがあり、どれだけスピードに乗れるかどうかが勝負となる。
 好発進した立命館の池本愛は、1区・菅野の流れに一気に乗ってしまう。2㎞通過が5:50と好ペース、中間点を7:35、後ろは誰も追ってこなかった。1区で9位発進の大東文化大は小枝理奈で5位まで順位をあげてきたが、タイム的には立命館の差は51秒とひろがってしまい、早くも圏外に去ってしまった。


 3区にはいっても立命館・和田優香里のきびきびしたキレのある走りに目を惹かれた。松山、名城、大東、大阪学院がはげしく順位争いをすするなか、ゆうゆうとトップを快走、4区の太田琴菜にタスキが渡るときには2位の松山に47秒もの差をつけてしまい、立命館3連覇の道筋がしっかりできあがってしまった。1区の菅野はともかく、2区の池本、3区和田の区間賞がおおきかったといえる。
 立命館は4区(9.4㎞)になっても手をゆるめない。太田琴菜が攻めの走りで突っ走った。1㎞=3:14ではいり、中間点は15:00と区間新ペースでのりきり、わずかに区間新にはとどかなかったが、後続に2:22秒もの大差をつけてしまったのである。
 
 立命館は5区(5.0㎞)と6区(6.8㎞)に関紅葉、加賀山恵奈という1年生を配していたが、後続は順位争いに精一杯で、立命館を追う力はなかった。かくして6区を終わってトップをゆく立命館と2位・名城との差は3分29秒と距離にして1㎞以上の差がついてしまっていた。

 最終7区(7.7㎞)は富士山をあおぎみる登り坂で2㎞すぎから4.6㎞で169m駆け上がるというコース、途中の3.8㎞では急激な下りもあるというありさまである。競り合う展開になれば紛れもあろうが、立命館はひとりわが道をゆくというありさまだから、勝負はすでに決していた。
 立命館の園田聖子は今シーズン初登場で、本調子を欠いて苦しい走りだったが、それでもやすやすと3連覇のゴールまでタスキを運んでいった。


 立命館は大学レベルでは一枚ぬけた存在で、いつも異次元でレースをしている。7区間のうち5区間で区間賞、文句なしの圧勝である。ロードに強く、選手たちはだれもかれも駅伝の戦い方を熟知している。エントリメンバーのうちひとりも4年生はいない。だから立命の王座は当分の間つづくのだろう。


 立命の卒業生は仏教大の卒業生にくらべて、なぜか卒業後に大成する選手は少ないのだが、皮肉にもだからこそ、大学駅伝に強いのかもしれないといううがったみかたは、どんなものだろう。


 2位の名城は大健闘というべきか。全日本5位からのジャンプアップだが、全日本も3位はありえた展開だったら、確実にチーム力は上向いている。1区で上位につけたのが好リズムを呼んだようである。
 3位は松山大学、4位は大東文化大、5位は日本体育大学、6位は大阪学院大学……と、終わってみれば上位校が収まるところにおさまっている。ただし意外だったのは大東文化大であろう。もうしこし際どく立命館に肉薄するだろうと思われたが、1区で後手を分であっさり圏外に去ってしまい、今回もちぐはぐな戦いぶりで期待を大きく裏切った。
 ほかで7位の白鴎大だろう。全日本12位から東京農大や城西を上まわって入賞圏内の突入してきたのは評価すべきだろう。


 それにしても……
 本大会は例年23日(祝)に行われてきたが、どうして暮れも押し迫った30日なのか。大会主宰者の意図がさっぱりわからぬ。


◇ 日時 2010年 12月30日(水) 午前9時15分 スタート
◇ コース:冨士・富士宮市
     富士山本宮浅間大社~富士総合運動公園陸上競技場 7区間 43.4㎞
◇ 天候:(午前10時)晴れ 気温:06.8度 湿度:39% 風:北西1.5m 
◇立命館大学(菅野七虹、池本愛 和田優香里、太田琴菜、関紅葉 加賀山恵奈、園田聖子)
◇公式サイト:
http://www.fujisan-joshiekiden.jp/index.html
◇結果:http://www.fujisan-joshiekiden.jp/press/result.pdf