大学入学共通テスト(新テスト)は忖度テストではないか? | 学校教育を科学する

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2020年度からセンター試験に替わって実施される新テストに向けての、試行調査(プレテスト)が2018年11月に実施された。

あまりこのことは話題になっていない。専門の数学だけを確認したが、本番前の最終プレテストにしてはかなり完成度の低い問題だらけの内容であると認識した。

大学入試は、学歴社会日本の根幹システムの1つであり、生徒の進路に直接的な影響を与えることを鑑みれば、粗雑な内容が許されるものではない。大学入試センターも課題があることを認めているが、少しでも周知されるべき内容と思い、簡単にまとめることにした。

○難易度が高い

正答率5割を目標にしたにも関わらず、数学ⅠAが34.5%、数学ⅡBが44.9%である。しかし、現場の人間の目から試験を見ると、大体予想通りだ。思考力・判断力・表現力を身に着けさせたいという願望は分かる。しかし、基本的な知識・技能が不足しているから、思考力などを養成する授業など現実にはやれないのだ。問題を作ったエリート方と、現場で苦労している教員、どちらの方が生徒を正確に把握しているのか、その答えはこの正答率が示している。問題なのは、新テストを作っている人たちは生徒の実力が分からずに理想を追いかけているということだ。

 

○問題の意図が分からない(忖度しろってこと?)

全般に問題が分かりづらく、解くのが苦痛であった。文章は推敲されたと思えず読み辛い。話の流れが突拍子もない。数学的なレベルとしても程度が低く、現在のセンター試験の方が高度であると思ってもらって構わない。現実に数学を応用できるようにという意図は分かるが、それを全国の受験生相手の筆記試験でやるのは無理という当たり前のことなのではないか。

この問題を解くのは、思考力・判断力・表現力あるいは知識・技能といったものよりも、問題作成者の意図が何か、空気を読む力すなわち”忖度力”ではないか。つまりこの問題は、官僚試験として良いと思う。しかし、大学入学共通テストの意図とは正反対の恐ろしいものが出来上がっている。

また、解答も不明確な部分が多々あり、一々上げない。大阪大学と京都大学での出題・採点ミスがニュースになったが、それとは比較にならない質と量の出題ミスになるだろう。新テストでは精度を上げるだろうが、そもそもこのような形式で厳密性を保つことが可能なのだろうか?ここでも”忖度しろ”という心の声が聞こえてくるようだ。

 

○現行教育との断絶

2018年度センター試験では、新テストの思想が取り入れられるとうわさになっていた。しかし、蓋を開けると従来通りのセンター試験であった。確かに、今年度受験生はそれで良いだろう。では来年度受験生はどうするのか。可哀想だから従来通りにするのか。では再来年度新テストの受験生は、突然このような酷い(としか私には思えない)試験で進学先を選抜されなければならないのか。センター試験は教科書の内容で構成されており、努力に応じて得点することができた。しかし、新テストはいくら教科書を理解しても容易に点数が上がると思えない。だからと言って何を勉強すれば良いか分からない。教員にそれを指導するのが仕事だと丸投げするのは止めて欲しい。”忖度”できるような人を育成するのことが教育ではない!と言い返したい気分だ。

当該受験生に理想を押し付ける事態は、憲法に謳われる「人権の尊重」「職業選択の自由」を侵害しないと言い切れるのだろうか。

 

 

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