望楼→”ぼうろう”と読みます。

さて、望楼とは一体何ぞや?辞書で調べると『遠くを見るための櫓(やぐら)』とあります。

この望楼、消防的に言えば高い位置から四方を監視し、火災をいち早く発見するためのいわゆる火の見櫓(ひのみやぐら)を指します。

初期の望楼は鉄骨がむき出しで、ハシゴを伝ってテッペンまで登り、そこから火災発見の監視業務についたそうです。僕が新人だった頃、当時の大々先輩や消防OBが『雷が鳴ると望楼勤務は恐いんだぞ~、真冬の望楼はとんでもなく寒いんだから~、今の職員は本当に恵まれてるよなァ…』などと、よく聞かされたものでした。


時代変わって今の望楼はご覧のとおり、鉄筋コンクリートで出来た頑丈なものが主流となっており、落雷の心配などありません…と言いたいところですが…


数々の災害現場へ職員を送り出したこの消防署、実は既に移転となり今は使われていないのです。


新庁舎は訓練施設や庁舎内の設備も最新式となったのですが、なぜか望楼が見当たりません…実は全国的に見ても、移転や新設される消防署には望楼がほとんど存在しないのです。

感の言い方ならお判りでしょう、そう、望楼の役目はとうの昔に終わってしまったのです。そもそも望楼は通信手段の乏しかった昭和の中期頃まで、火災をいち早く発見するために設置されたものですが、今や各家庭に電話が普及し、誰もが携帯電話を持つ時代となり、国内は一部地域を除きどこでも119番通報が可能となったからです。しかも、望楼よりも高い建築物も多く建てられ、物理的に望楼の存在意義がなくなってしまったのです…これも時代の流れなんですねぇ。


今も子供達が思い描く消防…スルスルッと滑り棒で消防士が降りてきて(今は滑り棒で降りません)消防車に乗り込む。そしてご覧のような消防署から出動する。この消防署、古き良き昭和のものかも知れません(笑)←ゴメンネ、未来の消防士さんの夢を壊しちゃって…


追記…今でも望楼が皆無という訳ではありません。少し前に建てられた消防署にはまだ望楼があるものも少なくありませんし、地域事情により、新設でも望楼を設置している消防署があるかもしれません。興味のある方は是非、ご自分で調べてみて下さい。