日本大学がまたしても最終逆転! 2連覇で5度目の制覇!



▽ケニア人留学生対決でケリ!


 短い距離をつななく駅伝で最長区間は6区の10㎞ということになれば、爆発的な力を発揮するスーパーエースをもつチームが有利になる。それゆえに過去の大会でも最終区での大逆転が数多い。

 昨年は日本大学のダニエルが1分29秒というおおきな貯金をもつ駒澤を8.1㎞地点でつまかえてしまった。

 当然のように今年も注目はダニエルのいる日本大学であった。ダニエルは今年、関東インカレで4冠をかっさらい、もはや敵なしの形勢である。日大にとっては5区までにどのような位置をキープできるか。それだけが課題であった。

 注目の5区をおわって、トップをうばったのは前評判のたかかった早稲田ではなかった。昨年箱根を制した東洋大でもなかった。山梨学院大学のトップというのはちょっとしたサプライズではなかったろうか。むろん山梨は出雲では過去において実績のある強豪チームである。けれども、今回は戦力からみて、かなり苦しいとみていた。だが5区の大谷康太の快走で4区7位から一気にトップをうばったのである。

 最終6区にはケニア人留学生のエース・コスマスを持つだけに、5区での奪首は山梨としては願ったりかなったりの展開というべきであった。

 日本大学はトップの山梨学院大から413秒おくれの5位である。10000mの持ちタイムからすれば十分に届く可能性がある。

 かくして2位から4位につけている東洋、早稲田、第一工業などはもはや目ではなく、山梨・コスマスと日大・ダニエルというケニア人留学生対決になってしまった。日本の長距離ファンとしてはまさに最悪の展開になってしまったのである。

 逃げるコスマス、追うダニエル……。中間点では38秒差だから、わずか3秒しか詰まっていなかった。コスマスが好調なのか。それともダニエルがいまひとつなのか。判断にまよっているうちにダニエルの追撃がはじまった。

 6㎞で25秒差までやってきて、7.8㎞ではあっというまに並んでしまうのである。さらにそこからダニエルは一気にはゆかずに、しばらく力を溜めて、ようやく8,5㎞あたりで2段スパートをかけて振りきった。28:17というタイムは昨年自身の記録を1秒も上回る区間新記録、まさに底知れぬ力をみせつけられてしまった。



▽前半は第一工業大、京都産業大が見せ場をつくる


 注目の1区には第一工業大のK・ジュグナ、東洋大・柏原竜二、明治大・鎧坂哲哉、早稲田・矢澤曜、駒澤大・高林祐介というような注目のランナーが顔を合わせた。いかにも今シーズンの戦力を占うにふさわしい第1区の攻防となった。
 レースを終始ひっぱったのは第一工業大のジュグナであった。柏原竜二が負けじとつづき、日大の新戦力であるG・ベンジャミンがつづく。
 駒澤大の高林はスタート直後から、なんだか表情が硬く、これは……と思っていたら、やはり危惧したとおりになってしまったようである。調子が悪かったのか。それとも週末の箱根予選会をにらんで、本気で走らなかったのか。あんな走りならば、どうして出雲に出てきたのか。ちょっと理解できないでいる。
 ジュグナは1㎞=2:43、1~2㎞=2:43、3㎞=8:16……と区間新のペース、そのジュグナを追いかけていった者のうち、柏原とベンジャミンは残ったが、期待の鎧坂は競りツブされて沈んでしまう。
 ジュグナは5㎞も13:44でカバーして、ラストも強くて、追いすがる柏原を振り切った。柏原も区間タイ記録だから悪い出来ではなかったが、地力でもっていかれた。
 1区を終わってトップは第一工業大、東洋がトップから20秒おくれで2位、日大が31秒遅れで3位、早稲田は39秒遅れで4位と優勝を争う3チームは好位につけたが、駒澤は12位、期待の明治は9位と出遅れた。
 2区では2位につけていた東洋大が山本憲二の快走で5㎞手前でトップに立つが、京都産業大が大健闘、林和貴が区間賞の快走で5位から一気にトップとならぶところまでやってきた。第一工業大も3位とねばっていて、前半にかんしていえば関東以外の2校の踏ん張りがとくに目についた。



▽最後まで変転するトップの座


 3区になっても順位はめまぐるしく変転した。
 2㎞をすぎて、なんと東洋、第一工業、日大、早稲田、京産、中央学院の6チームがダンゴ状態になってトップ集団を形成するというありさまである。後方からは1,2区で遅れをとった駒澤の宇賀地強が猛然とおいあげてくる。
 トップ集団は激しいサバイバル、4㎞すぎで第一工業がおくれ、5㎞では東洋が遅れだし、残り1㎞で京産大が脱落した。元気が良かったのはは日大の佐藤祐輔と中央学院の渡辺崇仁、そして早稲田の尾崎貴宏、最後は渡辺と尾崎の競り合いとなったが、中学・渡辺のラストスパートが勝った。
 かくしてトップはネコの目のように変転として、3区では中央学院が奪うのだが、4区では満を持していた早稲田の佐々木寛文が2㎞すぎでトップに立ち、2位の日大に24秒の差をつけた。
 ところが5区では早稲田の中山卓也が中盤から失速してしまう。5㎞すぎで追ってきた山梨学院の大谷康太と東洋の佐藤寛大才にあえなく捕まってしまった。期待の新星が3区から4区にかけての上げ潮ムードに水をぶっかけてしまう結果になったのはなんとも皮肉である。
 伏兵というべき山梨が5区でトップに立ち、日大を迎え撃つ一番手に躍り出た。かくしてケニア人留学生同士の対決という構図がしっかりできあがったのである。



▽全日本は東洋と早稲田の一騎打ち?


 日大の勝因は、なんといってもアンカーのダニエルを活かせる展開にもちこんだことにつきる。1区で3位につけるとつねに上位をキープ、5位以下におちることはなかった。ダニエル以外はそれほど目立った戦力はみあたらないが、大きくくずれることがなかっあた堅実さがひかっている。
 2位の山梨学院は大健闘であろう。とくに5区の大谷康太の爆走で一気にトップを奪い優勝争いにからんできた。出雲の強さをみせるのはやはり伝統というものだろうか。
 3位の東洋大もさすが……と思わせる結果である。最後は早稲田に競り勝ったところに値打ちがある。もともと距離の短いところよりも長くならないと持ち味が出ないチームだけに3位は満足ゆく結果だろう。
 4位の早稲田は流れがチグハグで勢いにのれなかった。2区の八木勇樹のブレーキ、4区の中山卓也が誤算だったのではあるまいか。4区から6区まで初駅伝のランナーをつかってきたのは全日本、箱根をみすえての戦略だろうが、出雲の結果からは、かなり見直しが必要になるだろう。
 中央大学はいつのまにかおわってみれば5位に来ていた。前評判では話題にもならなかったけれども、さすがは伝統校である。
 意外だったのは10位駒澤と12位におわった明治である。明治は初出場であるというハンディがあろうが、駒澤は2枚看板をつかったうえで10位というのは悪すぎる。土曜日に箱根駅伝予選会をひかえているといっても、いまひとつ駒澤らしさがみられなかった。すこしさびしい気がする。
 関東勢以外では第一工業大、京都産業大が前半から中盤にかけて上位にやってきて見どころをつくった。最終順位で6位まであがってきた立命館大の健闘ともども讃えておこう。
 出雲からみるかぎり、全日本は東洋と早稲田の争いか? 前回の覇者である駒澤も候補にあげなくてはなるまいが、ちょっとプロセスが悪すぎる。あとは日本大学と山梨学院ということになるが、それよりも明治の巻き返し、中央大がどのように仕上げてくるかにも注目したい。


・第21回出雲全日本大学選抜駅伝の結果