上武大がトップで通過!
         波乱! 日本大学が落選!




 10月15日(土)、第87回東京箱根間往復大学駅伝競走の予選会が立川市の国営昭和記念園周辺コースで行われ、本大会に出場する9校が決まった。
 午前8時30分、40チーム466人がいっせいに陸上自衛隊立川駐屯地の周回コースをスタート、市内に飛び出し、昭和記念公園のゴールをめざした。
 各チームの出走12人中、10人の走破タイム集計で上武大学が10時間12分08秒でトップ通過、2位には山梨学院大学、3位には国士舘大学が4位・東京農業大学、5位・神奈川大学、6位・帝京大学とつづき、関東インカレポイントが勘案される7位から9位は、城西大学、中央学院大学、順天堂大学となり、以上9校が予選通過ときまった。
 常連校のなかでは日本大学が11位で15年ぶりに予選で敗退、出場権をうしなった。



▽まさに雨中の大激戦


 前夜から激しい雨、この日、午前5時に起きたが、雨は降り止まず、朝ランにも出かけられなかった。もうひとつの箱根駅伝というべき予選会のおこなわれる立川も雨だろう。スタート時刻までに雨は上がるだろうか…と、首をかしげていたが、レースはかなり強い雨のふりしきるなか、風も強いという最悪のコンディションで幕あけた。
 雨の予選会は20年ぶりだという。雨の影響で後半はきびしくなるだろう。雨に泣くチーム、雨に笑うチームと悲喜こもごものドラマがくるひろげられるであろうと思われた。
 40チーム466人ものランナーたちがいっせいにスタートする。あいかわらずスタート風景は壮観、その迫力たるや圧倒的であった。
 予選会とはいえ毎回、大激戦がくりひろげられる。予選会で消えるチームもある。そういうチームの選手たちにとっては立川の予選会が箱根駅伝だということになる。立川で敗れれば、かれらの「箱根」は終わるのである。
 予選会はいわば蟻地獄である。いちど予選会にまわったら、そこから這い上がるのはなみはずれのパワーが必要になる。かつて箱根本戦を制したチームといえども例外ではない。たとえば順天堂大学、大東文化大学でさえも、沈んだまま浮かびあがれないでいる。今回はシード校の常連であった日本大学が予選会にまわりとなり、日本大学、山梨学院大学、大東文化大学、順天堂大学、亜細亜大学、神奈川大学……と、かつて箱根「本戦」を制したことのあるチームがなんと6つも顔をそろえ、ほかにも専修大学、法政大学、東京農業大学、帝京大学、城西大学、上武大学、国士舘大学、中央学院大学など、常連校が8校も名をつらね、例年にまして熾烈な戦いとなったのである。
 主力をなすと思われる上記14校のうち上位9校が本戦に当確となるのだが、最近は実力接近で、その日の調子と出来次第というところ。だから予想となると至難である。上位6校までにはいれば文句なしだが、7位から9位までは5月の関東インカレのポイントに換算したインカレポイントがアドバンテージとして反映されるシステムになっている。
 インカレポイントの少ない神奈川大学、帝京大学、中央学院大学などは6位以内にはいって一発当確をめざそうとするだろう。ボーダーライン上にひしめくチームにとっては今回もインカレポイントが明暗を分けること必至であった。



▽日本大学・佐藤祐輔が大健闘


 駅伝の予選会とはいえ、駅伝でレースが行われることがないだけに、テレビ中継もいまひとつもりあがらない平板なものになるのはしかたがないのだが、観ているほうはなんとももどかしい。
 テレビ画面にうちし出されるのは、雨にぬれそぼちながら、ひたすらゴールをめざすランナーたちの群像である。三々五々とグループをなし群れて定められたペースをまもるランナー、そではなくて、単独でトップグループにあがってくるのは自信のある一匹狼というべきか。
 グループによる集団走もトップ争いにからんでタイムを稼ぎ、チームに貯金をのこそうとする戦法も、各チームの思惑と戦略によるものとはいえ、観る方とすれば、なんとも複雑怪奇なレースというほかはない。
 レースをひっぱったのは山梨学院大のコスマスと日本大学のベンジャミンという2人の留学生、日本人では前半、国士舘大学の伊藤正樹、松陰大学の梶原有高、日本大学の田村優宝などが食らいついていた。
 5㎞すぎてコスマスが前に出るとベンジャミンがおくれはじめた。コスマスの独走となるかと思われたが、15㎞(ラップ=44:20)すぎで日本大学の佐藤佑輔と国士舘大学の伊藤正樹がコスマスに迫る。とくに佐藤は勢いはとまらず。16㎞では伊藤を突き放してコスマスをとらえて併走状態にもちこんだ。    
 佐藤とコスマスのマッチアップは最後の最後までつづき、ゴール間近で佐藤が渾身のスパート、しかしコスマスを振り切るまでにはゆかなかった。佐藤のスパートは少し早すぎたというべき。地力に勝るコスマスが佐藤を交わしてゴールにとびこんだ。



▽トップは新興・上武大学! 伝統校・日本大学は落選!


 表面上のレースはこんなふうに終始したが、裏側では熾烈な鬩ぎ合いがくりひろげられていた。
 上武大、国士舘大、山梨学院大、城西大などが終始、安定した戦いをすすめたといえる。とくに1位通過の上武大は中盤から後半にかけて上昇ムードにのった。最初の5㎞は全体10位ながら、安定したペースで5キロごとに順位をあげていった。
 予選トップ候補といわれた日本大学の苦戦ぶりは意外であった。距離がのびるにつれて、劣勢が明らかになっていったのである。
 日本大学と大東文化大学などは前半をひっぱったが、10㎞、15㎞と進むにつれて順位を落とした。それとは好対照に神奈川大学と中央学院大学は後半になるほど順位をあげていった。
 日本大学は5㎞で2位だったが、10㎞では6位、15㎞では8位と順位をおとしてしまった。 Ustreamのニコ生(といっても音声だけだg)でエースの実況を聞いていたが、最後は「日大の10人目がまだ来ません」というアナウンスが、なんども繰り返されていた。
 日大は個人でトップ争いを演じた佐藤祐輔が2位、ベンジャミンが4位、田村優宝が7位と3人もがベスト10にはいっている。さらに3分40秒という出場チームのなかで一番のインカレポイントによるアドバンテージをもらいながら、なんとレースタイムで13位、総合では11位におわってしまったのである。
 まさか日大が落選するなどとは……。ぼくたち駅伝ファンはもとより、日大陣営も夢にも思わなかっただろう。3人もがベスト10にはいりながら、落選したのは初めてのケースだというがさもあろう。上位の3人が貯金をつくったが、とくに後ろの4人が1時間3分台というのでは、あまりにもギャップがありすぎたというわけか。結果的には作戦をあやまったともいえそうである。
 かくして出場82回、総合優勝12回という名門・日大が15年ぶりに箱根路から消したのである。
 裏腹に神奈川大学は10㎞では12位ながら最後は5位まで順位をあげてきている。とくに目立った選手はおらず、24位を筆頭に10人目でさえも103位というようにバラツキがない。タイム的にも幅が66秒しかなく、これは前半は押さえて後半あげてゆくという集団走が成功した結果かもしれない。みごと本戦復帰である
 強豪といわれる順天堂大学も日大と入れ替わるように箱根路にもどってきた。総合優勝11回の順天堂大学はなんとか9位にすべりこんだ。箱根は3年ぶり53回目の本戦出場である。
 3年ぶりといえば実業団の八千代工業で現役ランナー・小川博之が指揮する国士舘大も堂々の3位で3年ぶりに本戦復帰をきめた。



▽笑った順天堂大学、泣いた専修大学


 インカレポイントによる泣き笑い、今回もやはりあらわれてしまった。泣いたのは12位に甘んじた専修大学、笑ったのは最後に9位にとびこんだ順天堂大学である。
 専修大はネットでは10時間18分27秒で9位だが、アドバンテージタイムはわずか20秒、ほとんどないにひとしい。ところがネットで10位の順天堂大はネットで10時間19分39秒ながら、アドバンテージタイムを3分25秒ももっていたのである。
 専修大学のようなチームが本戦出場を果たすには、予選会で6位までに入る以外にないということになるのは、箱根駅伝予選会の大きな矛盾のひとつとして、今回も問題を提起したといっていい。
 インカレポイントの導入は伝統校を救済するシステムといわれて久しいが、文字通り箱根の強豪を救ったのである。
 小生は今回も法政大に注目してライブでニコ生を聞き、午後3時30分からのテレビ録画中継をみていた。
 オレンジエキスプレス・法政は終始、ボーダーライン上を行き来していた。レース順位は11位、アドバンテージを3分10秒ももっているから、なんとかなるかと思ったが、29秒およばずの10位の次点に終わった。
 9位の順天堂大学にはレースタイムでも14秒負けている。インカレポイントに泣いたわけではないから力負けである。前回も10位、今回も10位、やはりいちど予選会にまわると壁は分厚いようである。



◇ 日時 2010年10月15日(土)午前8時30分スタート
◇ 場所 国営昭和記念公園(立川市)
◇ コース 陸上自衛隊立川駐屯地スタート~立川市街地~昭和記念公園内ゴール(20.0km)
◇天気:雨後くもり  気温:23.3度  湿度:74%   風:南南西6m



・成績詳細
http://www.hakone-ekiden.jp/pdf/publicrecord_yosen88_all.pdf
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