イスラム国の捕虜となったヨルダン空軍のパイロットが金属の檻に入れられ、生きたまま焼殺された。

この映像が配信され、残酷と思われた人も多くいた。だが、拷問・処刑の歴史にはさらに凄まじいものが数多くある。そのひとつが、ディスカバリーチャンネルの”拷問の歴史”の特集で紹介されていた”ファラリスの雄牛”である。


紀元前6世紀の古代ローマ時代、シチリアの君主であったファラリスは、新たな処刑法を取り入れようと、芸術家で鋳物師のペリロスに作成を依頼した。こんな依頼をする方もそうだけど、受ける方も…と思いたくなる。そして完成したのがこの銅製の雄牛。中は空洞で人の入る空間が設けられており、空気の取り入れのためのラッパみたいな真鍮製の金属管が設置されている。


脇腹部分に入り口があり、そこから処刑される罪人を入れ外から鍵をかける。


暗闇の閉所空間に閉じ込め、恐怖心をあおった後、ジワリジワリと下から火で炙り、それはやがて真鍮が黄金色に変わるまで熱し続けられる。当然、直接炎で炙る訳ではないので、煙は上がらず短時間で窒息死することはない。


受刑者は熱気で呼吸が苦しくなり、空気取り入れ口の金属の筒に口元を寄せ、苦しみ叫びだす。その声はペリロスが考案したラッパ状の管で変調され、雄牛が叫ぶかの如く聞こえるが、なんと、その声をファラリスは好んだのである。


この刑の残酷さは、死ぬ直前まで意識があり苦しみ続けること。内部の温度は450度にまで達し、さながら生きたままオーブンレンジに入れられるのと同じ状態だ。


そして、この刑の最初の犠牲者が驚き。ファラリスは製作者であるペリロスに牛の声に変わるかどうか確かめて見るようにと命じ、それに応じたペリロスが内部に入ると何と外から鍵が掛けられ、火が点けられたのだ。悶え苦しむ声と叫び声は、自身が作成した刑具の完成度を証明することになったのである。


人は何故これほど残忍残酷な刑を思いつくのだろう…ファラリスの雄牛以外にも凄まじい拷問・処刑法もまだまだあるが、何れにせよ現代からは考えられない方法。

人が人を裁く事に関し、賛否両論別れるところだが、自分は死刑制度自体は仕方ないと思う肯定派。が、これほどまで苦痛を与えて死を与える必要はないと思う。民主国家の優等生となった我が国も、何世紀か前まで斬首は勿論、拷問も公認であり実施されてきた。それ相応の事由があるからそれらの刑罰を受けたのだろうが、冤罪も多数あっただろう。今の平和な時代に、しかも世界一安全なこの国の一員でいられることを本当に幸せに思えてならない。


ファラリスは君主を追われると、民衆によりこの雄牛による刑を受け、命を落とすことになった。それを最後にこの雄牛は廃棄され、二度と復活使用されることはなかったそうだ。キリスト教殉教者約300人がこの雄牛で命を落としたが、皮肉にも最初と最後の犠牲者が作成者と依頼者となった訳である…