第一生命が2年連続で2回目の優勝!
  ゴールまであと100mで逆転



 12月の全日本大会の予選をかねた東日本実業団対抗駅伝競走大会は今年も11月3日(木=祝)、今年も男女同日開催で行われた。
 女子は大混戦の下馬評どおりに首位がめまぐるしく変転する展開、1区~2区は伏兵スターツが先行、3区で第一生命がひとたびトップに立つが、4区~5区になると積水化学が奪首、勝負は最終区までもつれたが、第一生命のアンカー・尾崎好美がゴール直前で積水化学の馬場佐由里をとらえ、逆転で連覇を達成した。
 2位には積水化学、3位にはユニバーサル・エンターテイメントつづき、出場チーム12tチームはすべて12月の全日本大会の出場権を獲得しました。


◇ 日時 2010年11月03日(木=祝)午前8時25分スタート
◇ コース:JRさいたま新都心駅(旧中山道)~鴻巣~(国道17号)~吹上(旧中山道)~(国道17号)~熊谷駅前~熊谷スポーツ文化公園ゴール   6区間=42.195km
◇ 天候:くもり  気温14.5度 湿度77%  風:西北西0.6m
◇ 第一生命(田中智美、満枝まどか、勝叉美咲、野尻あずさ、松見早希子、尾崎好美)



▽ベテラン・尾崎好美が輝いた!


 全日本大会の予選をかねているとはいえ、すでに12チームすべて出場を決めているのだから、なんともはや、いまひとつ盛りあがりに欠ける。いわば空気がぬけたような大会という印象がつよかったが、かろうじて観るレースとしての命脈をたもったのは、大混戦になるだろうという予感だった。
 若くて勢いのあるランナーをあつめた豊田自動織機のようなチームが今回から、中部地区に移ってしまった。
 さらには王者として君臨してきた三井住友海上、資生堂もかつてのような勢いがなくなってきている。たとえば三井住友のエース渋井陽子、資生堂の藤永佳子、加納由理のように年齢的に限界がみえてきている。昨年の覇者・第一生命にしても絶対的なエースとうものがいない。
 氷河期をむかえた日本のマラソン・長距離をもろに反映しているかのようで、ファンとしては何を目玉にして、レースを観たら良いのか、よくわからない。まさにそんな状況で、今シーズンは幕あけたのである。
 主力がパンとしていないだけに、各チームの実力はにわかに接近、その日の調子次第で順位が大きくかわってしまうという、ある意味では、まことにスリリングなといっても、レベルの低いところでの伯仲レースが展開されたのである。
 ロンドのリンピックを来年にひかえて、本来ならば、若くして伸び盛りのランナーが出現してもよさそうなものだが、いまだにベテランが主力をなしているのが現状である。その代表選手が三井住友の渋井陽子、第一生命の尾崎好美、ホクレンの赤羽有紀子、ユニバーサルの那須川瑞穂、堀江知佳、パナソニックの吉川美香などである。
 いずれも日本を代表するランナーであるが、年齢的にもはや伸びしろはない。いまだにチームの主力をなすということは、若手が伸びていたいない証しといわねばならない。
 将来を考えれば、そんなベテラン選手が輝いてもらっては、ある意味でこまるのだが、そんな杞憂が現実となってしまった。
 第一生命の尾崎好美、低迷する日本マラソン界にあって、第一人者といえるが、そんな彼女が大仕事をやってのけた。
 5区をおわって、トップをゆくのは積水化学、連覇をねらう第一生命は33秒も遅れていた。第一生命は3区の勝叉美咲でトップを奪ったが、4区で積水化学にトップをうばわれて16秒差、5区では33秒差とさらに差をひろげられ、勝負の流れは完全に積水化学にかたむいていた。
 積水はもはや安全圏にはいったと思われたが、尾崎はじりじりと追い上げていった。残り1㎞では11秒差としてしまい、トラック勝負にもちこんで、残り100mで届いてしまったのである。粘りが身上という持持ち味が生きたという意味で、ベテランの味をいかんなく発揮したといえる。



▽終始、波乱含みの展開


 レースは最初から波乱含みだった。
 第1区の入りは1㎞=3:20というスローペースで全チームがひとかたまりになってすすむという展開、そんななかで終始レースを支配したのはスターツの土井友里永であった。第一生命の田中智美、パナソニックの中村仁美をしたがえて、ルーキーながら落ち着いたレース運びをみせた。
 5㎞では先頭集団は8チーム、6㎞では土井が中村、田中をひきつれてぬけだしたが、最後は土井の地力がまさった。スターツの後はパナソニック、第一生命、ホクレン、ユニバーサル、三井住友海上、資生堂、積水化学とつづき、ここまでがトップから12秒以内につけたいた。
 第2区でもスターツのG・キマンズイがハナからぶっとんでいった。区間新記録で2位ながってきたホクレンとの差を一気に21秒までひろげてしまった。2区は外人特区であるから黒人ランナーが前に来るかと思いきや、キマンズイのほかはあまり目立たなかった。パナソニックのワンジュクなどは区間7位と低迷、むしろホクレンの泉知世、さらには積水化学の松崎陽子が区間2~3位と健闘していた。それにしてもヤマダ電機の森唯我はどうしたことか。大学女子では佛教大の主力をなし、国際千葉駅伝でも日本学生選抜で活躍したランナーである。区間10位はチームとして誤算だったのではあるまいか。
 ヤマダ電機といえば、3区に登場した西原加純も注目のランナーであった。佛教大学のエースといわれ、大学女子では第一人者といわれてきた。11位でタスキをもらった彼女は4人抜きで7位まで順位を押し上げてきた。タイム的には区間賞の勝叉美咲(第一生命)から19秒おくれ、区間2位の清水裕子(積水化学)から14秒遅れの区間3位であった。
ふつうのルーキーならば、まずまずの初陣といえるが、西原は期待のランナーだけに、これではいさささか食い足りない。勝叉や清水あたらりなら蹴散らすほどの勢いがほしかった。



▽今一歩! 惜しかった積水化学


 4区・5区で台頭したのは積水化学である。
 3区の勝叉美咲でトップをうばった第一生命、4区の野尻あずさで一気に独走態勢にもちこむかとおもわれたが、積水化学の山元美駒とスターツの高木千明に食いつかれてしまった。野尻と山元がトップ争いをくりひろげる背後から高木がじりじりと迫ってくるという構図である。
 野尻の調子がいまひとつだったのか。それとも3区の清水で一気に2位まで浮上してきたた勢いに乗ったのか。積水の山元が好調な走りで、2,3㎞で野尻をとらえてトップをうばってしまったのである。4区を終わったところで、トップは積水化学、9秒おくれで第一生命をとらえたスターツが2位にあがり、トップの積水から16秒遅れで第一生命というかたちで5区にタスキがわたった。
 4位にはユニバーサルエンターテイメント、5位にパナソニックとづつき、三井住友海上は1分10秒おくれの6位と完全に圏外に去った。
 優勝争いは後続の顔ぶれからみて、ほぼ積水化学、第一生命にしぼられたようだったが、5区のエース区間でも積水化学は快調だった。小俣后令の走りはゆるぎがなく、完全に4区からの流れに乗ってしまった。第一生命の松見早希子の姿はどんどんと後ろに遠ざかってゆき、事実、積水の16年ぶり(?)の優勝がみえてきたかにみえたのである。
 ところが……、
 最終区で劇的な結果が待っていたのだから、駅伝というのはおもしろい。




▽本戦も大混戦か?

 2連覇を果たした第一生命は地力の勝利というべきか。選手層も分厚く、全日本でも候補の一角をなすだろう。
 あとは積水化学、ユニバーサルエンターテイメント、パナソニック、スターツあたりが本戦でも上位にからんでくるだろうが、いまひとつ決め手にかけるとことがある。三井住友海上は今回は本気で走っていなかった感があるだけに、本戦でどれだけの変わり身をみせられるか。
 関西地区予選も今回は予選とはいいながら、予選の体をなさぬ状況だっただけに、戦力を測りがたいところがある。予選出場チームはすべて当確だっただけに、たとえばワコールの福士加代子などは顔も見せてはいないのである。
 だが、そんななかでも天満屋は選手巣も分厚く、がやはり一枚抜けた存在とみた。あとは中部地区の豊田自動織機あたりが不気味な存在になりそうだ。若いチームだけに調子に乗れば圧勝というケースもあるとみた。

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■総合成績
1.第一生命     2時間17分21秒
2.積水化学     2時間17分24秒
3.ユニバーサルエンターテインメント 2時間17分56秒
4.パナソニック     2時間18分07秒
5.スターツ      2時間19分00秒
6.ホクレン      2時間19分51秒
7.三井住友海上    2時間20分12秒
8.資生堂 2時間20分17秒
9.日本ケミコン 2時間20分25秒
10.ヤマダ電機 2時間21分21秒
11.しまむら 2時間21分32秒
12.日立 2時間23分49秒


■区間成績
1区(06.795㎞) 土井友里永(スターツ)    21:44
2区(03.100㎞) G・キマンズイ(スターツ) 22:26
3区(12.200㎞) 勝叉 美咲(第一生命) 39:07◎
4区(03.800㎞) 山元 美駒(積水化学) 11:58◎
5区(10.000㎞) 加藤 麻美(パナソニック) 32:49
6区(06.300㎞) 尾崎 好美(第一生命) 20:41

◇詳しい成績はこちら
http://www.hnj.gr.jp/other/52_22_ekiden/52_22_women_result.pdf