おことわり

これはあくまで私見であり、絶対的内容でない事をご理解のうえ、ご拝読下さい…かつ、長~いです (笑)


今年の春先、舞鶴市長が土俵上で倒れ心肺停止、女性が土俵上で胸骨圧迫(心臓マッサージ)を実施し蘇生に成功。

この時「女性は土俵に上がらないで下さい」ってアナウンスがあったため、当時の暴行問題も相まって、相撲協会が大バッシングを受けた事は記憶に新しいところです。

緊急事態に女性が土俵に上がる事の是非は別に、この時の市長の身体の状態について、キムニィが分析してみました。


映像を見ると、倒れた市長を前にオロオロする関係者(男性数名)、直後現れた女性(後に看護師との報道)が間髪入れず胸骨圧迫を開始。程なくしてAEDが到着するも電気ショックをかける様子はなし。意識も戻り、その後に救急隊が到着、担架に乗せ慌てる様子もなく搬送。

テレビ、新聞のマスコミ各社は一斉に『市長、土俵上で心肺停止、一般女性が心臓マッサージを行い救命に成功…』と大々的に報じ、功績を讃える声が大きくあがりました。

お見事っ!僕もそう思います…が、この報道には一つだけ事実と異なる点があるように思えました。それはこの市長、心臓は止まってなかったのでは?って事です。

当時のニュース映像を見た時「これ、CPA(心肺停止)と違うんじゃない?」と、救命士内で会話した事をよく覚えています。

後にこの市長は、SAH(くも膜下出血)で倒れたもので、数日後に手術を受け無事退院されたとの経緯が報道されました。これを聞き、やっぱりCPAじゃない…そう思った訳です。

SAHで心肺停止となり、胸骨圧迫が行われ心拍再開、直ぐに意識が戻る。救急隊も処置をする事なく病院搬送…う~ん、ど~しても考えにくいのですよ、これ。この状況から察すると、単に『意識消失』と呼ばれる病態と感じざるを得ないんです。

救命士仲間からは「意識を失い、倒れた時に頭を打っての外傷性くも膜下出血の可能性は…何らかの要因で突然血圧が下がったのでは…」こんな意見も出たりしました。

馴染みの救急ドクター数人にもこの話をしましたが、やはり「多分、心肺停止ではないでしょうね…」との意見でした。但し、女性の行動は問題なしで一致してましたけれど…

一方で、女性のとった行動には『心肺停止を前に、完璧かつ全く無駄がない素晴らしい処置…』と、多くのワイドショーで医療関係者を含む専門家とやらがコメントを交え、称賛の声をあげました。が、もし、僕の部下がこれと同じ行動を取ったなら間違いなく「オマエ、脈を確認したか?」と言ったでしょう。

そうなんです、この映像を何度見返しても脈拍チェックの形跡が見られないのです。僕ら救急隊は一般人と違い、意識のない人に対し必ず脈をチェックします。基本的には手首(橈骨動脈)、それがダメなら首筋(総頸動脈)、首筋で脈が触れなければ心臓が止まっていると判断し、胸骨圧迫を開始する鉄壁のマニュアル(プロトコルと呼ばれる)があるからです。

じゃ、この女性ダメダメじゃん、と言われそうですがそこは救急隊と違うところ。前述の救急ドクターも言ってましたが、一般人に対する最新の救急指導では『意識がなく呼吸をしていないようなら、すぐに胸骨圧迫を始める』事になっているからです。

故に、この女性が呼吸していないと判断したため胸骨圧迫に至った行為には全く問題がない訳です。このシーンは何度もテレビで放映されましたが、胸骨圧迫は映像を見る限り姿勢もテンポもほぼ完璧で、心肺蘇生法の周知効果にも繋がり、その功績は実益以上のものがあったと思われます。

因みにSAHに対する救急隊の対応は『絶対に刺激を与えない』が鉄則。この病態の特徴は、初めて経験する様な突然の激しい後頭部の痛み(無痛性もあります)で、意識を失わないケースもよくあります。その多くは血圧が高く、手首で脈の強さを確認すると、拍動がビンビン伝わってきます。救急隊が行える処置は血液中の酸素の量が足りない場合に於ける酸素投与程度で、後は振動を与えず安静に搬送する事。刺激を与え、血管が再び破裂したらほぼ救命不可能と教えられているため、SAHを疑った場合は瞳孔の確認すら行いません。ペンライトによる光の照射刺激などはもってのほか…それほどまでに救命士はSAHの処置観察に対する厳しい教えを受けているのです。何故ならSAHは死亡例が多い恐ろしい病気である反面、専門医の下で早期治療が行われれば、後遺症もなく完治する事も少なくないからです。



その昔、市民に対する心肺蘇生法は、倒れた人を見かけたら…

①呼び掛け
②助けを呼ぶ
③気道確保
④呼吸と脈の確認
⑤呼吸と脈がなければ人工呼吸と心臓マッサージを行う(当時は胸骨圧迫ではなく、心臓マッサージと呼ばれてました)

でしたが、緊急事態に冷静に呼吸や脈拍のチェックができる訳ないやろって事で、今は息をしてないと思ったら心臓は止まってると思え、そして直ぐに胸骨圧迫を…に変わったのです。

と言う訳で、この女性の行動はその教えどおりに行われたもので問題なし…むしろ、見習うべきものだったんですね。

ここまでの内容を読まれても、いやいやあれは心肺停止だよ、テレビで医療関係者もそう言ってるんだから間違いない!と言う人が多いかもしれません。土俵上で使われたAEDの解析データを取り出せば一目瞭然…恐らく波形は出ていたはずです。

因みに、あるSNSに「この市長は心肺停止じゃないと思う…」って投稿したら、返答の殆どが「何も知らない素人は黙ってろ!医者でもないくせして!テレビで専門家が心肺停止って言ってるだろ!」などと、こちらまで大バッシングを受けるはめに…恐るべしSNSの集団攻撃。唯一、少数でしたが「あれは意識を失っただけですよ…」との擁護者がいてくれた事だけが幸いでした (苦笑)


何れにせよ結果的に市長が御無事で退院され、公務復帰に繋がった事が何よりです。

皆さんも、機会があれば救急指導の講習を受けてみませんか、いつの日か、お役に立つ事があるかもしれませんよ (-_-)/~~~