今回は救急車拒否についてお話します。


コレね、一般市民目線だと結構タメになるかも…


当ブログで何度も何度も繰り返し伝えてきましたが、消防が行う救急業務とは急いで病院で治療を受けなければならない人を救急車で搬送することです。


ここで、ある問題が生じるケースがあります。それは救急搬送対象となる人、つまり傷病者本人が搬送を拒んだ場合。


実はコレ、結構あるあるなんです。例えば家の中でお祖父ちゃんが意識を失い倒れてしまった。救急隊が到着した時に意識は戻っていて、本人から「病院へ行かない」との申し出。倒れた時に頭も打っているので、病院搬送を勧めるものの頑固な本人「絶対に行かない、大丈夫」と、平行線。


このケース、救急隊は無理やり搬送はしません。消防庁から発せられている救急業務実施基準第13条に「隊員は、救急業務の実施に際し、傷病者又はその関係者が搬送を拒んた場合は、これを搬送しないものとする。」と明記されているからです。どんなに家族から搬送をお願いされても、強引に搬送することは事実上できないのです。チビっ子や認知症の人など、意思表示の真偽が疑わしい場合は別ですが、基本的に本人の同意がなければ搬送できないのです。


冷たい言い方かもしれませんが、搬送を拒否された場合、その後は自己責任。受入れる側の病院もシビアで「本人が治療を望まないなら仕方ないですね…」と言う感じで瞬殺されます。


よくあるのが酔って転倒し頭から出血、一緒にいた友人が救急要請。が、本人は頑なに搬送を拒否。友人は「本人の意思なんてどうでも良い、とにかく病院へ連れていって、頭を打ってるんだから!」と、語気を強めて詰め寄られる事も珍しくありません。現場に居合わせた警察官を含め、救急隊が搬送を勧めても「絶対病院には行かない、大丈夫!」と言われてしまうと、前述のとおり、救急隊は搬送できないのです。


後にトラブルになるケースも考慮して、第三者(警察官なら確実に◯)立会のもと、不搬送を了解してもらい活動終了です。念のため「この後、身体に何か問題が起きたとしてもそれは自己責任です」的な覚え書き(僕の消防では不搬送承諾書と呼ぶ)にサインしてもらい、不搬送成立となるのです。但しこの書面、不搬送トラブルで裁判になった場合の効力は微妙らしいです。あくまで事実確認として一筆もらってる訳で、何もないよりマシやろ…的な考えかな。


この問題、本人のタメを思えば無理やり病院へ搬送するべきかもしれませんが、我が国では基本的人権の尊重と言った、大大大原則がありますから仕方ありません。


但し、本人が頑なに搬送を拒んでも、明らかにACSを疑う様なケースなどでは命に関わることから、何とか本人に病院での治療を受けるよう粘り強く勧める事はあります。ただ、このケースでさえも、現場で何時間も説得し続ける訳にはいかないので、本人が「行かない!死んでも良い!」と言われれば仕方ありません、無理に搬送する法的根拠はないのです。


救急業務の基本は、あくまで本人が病院へ搬送して欲しいと言う要請が大前提であること、どうか周知されて下さい…家族に医者嫌いの頑固者がいれば、普段から病院での治療の重要性を伝えてあげて下さい…


それではまた次回 (@^^)/~~~