安倍首相は思考停止して現実逃避している③
~「アベノミクスによろしく」著者 明石順平弁護士 ~
――なんだか、GDPかさ上げが大きくなる項目を追加したような気もします。
「昨年12月にようやく内閣府が『その他』の内訳表に近いものを出してきました。分析してみたら怪しさ満載です。これについての分析記事はそのうちブログで公表する予定です。通常国会で野党はこの問題を追及するべきです」
――16年度のGDPは過去最高を記録しましたが、かさ上げのおかげなんですか。
「改定前は97年度が史上最高値でした。15年度とは20兆円の差がありましたが、改定後、ほぼ並びました。そして、16年度、めでたく史上最高額を更新したのです」
――安倍政権は20年度にGDP600兆円という目標を掲げています。
「改定後の13~15年度のペースを維持すれば、ちょうど達成できます。つじつまが合いすぎですよね。たまたまそうなったと言われてもそう簡単には信じられません」
――しかも、安倍政権が自慢しているのは名目GDPですよね。実質GDPで見るとどうですか。
「安倍政権は名目GDPについてしか語りません。改定前、安倍政権は民主党政権時代の3分の1程度しか実質GDPを伸ばせていませんでした。そして、改定によって思いっ切りかさ上げしても、実質を見ればまだ2%ほど民主党時代に負けている」
――GDPの6割を占める個人消費がダメだからですね。
「増えるわけがありません。15年の実質家計消費支出はアベノミクス前から5.8ポイントも落ちている。増税と金融緩和による円安で物価が上がったのに、賃金が上がっていないからです。アベノミクスが開始された13年から3年間で、消費者物価指数は約5%上がったが、名目賃金指数はほぼ横ばいです」
――でも、企業は空前の利益を挙げ、内部留保もガッポリため込んでいる。やがて賃金が上がるのではないですか?
「確かに円安で、大きな輸出企業は恩恵を受けています。ただし、輸出の数量が伸びたわけではなく、為替差益で儲けただけです。その一方で原材料の高騰で苦しんでいる企業は数多い。儲かっているのは大企業の中でも輸出企業という一部なのです」
