駒澤大学が15年ぶり制覇!
       後続に影も踏ませぬ王者の走りで圧勝!


 駅伝シーズンが幕あけた。
 2020年オリンピック、東京開催がきまって、最初にむかえた陸上長距離のビッグレースである。

 本大会を緒戦にした学生3大駅伝から、世界をめざすランナーがたくさん出なければ、日本男子のマラソン・長距離の未来などありはしない。7年後のおおきな目標ができたのだから、昨今、世界の3流、4流に貶められた日本男子の長距離陣に、どのような変化が兆してくるのか。本大会からはじまる学生3大駅伝、期待をもって見まもりたいと思っている。

さて本大会、各チームの戦略が見え隠れするという意味で興味あるレースである。むろん各チームともに、最終目標は1月の箱根であるから、本大会はそこに向かう、あくまでプロセスという位置づけである。だから本大会では今シーズンの新戦力を試してくる。そういう場が出雲駅伝なのである。

100点満点のレースをしたのは、優勝したら当然のこととはいえ、駒澤大だろう。終始陣営のヨミ通りのレース展開に終始したのではなかろうか。終始、苦虫をかみつぶしたような顔をしている監督も、今回にかんしては笑いがとまらないだろう。

 短い距離をつなぐ本大会は、スタートの1区、2区のデキがポイントとなる。スピード駅伝では、ここで躓くと、早くも優勝戦線からは脱落してしまう。今回、優勝争いを演じるであろうと思われた主力チームも、くっきりと、この2区間で明暗が分かれてしまった。

 注目の1区、優勝を狙う東洋は、過去3度出走した学生駅伝ですべて区間賞という田口雅也を配するという万全の体制であった。あきらかに優勝をねらって出てきた。駒澤も気合いがはいっていた。大八木監督が3本柱の一角にあげ、そのなかでも最近の成長が著しい大崩れのない中村匠吾を起用してきた。明治の廣瀬大貴も5000M=13分台を誇る。日本体育大は昨年度箱根5区区間賞の服部翔太……。果たしてどのチームが流れに乗れるか。興趣つきないものがあった。

 この出雲に関していえば1区が最大のみどころである。余談ながら時評子のぼくは法政大学の西池和人に注目してみていた。ぼくのランニングのコーチであり、法政出身の元箱根ランナーS氏から、前夜に電話があり、「西池が絶好調だから、見てくれ」と言われていたからである。かつて高校駅伝のスター選手だった西池は1~2年まではケガに泣いてタダの大学生。たが、現在は故障も癒えて、復調気配だというのであった。

 2キロまで大集団ですすんだ1区、レースが動き出したのは3.6Kあたりで、日本体育大の服部、東洋の田口、駒澤の中村といった主力どころがトップをうかがう。3.8Kで駒澤の中村がスパートするも服部がくらいつき、5Kでは法政の西池、青山の小椋、順天の松枝、早稲田の柳が加わってトップ集団に。意外にも、ここで東洋の田口はじりじりと遅れだしてしまった。

 余裕があったのは駒澤の中村、6.6Kでスパートして日本体育大の服部以下をふりきったのである。1区をおわってトップ駒澤と2位の日本体育大との差は20秒、西池の法政はそこから1秒遅れの3位というのは大健闘だろう。
 候補のうち日本体育大と昨年優勝の青山学院は、それおれ20~22秒差で、圏内に踏みとどまったが、東洋は40秒差の6位、明治はなんと67秒差の12位と沈んで、明暗を分けた。
 2区の駒澤は1年生の中谷圭祐、ここで未知数の新戦力を試しに出てきた。しかし東洋と差は40秒もある。大きな貯金にまもられて、この1年生はゆうゆうトップをひたはしった。心地よく走らせてしまい、後続は苦しくなった。東洋との差は56秒とひらいてしまい、レースの主導権は完全に駒澤の手に落ちたのである。

 レースの流れをつかんだ駒澤は3区にはいっても村山謙太が区間新の快走、逆に追っかける東洋の設楽悠太は伸びを欠き、トップから1分34秒差(6位)と逆に引き離されてしまい、この時点で、東洋の出雲は終わった。


 駒澤は終始安定していた。4区の油布郁人、5区の1年生西山雄介でさらに2位との差をひろげ、1分近い大差をもらったアンカー窪田忍も区間新記録の快走というありさまであった。駒澤の優勝タイム2時間9分11秒はむろん大会新記録である。6区のうち、1区、3区、6区のポイントとなる区間で、計算通りに区間1位をとり、他の区間でも2位をキープした。寸分の狂いもなく絵に描いたとうりのレースができたというところだろう。

 それにしても駒澤の出雲制覇は実に15年ぶり、意外というほかない。スピード力が看板のチームながら、これまでは毎年のように1区でつまずいていた。今回は1区、2区で好発進、まったく危なげがなかった。駒澤の今年のスローガンは「原点と結束」だという。4年生の窪田、3年生の中村、村山が引っ張り、1年生の中谷、西山雄介も区間2位。チーム一丸となった結束力を発揮したといってよい。何よりも新戦力に使えるメドがついたのは大きい。全日本大学駅伝にむかって駒澤が一歩抜けだしたとみていい。

東洋は前半で出遅れてレース半ばで早くも優勝争いから脱落したが、4区、5区で追い上げて最後は2位まであがってきた。その地力はあなどれないものがある。距離が長くなる全日本では、やはり駒澤に向かって立つ1番手にあげなくてはなるまい。

 大健闘したのはは中央学院ではないか。最終的には6位だが、前半から好位に付け、5区までは3位をキープしていた。法政も最終8位だが、1区で3位につけ、その後もつねに4~6位をキープしていた。逆に期待はずれは明治である。スピードランナーをそろえ、この出雲に関するかぎり、優勝候補の呼び声も高かったが、1区で出遅れてリズムを欠いてまった。モロさが気になるところである。

 そんなこんなで出雲をみるかぎりにおいて、今年の勢力地図は駒澤、東洋の2強体制、日本体育大、青山学院がつづき、早稲田、明治はその後ぐらいか。おもしろい存在をあげれば中央学院と法政か。ほかには出雲には出ていないが山梨学院にも要注目。箱根予選会にまわった中央、城西、使いあたりは現状でみるかぎり苦しいとみた。


◇日時 2013年 10月 14日(月=祝)12時10分 スタート
☆コース:出雲大社正面鳥居前~出雲ドーム前=6区間44・5㎞
☆天候:くもり 気温26.9度 湿度37% 風:南2.5m
☆駒澤大学(中村匠吾、中谷圭祐、村山謙太、油布郁人、西山雄介、窪田忍)
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