駒澤大学が3年ぶり9度目の制覇
    最速軍団が本領発揮


駅伝時評web-auni


 大学駅伝の日本一を決める第43回全日本大学駅伝対校選手権大会は2011年11月6日(日)におこなわれ、駒澤大学が3年ぶり9回目の優勝を果たした。タイムは5時間15分46秒。2位は東洋大学、3位は早稲田大学がつづき、レースの展開には紆余曲折があったが、おわってみれば3強のそろい踏みにおわった。
 駒澤大学は1区で3位と好意位置をキープ、2区のルーキー村山謙太でトップを奪うと3区の油布郁人、4区の上野渉、5区の久我和弥までが連続で区間賞、後続を突き放して、アンカーの窪田忍も堅実にペースを守ってトップでゴールまで駈けぬけた。
 2位の東洋大学はアンカー・柏原竜二が懸命に追い上げたがおよばず、10月の出雲駅伝につづいて2冠達成はならなかった。連覇をねらった早稲田大学は1区で12位と出遅れたのがすべてだった。
 4位・日本大学、5位・中央大学、6位には上武大学がとびこんで来年のシード権を獲得。とくに先の箱根駅伝予選会でトップ通過の上武大学、初出場でのシード権獲得は快挙。東海大はアンカーの村澤明伸が追いあげたが、上武大から42秒差の7位に終わり、シード落ちとなった。


◇ 日時 2011年 11月 6日(日)午前8時10分スタート
◇ コース:熱田神宮西門前(名古屋市熱田区神宮)→ 伊勢神宮内宮宇治橋前(伊勢市宇治館町) 8区間 106.8 km
◇ 天候:くもり 気温17.6度 湿度98% 風:北北西0.3m(出発時) 
◇ 駒澤大学(撹上宏光、村山謙太、油布郁人、上野渉、久我和弥、中村匠吾、高瀬泰一、窪田忍)
◇総合成績はこちら
http://daigaku-ekiden.com/taikai_kiroku/




▽明暗をわけたルーキー対決第2幕!


 1年生は走ってみなければ分からないというのが1年生の通り相場らしい。どんなに力があり、スーパールーキーと呼ばれる存在であっても例外ではないらしい。
 先の出雲全日本大学選抜駅伝につついて本大会でも、奇しくもそういう大学駅伝の常識が実証されるカタチとなった。
 スーパールーキーの起用がハマルかそれとも裏目になるか。駒澤大学と早稲田大学にとって、あるいみでの大バクチが命運を左右するカタチになってしまったのは皮肉というほかないだろう。
 出雲で優勝候補の最右翼といわれながら駒澤は1区で起用した村山謙太が区間13位という誤算、それがすべてだった。かくして後半は2位まであがってきたが、あえなく伏兵・東洋大学に敗れ去ったのである。
 出雲3位の早稲田は出雲3区で期待のルーキー・山本修平を起用、区間2位ながら、トップを奪うという好走ぶりをみせた。ルーキーのデビュー戦では早稲田陣営に軍配があがった。
 今回がそのルーキー対決の第2幕、早稲田は試運転で結果を出した山本修平を第1区にぶつけてきた。そして駒澤は序盤のポイントとなる2区にあえて村山謙太を起用してきたのである。
 今回もまた出雲とおなじく、両者の出来、不出来が両陣営の明暗をわけることになってしまった。結果的に出雲とは真逆になったのだが、早稲田が今回も3位に沈んだのは、かならずしもルーキーの失敗だけによるものではない。山本ひとりに責めをおわせるのはいかにも酷というべきあると付記しておく。



▽冷静な判断でみごと借りを返した!


 勝負のポイントは第2区にあった。
 いつもながら1区は出入りの激しいレースになった。第一工大・ジュグナがぶっちぎって逃げたが、9チームが集団をなしてつづき、最後は熾烈なトップ争いになった。抜け出したのは日本大学の田村優宝だったが、東海、駒澤、明治、福岡、 第一工、東洋、中央までが10秒以内、9位の京産までも20秒以内にはいっているという大混戦、そんななかで早稲田のルーキー・山本修平は12㎞あたりで遅れ、1分04秒差の12位と大きく出遅れてしまったのである。
 駒澤は好位置をキープして、ルーキーの村山謙太へ、逆に早稲田は大きく出遅れるという誤算をひきずって、エースの大迫傑へタスキが渡ったのである。
 2区でトップを奪ったのは明治の鎧坂哲哉、1㎞でトップに立ち、駒澤、東洋、東海、日大、中央をひきつれて進むという展開、後方からは早大の大迫が5人抜きでやってきて7㎞では23秒差まで迫ってきた。
 波乱を呼んだのはよくもわるくも明治の鎧坂だろう。結果的にみて、この日の鎧坂は本調子を欠いていた。集団はそんな鎧坂マークですすんでいたから、勝負どころをつかめぬまま、レースはもつれてしまった。
 そんななかで果敢にしかけた山謙太は正解だった。7㎞でスパートして集団をぬけだした。置き去りにされた2位集団との差はどんどんひろがるばかり、その後方では一時は20秒差まで追ってきていた早稲田の大迫が失速、代わって青山学院の出岐雄大が快走、明治の鎧坂までとらえて3位まであがってくる。
 2区でトップに立った駒澤大学は2位の日本大学(堂本尚寛)に23秒もの差をつけて3区の油布郁人にタスキを渡した。3区の油布は区間1位の快走で、一気に勝負の流れを駒澤に呼び寄せたのだが、その流れをつくったのはルーキーの村山だった。
 出雲で泣いた村山は、あのときの苦い経験をバネにして、みごとにリベンジを果たしたのである。
 早稲田はエースの大迫傑にのぞみをつないだものの、前半に突っ込みすぎたのか、後半はそれほどの伸びはなく、好リズムに乗り損なってしまった。



▽思わぬ圧勝劇の裏側!


 駒澤の勝因はひとつのミスもなかったことにつきるだろう。
 3区の油布郁人が区間賞をとると、4区の上野渉、5区の久我和弥と3区連続で区間1位がつづいた。6区の中村匠吾は区間3位だが、7区で高瀬泰一が、また区間賞である。8人全員が区間3位以内という盤石の成績であった。
 出雲制覇の東洋大学は、距離がながくなってさらに期待されていたが、いまひとつ流れにのりきれなかったようである。1区と2区でいまひとつ勢いがつかなかったのがいちばんの敗因だろう。4区、5区で、駒澤に2分以上もはなされてしまい、そこで勝負は決してしまった。アンカーの柏原竜二がトップの駒澤との差1分40秒を33秒まで猛追したがとどかなかった。
 東洋にしてみれば柏原の復活が箱根へむけての収穫というべきだろう。
 連覇を狙っていた早稲田は、1区で12位と出遅れてつまづいてしまった。そのために2区の大迫が最初に突っ込みすぎて後半失速するというありさま、この段階で優勝争いからは完全に脱落してしまった。
 なぜ1区は3区にまわった矢澤曜ではなくてルーキーの山本修平なのか。佐々木寛文がどうして2区、4区というような勝負のポイントになる区間に出てこないのか。
 おそらく体調がととのわず万全の態勢でなかったのだろう。ということはケガ人続出ゆえに選手たちがいまだ戦える状態になかったということなのだろう。今回の区間エントリーは苦肉の策だったということの証左というべきか。



▽大健闘の上武大


 今大会で特筆すべきは上武大学の健闘ぶりだろう。先の箱根駅伝予選会でトップ通過して注目されたが、今回もあれよあれよと初出場で初シードを獲得してしまった。1区で佐藤舜(1年)が区間10位につけ、6区では4位まであがってくるという安定した戦いぶりであった。
 飛び抜けた力のあるランナーはいないが、平均的な走力をもつランナーが量的にそろっている。箱根駅伝でもシード権争いにからんでくるだろう。。
 全日本大学駅伝はいわば箱根駅伝の前哨戦となる。出雲では6人、全日本では8人、そして箱根では10人の戦力が問われることになる。
 全日本の結果からみるかぎり、優勝した駒澤大学の戦力が分厚いようにみえる。つづくのはやはり2位の東洋大学、柏原竜二が昨年よりも調子がよさそう、長い距離なら強いところを発揮するチームだけに、駒澤とは好勝負になるだろう。
 連覇をねらう早稲田はやはり苦しいか。今の時点で戦力がととのっていないのをみると、あと1~2カ月ぐらいで、大幅に修正できるとは思えないのである。連覇はかなりきびしいものがあるだろう。
 今大会をみるかぎり、東海大学の村澤明伸も明治の鎧坂哲哉という大器も、いまひとつ調子があがってないようである。箱根本番までには立て直して、箱根ではぜひとも見どころをつくってほしいものである。



■総合成績
1 駒澤大学 5時間15分46秒
2 東洋大学 5時間16分19秒
3 早稲田大学 5時間21分06秒
4 日本大学 5時間21分54秒
5 中央大学 5時間22分21秒
6 上武大学 5時間23分44秒
7 東海大学 5時間24分26秒
8 明治大学 5時間26分22秒
9 青山学院大学 5時間27分55秒
10 城西大学 5時間30分55秒
11 帝京大学 5時間31分32秒
12 京都産業大学 5時間32分36秒
13 日本体育大学 5時間33分55秒
14 日本文理大学 5時間35分34秒
15 愛知工業大学 5時間35分34秒
16 立命館大学 5時間36分23秒
17 関西学院大学 5時間36分27秒
18 第一工業大学 5時間37分29秒
19 中京大学 5時間37分41秒
20 新潟大学 5時間38分05秒
21 札幌学院大学 5時間38分15秒
22 福岡大学 5時間38分41秒
23 東北福祉大学 5時間39分22秒
24 北海道大学 5時間41分10秒
25 広島大学 5時間42分42秒
  東北学連選抜 5時間37分55秒
  東海学連選抜 5時間35分31秒


■区間成績
1区(14.6km) 田村 優宝 (日本大学)    44:38
2区(13.2km) 出岐 雄大 (青山学院大学) 37:43
3区(09.5km) 油布 郁人 (駒澤大学)    27:13
4区(14.0km) 上野  渉 (駒澤大学)     40:56
5区(11.6km) 久我 和弥 (駒澤大学)    34:15
6区(12.3km) 山本 憲二 (東洋大学)    36:22
7区(11.9km) 高瀬 泰一 (駒澤大学)    35:23
8区(19.7km) 柏原 竜二 (東洋大学)    57:48