なんと、なんと! 青山学院大学が……
          候補チームはこぞって脱落、伏兵があれよあれよ


 学生3大駅伝の緒戦となる出雲駅伝が8日におこなわれたが、シーズンの戦力をさぐる大会を制したのは、候補の呼び声たかかった駒澤でも、東洋でも,早稲田でもなく、全日本の出場権すらもたない青山学院大だった。むろん初優勝で2時間09分41秒は大会新記録である。


 駅伝はトラックのタイムではなく、走ってみなければ分からないというが、まさにそのとおりのレースに終始した。実力的にも、選手層の厚さのうえでも図抜けた存在の駒澤大、学生3冠をねらう東洋大、捲土重来を誓う早稲田大はいったい何をしていたのか。そんなふうにつぶやきたくなるレースだった。


 出雲は短い距離をつなぐリレーマラソン的駅伝だから、ミスがあれば致命的になる。昨今は大砲といわれるスーパーエースが不在、選手は小粒になっている。各大学ともに実力が伯仲しており、結果はその日の出来、レース展開が明暗をわけることが多くなってきた。奇しくも今回の結果はそんな最近の傾向をみごとに反映している。


 勝負の明暗を分けたのは1区と2区である。結果的にみて、優勝争いは出だし2区間で流れに乗ったチームに絞られてしまった。

 
 1区では中盤から早稲田の大迫傑がとびだし、さすがは学生長距離界の第一人者と思わせたが、残り1㎞で失速するというテイタラク、強い向かい風を計算にいれていなかったとすれば、ボーンヘッドというほかない。


 かくして早稲田も駒澤も出遅れて初っぱなから波乱模様の展開になった。トップをうばったのは、なんと中央、第一工業、順天、IV、山梨学院、國學院、青山が上位を占め、東洋がトップから10秒遅れとつづいた。


 2区になっても早稲田は伸びてこない。トップから43秒とさらに遅れ、候補筆頭の駒澤もトップから70秒遅れと大きく離されてしまい、この時点で両チームは完全に圏外に去ってしまった。


 2区を終わって良リズムにのったのは青山学院で1区の7位から2位まで順位をあげ、3区でトップを狙えるところまで押し上げている。候補の一角・東洋大も1区8位から4位まで上げてきて、かろうじて圏内にとどまり、戦力と実績のうえからみて事実上、優勝争いは青山と東洋にしぼられてしまった。


 3区にスーパールーキーといわれる久保田和真を配することのできた青山の戦略はみごと的中した。恐いモノ知らずの強さというべきか。それとも14秒差で追ってくる東洋大の同じくルーキーの服部勇馬をぶっちぎってしまった。


 青山は久保田の快走で完全に流れにのってしまった。ルーキーの勢いは4区・大谷遼太郎の区間新をもたらし、2位の東洋になんと40秒という大差をつけ、早稲田、駒澤はこの時点でもまだ下位で苦しみあえいでいた。


 主力が前半で総崩れ、漁夫の利を得たのが青山学院というべきだろう。優勝した青山学院はたしかに戦力アップしていると思えるが、全日本の予選で脱落したチームである。そんなチームが圧勝するようでは、全日本も箱根も波乱万丈とみてまちがいなさそうである。


 出雲から判断するかぎり、全日本、箱根にむかって、順調に始動したのは、やはり昨年の覇者・東洋大だろう。調子がいまひとつながらも2位をキープ、距離が長くなればさらに上積みがある。続いてはやはり駒澤大が、前半であれほど大きく出遅れながら、後半の追い上げはみごと、最終5位までやってきた。あとはどんぐりの背比べというべきで、何もみてこない。


 早稲田は今年にかんするかぎり苦しいだろう。チームがばらばらで戦える戦力にはっていない。この数年というもの高校駅伝の銘柄級選手を擁しながら、誰一人として大きく成長していないとすれば、陣営の指導体制に問題があるのだろう。


 地味ながら健闘したのは3位の中央、4位の山梨学院、7位の順天堂といった名門校である。前半からつねに上位を賑あわせ、久しぶりに存在感をしめしていた。


 そんなわけで、今年は出雲だけでは、箱根に向かう各校の勢力分布図をしかと描くことはできそうにない。まずは全日本の戦いぶりをしっかり見定めておきたい。


◇日時 2010年 10月 08日(月=祝)12時10分 スタート
◇コース:出雲大社正面鳥居前~出雲ドーム前=6区間44・5㎞
◇天候:くもり 気温23.0.度 湿度62% 風:北東5.0m
◇☆青山学院大学(小椋裕介、藤川拓也、久保田和真、大谷遼太郎、福田雄大、出岐雄大)
◇最終成績はこちら
http://www.izumo-ekiden.jp/record/record.html