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建設業社労士でゼロコスト採用コンサルタントの渡瀬です。

最近の傾向

建設業や運送業では2024年問題として時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務が改正されます。これに伴って、時間外労働に関する相談を受ける回数が増加しています。労働基準監督署も36協定の時間外労働時間が多い企業を中心に訪問をしているという話も耳にしています。そういった影響からか、固定残業手当(みなし残業手当)についての相談件数が増加しているので、以前に「固定残業手当(みなし残業手当)に注意!」という記事を掲載させて頂きましたが、こちらは賃金額に着目した内容でしたので、今日は諸手当を含む計算方法について記載していきたいと思います。

賃金とは

そもそも賃金とは「賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対象として使用者が労働者に支払う全てのもの」をいいます。では、賃金に該当しないものとは以下の内容になります。

①任意的・恩恵的に支払われるもの

具体例は「結婚祝金」「死亡弔慰金」「災害見舞金」「退職手当」といったものが該当しますが、あらかじめ労働協約・就業規則等によって支給条件が明確に定められており、それに従って支払われている場合は賃金に該当します。

②福利厚生施設

具体例は「住宅貸与」ですが、住宅の貸与を受けない者に対して定額の住宅手当等が支給されている場合は賃金に該当します。

③実費弁証的なもの

具体例は「制服・作業用品代」「出張旅費」といったものが該当しますが、労働橋脚の定めに基づき、通勤手当の代わりとして通勤定期券を購入し労働者に支給している場合は賃金に該当します。

時間外労働の算定基礎賃金

固定残業手当の相談を受けるときに勘違いをされているケースが多いのが、時間外労働の基礎賃金です。具体例として基本給200,000円/月額、皆勤手当10,000円/月額、現場手当1,000円/日額、通勤交通費5,000円/月額として支払っている場合、基本給が200,000円なので、この額を所定労働時間(160時間)で除した1,250円を基礎賃金として1,250円に割増率(1.25)を乗じて1,563円を時間外労働単価と考えている方が多いです。このケースでは実際には基本給+皆勤手当+現場手当=230,000円(20日出勤として)が基礎賃金となり、160時間の所定労働時間で除すると1,438円の基礎賃金に割増率(1.25)を乗じて1,798円が時間外労働単価となります。※小数点以下は労働者が不利にならないよう切り上げて計算しております。

基礎賃金に含まれない手当

前項では皆勤手当、現場手当、通勤交通費を事例として説明しました。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、基礎賃金を決定するときには通勤交通費を基礎賃金から控除しておりました。そうです、基礎賃金から控除できる手当も存在するのです。具体的には「家族手当」「扶養手当」「子女教育手当」「通勤手当」「別居手当」「単身赴任手当」「住宅手当」「臨時の手当」などは、家族数、通勤費、距離、家賃に比例して支給している場合は基礎賃金から控除して計算することができますが、一律支給している場合は基礎賃金に含まれることになります。

 

基礎賃金に含まれる手当

前項では基礎賃金から控除可能な手当について記載しましたが、基礎賃金に含めて計算しなければならない手当についても記載しておきたいと思います。基本的には労働の対価として支払われている手当は全て基礎賃金に含まれると考えて下さい。具体例として「皆勤手当」「精勤手当」「役職手当」「無事故手当」「危険手当」「現場手当」「資格手当」「技能手当」などが該当します。従って、こういった手当は全て基礎賃金に含めて計算する必要がありますのでご注意ください。

手当の乱発

顧問先の企業で固定残業手当の導入を検討されるときに賃金台帳を確認させて頂きました。顧問先企業の情報ですので一部を変更して記載しますが、基本給200,000円(月額)、リフト乗務手当1,000円(日額)、大型運転手当20,000円(月額)、皆勤手当20,000円(月額※欠勤発生時は未支給)、売上貢献手当(当該売上金額の0.5%)、通勤手当5,000円、更に人によって様々な手当を設定されており、この状況で固定残業手当の導入を検討されていました。

・・・その前に、手当について整理をしましょう!というのが結論です。もちろん、この状況でも固定残業手当を導入することは不可能ではありませんが、基礎賃金の変動が毎月変わると固定残業手当●時間という設定が困難になります。また、固定残業手当額を●円と設定した場合でも毎月の基礎賃金が変動するので単価を変更する必要があり、給与計算が煩雑化する可能性が高くなります。

まとめ

固定残業手当(みなし残業手当)の導入を検討する場合、まずは現在の自社の給与条件や手当の実態を確認してみて下さい。その中からそもそも賃金ではないもの、基礎賃金から控除可能なものを抽出すると、残った金額が基礎賃金になります。そして基礎賃金に含まれる各種手当を整理し、固定残業手当が導入可能な賃金形態に整理することから検討を開始してみて下さい。

 

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