ビヨンド・ザ・ワールド~光と影~6
【武器屋・ゲンナイ】
(王宮)

朝早くに叩き起こされ、
訳も分からず、
王宮に連れてこられた、
ゲンナイは機嫌が悪かった....

武器屋・ゲンナイ
武器・防具に関するその知識は、
王国1、2を争う。
自らも、武器・防具を造り出す、
根っからの職人気質。
実は、
デウス大臣、トルネコとは
同世代にあたる....
ゲンナイ
「もっと、
年寄りを敬え!」
王宮に来るなり、
ゲンナイが喚いた。

デウス
「そう喚くな、ゲンナイ。
事態は、急を要するのでな....。」
ゲンナイ
「おぅ、デウスのジジィかぁ。
急を要する?
..........。
トルネコの件か....。」
そう言って、
ゲンナイの顔色が変わった。
デウス
「そうだ....。
トルネコは、
魔剣に殺られたのだ...。」
ゲンナイ
「なに!
魔剣じゃと...。」
ゲンナイは、
驚きの声を上げた。
そんな様子を尻目に、
デウスは、淡々と語りだした....。
デウス
「トルネコは、
魔剣ソウルイーターに殺られたと、
我々は確信している。
しかし、
トルネコほどの実力者を
いとも簡単に葬ったヤツの
手懸かりが少なすぎるのだ。
そこで、
魔剣ソウルイーターの情報が
欲しい....。
頼む、ゲンナイ....。」
デウスは、
そう言って、頭を下げた。
ゲンナイ
「ほぅ、大臣が頭を下げるか....。」
ゲンナイは、
自分の禿げた頭を撫でながら、
語り出した。
ゲンナイ
「魔剣ソウルイーター....。
その力は刃にあらず。
魔の力で魂を喰らう剣。
じゃが、
その剣を使う者の魂も喰らう、
両刃の刃....。
刃はあくまでも飾りじゃあ。
見えない刃が、
魂を喰らうのじゃ。
その太刀筋に入るべらかずじゃ。」
ゲンナイは、
そう言って一息ついた。
そして、
意味ありげな口調で続けた。
ゲンナイ
「魔剣ソウルイーターの
恐ろしさはそれだけでない...。
喰ろうた魂は、
別の事に使われるというのじゃ。」
デウス
「別の事だと?」
ゲンナイ
「そうじゃ。
それはなぁ、
魔剣ソウルイーターが、
吸いとった魂は、
一度、『贖罪の柩』に
吸収される....。
そして、
死んだ人間に使われるのじゃ。
俗に言う、
アンデット(不死人)を作るためにな。」
(『贖罪の柩』....アンデット....)
それを聞いた、
デウスは、
愕然とした。
ゲンナイ
「しかし....。」
ゲンナイは、続けた。
ゲンナイ
「魔剣は、
それを扱う者も取り込まれる、
というがのぉ....」
ゲンナイは、
そう言って考え込んだ....。
しばらく、
沈黙が続いた。
が、
ゲンナイ
「そう言えば....」
ゲンナイは何か思い出したように、
ゲンナイ
「一年位前かのぉ。
魔剣について、
話を聞きに来た者がいたのぉ。」
と、口にした。
デウス
「誰だ、それは?」
ゲンナイ
「光の教団の幹部、
確か、
ヴィーデと名乗ったかのぉ。」
それを聞いて、
デウスは、
眉をひそめた。
(やはり、光の教団か....)
デウスは、
強く拳を握りしめた...。
【カオスの足音】
(とある光の教団施設内)


ヴァラックは、
『創世記の書』を読み耽っていた。
『創世記の書』は、
元々、光の教団の所有物であった。
が、
王宮と懇意であった2代目教皇が、
王宮へ寄贈したのであった。
現在、
光っている「預言の石板」と、共に....。
当時、ヴァラックは、
寄贈には反対であったが、
教皇には刃向かうことは出来なかった。
ヴァラック
「やはりな....。
私の記憶は正しかったようだ。
そして、
「預言の石板」の真意も、
理解できる....。」
始まりがあれば、
終わりがある
生を受けし者、
死も受け入れなければならぬ、
太陽は昇り、
やがて沈む
月は満ち、
また、
欠けていく
光あれば、
影もできる、
この世の摂理は、
調和である....
ヴァラック
「調和.....か...。」
ヴァラックは、
不適な笑みを浮かべた。
そして、
ヴァラック
「ヴィーデ、
ヴィーデは居らぬか!」
ヴァラックは、
ヴィーデを呼んだ。

ヴィーデ
「お呼びでしょうか、
教皇様。」
ヴィーデが現れた。
ヴァラック
「『贖罪の柩』は、
どのような具合だ。」
ヴァラックは、
そう言って、
机上の書を閉じた。
ヴィーデ
「まもなく、
魂で満たされます、
ヴァラック様。
次の生け贄も決まりました。
三日後の遊説先、
山奥の村の150名ほどです。」
ヴィーデが答えた。
ヴァラックは、
それを聞き、笑みを浮かべる。
ヴァラック
「そうか....。
ならば、
次の新月が、
カオスの進軍開始だな....。
トルネコの死で、
王宮やギルドも動き出している。」
ヴィーデも
笑みを浮かべた。
ヴィーデ
「いよいよですね、
ヴァラック様....。」

ヴァラック
「ついに、
我が野望が叶う刻が来た...。
三万の不死の軍団が、
この世界をカオスに変えよう!」
ヴァラックは、
高らかに笑った。
つづく♪