ビヨンド・ザ・ワールド~光と影~8
【森の中の情報屋】
(南の王国~森の奥深く)

ゼロは、

ネヴァンの背中に乗り、
大空を飛んでいた。
ネヴァンから行き先は、
まだ、
告げられてはいなかった。
ゼロ
「いい加減、
行き先を教えてもらえないかな?」
ゼロが言った。
ネヴァンは、
気流に乗りながら、
山を越えようとしていた。
ネヴァン
「もうすぐですよ、ゼロ。」
ネヴァンは、はぐらかす。
ゼロは、
雄大な景色を堪能しながら、
苦笑した。
小時間、
ネヴァンは飛び続けた。
そして、
山奥のかなり深い森の中に、
舞い降りた。
ネヴァン
「此処です、ゼロ。」
其処には、
木と一体化した小屋のようなモノが
あった。

ゼロ
「魔女でも住んでそうね♪」
ゼロがネヴァンの背から
飛び降りた。
ネヴァンは、
翼を一度大きく広げながら、
「それに近いものが、
住んでますね....。」
と、言った。
そして、
小屋の入り口に向かった。
ゼロもネヴァンに続いた。
ネヴァンは、
扉の前で止まった。
ネヴァン
「クモは、いるか?」
ネヴァンは、
扉を数回叩き、
呼び掛けた。
中からは、
何か音がして、
「誰だい?」
と、
女性の声がした。
ネヴァン
「ネヴァンだ。
風の旅団の。」
ネヴァンが答えた。
すると、
「おおっ!
鷲のダンナかい!
いいよ、
入ってきな。」
と、返ってきた。
ネヴァンは、
ゼロの方を向き、
ネヴァン
「では、行きますか。」
と、促した。
ゼロは、黙って頷いた。
二人が小屋に入ると、

其処は薄暗かった。
そして、
「久しぶりだねぇ、
鷲のダンナ。」
暗がりの方から、
声がした。
声の主は、
蜘蛛に乗った女性であった。

ゼロは、
一瞬、怯んだ。
クモ
「鷲のダンナ、
そちらのダンナを
紹介してくれないのかい?」
クモは、
そう言って、
ゼロの方へ近づいてきた。
ネヴァン
「あぁ、
こちらは、
ゼロ殿だ。
ギルド・シャドームーンの...。
そして、
このご婦人は、
王国一の情報屋のクモ...。」
ネヴァンは、
双方に紹介した。
クモは、
ゼロと聞いて、
目を細めた。
クモ
「ほぉー、
この狼のダンナが、
マスターゼロかい。
『魔装転生』の....。
一度、会ってみたいとは、
思ってたのさ。」
クモが、
嬉しそうに言った。
魔装転生...
ゼロが持つ特殊能力で魔力を高め、
闇属性のキャラクターに
転生(変身)できる能力である。
転生後の能力は、そのキャラクターが本来持つ能力の二倍~三倍まではねあがると
言われている。
但し、
転生後、転生時間や転生ランクにより、
術者にダメージを生じる。
ゼロ
「初めまして♪
クモ さん。」
ゼロは、
そう言って、
ペコリと頭を下げた。
そして、
ゼロは、
目が暗がりに慣れ、
有ることに気がついた。
床や壁が動いている...
目を凝らすと、
そこには、
無数の、
蜘蛛が蠢いていた...

クモ は、
ゼロの様子には
気に止めず、
ネヴァンに尋ねた。
クモ
「で、
今日は、
どんな用でここへ、
来たのさ。」
クモ がそう言った。
ネヴァンは、
ゼロの方を向き、
ゼロを促した。
ゼロは、
無数の蜘蛛に気をとられたが、
ゼロ
「ひ、光の教団の教皇、
ソルフェージュについて、
情報が欲しい...。」
と、聞いた。
クモの口許に笑みが浮かんだ。
クモ
「どうやら、
この子達が気になるようだね。
仕方がないねぇ、
あたいは、
この子達が、
運んでくる情報で、
飯を食っているんだよ。
大陸中にこの子達を
散らばしてね。
だから、
あたいが知らない事なんて、
この世には無いね。」
クモ が話してる間にも、
無数の蜘蛛が出入りしていた。
ゼロ
「なるほど....。
で、
ソルフェージュについての情報も
あると.....?」
ゼロは、
腕組をし、
言った。
クモ
「もちろん持ってるよ。
中々、
ややこしい話にはなるけどね。」
ややこしい?
どういう事だろう?
ゼロは、眉を潜めた。
クモ
「教皇ソルフェージュは、
50年位前に、
実は、
死んでいるのさ....。」
それを聞き、
ゼロとネヴァンの二人は、
驚いた。
ネヴァン
「し、しかし....」
クモ
「あぁ、そうさ。
今も、彼女は存在している....。
それはねぇ...。
教皇になって、
まもなく、
彼女は、
恋人のローランに殺された。
誰かの策略でね。
そして、
ネクロマンサーによって、
不死人として、
蘇させられ、
今に至っている...。
簡単に言うと、
こんな感じだね。」
クモ は、
淡々と語った。
それを聞いた二人は、
愕然とした。
ゼロ
「策略と言いましたね?
それは、
誰の?」
ゼロは、
クモ からの情報を
頭の中で分析していく。
クモ は、
ゼロの目を見ながら、
「3代目教皇のヴァラックさ。
しかも、
ヤツはロクでも無いことを
考えているのさ...。」
と、言った。
ゼロ
「ロクでも無いこと?」
ゼロは、
思わず聞き直した。
クモ
「魔剣ソウルイーターの話は
知ってるね。
ヴァラックは、
ソウルイーターで吸いとった魂で、
不死の軍団を作り、
王国を攻めようとしているんだよ。
それも、
莫大な数の不死の軍団...
その数、
三万....。」
ゴクリ...、
ネヴァンが生唾を呑み込む。
クモ の話は、
ゼロ達の予想を遥かに越えていた。
そして、
話が許容範囲を越えていて、
理解するのに、
時間がかかった....。
三万....
クモ は、
そんな二人に追い打ちをかけた。
クモ
「あたいが持ってる情報では、
次の新月の刻が、
その日らしいよ。
あまり、
時間が無いねぇ、お二人さん。」
ゼロ
「次の新月....?」
ネヴァン
「次の新月は、
20日後くらいですかね?」
ゼロは、
しばらく、
無言のまま、
壁に蠢く、
無数の蜘蛛を目で追っていた。
つづく♪