運命のいたずらって、あると思います?


始動救命士キム、現場の経験値はかなりになりますが、何とも切ない運命のいたずら…的な現場に遭遇したことがあります。


その話は今から20年以上前に遡ります。


晴れた日の昼下がり、とある中華料理店から救急要請、内容は「男性客が意識を失って倒れた…」というもの。


現着すると、身体の大きな男性が店内に倒れている…その原因はすぐ判りました、心肺停止です。


当時は今と違い、現場でアドレナリン投与(一般の方に判りやすく、乱暴な言い方をするなら心臓を動き出させる薬)を行えませんから、ナルハヤで病院へ搬送する事が良しとされていました。もちろん、しっかり心肺蘇生を試みるが前提です。


と、ここで、この男性には助かるチャンスと言えるサインが現れました。電気ショックを行え!と言う音声メッセージ。心臓に復活のチャンスが残っていたのです。しかも、何度電気ショックを行ってもメッセージが継続(医師から何度でも電気ショックを行えの指示)、たしか7〜8回は除細動を試みた記憶があります。


結局、心肺停止の状態で病院到着、傷病者に接触してからおおよそ15分後です。今、言うならショック抵抗性Vfだった訳です。


が、この男性、驚くなかれ、救命センターでの処置の甲斐あって、心拍再開、意識も戻り、後日、軽快独歩退院の転機に至ったのです。救急隊接触直前に心停止となったため、胸骨圧迫(心臓マッサージ)の効果が最大限に現れたものでした。



と、ここまでは大変嬉しいお話でした…が、が、が…


この後、残酷な結末が彼を待ち受けていたのです。


男性を搬送した救急出動からおおよそ一ヶ月後、当直勤務を終えようとした日の朝、一緒に現場対応した部下から「キムニィ主任(当時は主任)、これ見て下さいよ…」と手渡された朝刊。


そこには『◯◯歳男性、歩行中、乗用車にはねられ、病院に搬送されたが間もなく死亡』の記事。


この男性、かなり珍しい苗字で、年齢、住所も一致…そう、この男性、ラーメン店で心肺停止となったあの男性だったのです。


せっかく助かった命だったのに、一ヶ月後、まさかの…でした。汗だくになりなが、頑張って胸を押し続けた救命活動、アレは一体何だったのだろう。運命では片付けられない切なさを今でも思い出します。



人生、判らないものです…ね