久し振りに連れられて出た、四条だった。何でも高校の同窓会だと言うので僕も出席することになっていた。「まあ、可愛いのネ、僕幾つ」「七歳」「何処の学校へ行ってるの」「有名な大学に入れる進学校だよ」
「まあ、しっかりした賢い子ネ。ご褒美にお年玉をあげるわ」と、言ってとても美しい色白の貴婦人から手渡しで、白い細い指からポチ袋を一つ貰った。目聡く見つけた母上が小走りで掛けて来て、「まああ、英子有難う。ソンナ気ずかいして呉れなくていいのに」「いいのよ。貴女の長男賢いわね私驚いたわ。進学校なんて一寸言わないわよ」「この子、大人からかいするの。皆様を楽しませるのが目的なんだけれど......」。
「あなた、もおいいの、お腹でも壊してるんじゃないの。ママに見せてご覧なさい」
「ソンナことないよ。いたって健康、お腹壊しはありません」
僕は母上の何時もの慈しむ様な眼差しを見乍ら、身体の大丈夫を伝えた。「ソレならいいけど」と、言い乍ら「ママモンブランさん頂くから、あなた何かリクエストない。ココの外でもいいのよ」と、尚僕のことを気にかけて呉れていた。それでもその時はなかったので、「ありません。有り難うございます」と、他人行儀なことを言ってしまった。
見れば、テーブルの上にモンブランマロンが運ばれて来た。ゴージャスな感じと、ケーキの高級感を漂わせ、ウインナーコーヒーも伴に運んで来てくれていた。「シゲちゃん美味しそおでしょ。あなた舐めるだけでもいいのよ、少しお口を点けてご覧なさい」と、子皿にケーキを僅か分けて呉れた。一口食べて感激した。こんなに美味しい物がこの世にあるんだと、しかし本当のところはお腹の調子が今一だったので、
素直に美味しい、と言えず生返事した。「そお、じゃあママ頂くわ」、と言って白い細い両の手指を少しずらして合掌し乍ら、「頂きます」と、言って好きなモンブランマロンに手を点けた。僕はソノ合掌した時の
白い指と横顔が好きで、とても美しいと言うよりも神々しさを感じ何時までもジッと見ていた。「シゲちゃん、どおしたの。ママの顏に何かついてる」「ううん、母上が余りにも綺麗だったので見惚れていました」「まああぁ、あなた上手になったわネ、女を口説くのが。ママ迄口説くなんて憎い子」よく見れば、端麗な面の黒目勝ちな目に薄っすらと涙が光っていた。「ママネ、ないちゃった。あなたの精よ、女を泣かせるなんて......」。
季節は、新緑の萌える五月。頬を撫でる風が爽やかな午後のことでした。
遠い昔のことでもありました。
新緑の萌える五月が呼び寄せる
数多幸せ今日であるかも
最後迄お読み下さり有り難うございました。
「シゲちゃん、待ってるわよ」と、言って東北大震災の前の年に、母上は憂いのない国に先に行きました。
僕は向日でも亦「泣かしてあげよう」かと、色々プラング中です。
了。



