「(500)日のサマー」技ありの演出に俳優も健闘。「自分の消し方」が頼もしい
若い男女が出会う。男は思いきり惚れっぽく、絶望的にロマンティックな性格だ。一方、女はきわめて現実的で、恋に恋する幻想などかけらも持っていない。それでもふたりは好意を抱き合う。化学変化も兆しはじめる。
となると、これはロマンティック・コメディの常道に見える。反発と屈折の数々にめげず、ふたりはたがいに惹かれ合い、最後にはハッピーエンドが待っている。え、本当に?
そんな疑問から出発するのが「(500)日のサマー」の面白さだ。いや、疑問ではなく確信である。なにしろ映画の冒頭には「ビッチ」の文字が鮮明に刻まれる。ここで笑った客は、すんなりと映画に乗り込めるのではないか。
男はトム(ジョセフ・ゴードン=レビット)という。女はサマー(ズーイー・デシャネル)だ。ふたりはグリーティング・カードの制作会社で働いている。トムはサマーに惚れる。そして、もちろん振られる。そこが(500)日という題名の由来だ。新人監督のマーク・ウェブは、「トムの記憶を通してのみ」サマーの姿を描く。しかも順序立ててではない。11日目の記憶のつぎは488日目の記憶。さらにそのあとは249日目。記憶のシャッフルにはなんの法則もない。
口でいうのはたやすいが、そんな脚本に応じて芝居をするのはけっこう大変だったはずだ。しかもこの映画は「甘い生活」や「アニー・ホール」と異なって、今風の若い男女が軽く戯れ、薄く交わるスタイルを取っているのだ。と考えると、「(500)日のサマー」には技能賞だけでなく敢闘賞も贈りたい気がしてくる。ロマンティック・コメディの掟をきれいにひねった脚本演出は当然技ありだが、若手俳優(とくにデシャネル)の「自分の消し方」には、思わず拍手を送りたくなった。
原題: (500) Days of Summer
監督: マーク・ウェブ
製作: ジェシカ・タッキン・スキー、マーク・ウォーターズ、メイソン・ノビック、スティーブン・J・ウルフ
脚本: スコット・ノイスタッター、マイケル・H・ウェバー
撮影: エリック・スティールバーグ
美術: ローラ・フォックス
編集: アラン・エドワード・ベル
音楽: マイケル・ダナ、ロブ・シモンセン
配給: 20世紀フォックス映画
オフィシャルサイト解説運命の恋を信じる男と信じない女が繰り広げる、ちょっぴりほろ苦くてユニークな恋愛コメディー。『セントアンナの奇跡』のジョセフ・ゴードン=レヴィットふんする男性の視点から、愛する人との異なる恋愛観に翻弄(ほんろう)される20代の男のリアルな姿をつづる。キュートな相手役には、『ハプニング』のゾーイ・デシャネル。初メガホンを取ったマーク・ウェブ監督はミュージック・ビデオ出身らしく、音楽から会話に至るまでセンスのいい演出が際立つ。
あらすじグリーティングカード会社で働くトム(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、新入りのサマー(ゾーイ・デシャネル)に一目ぼれしてしまう。ある日、好きな音楽をきっかけに意気投合し、いいムードになった二人。そんな中トムは、サマーに対して「彼氏はいるの?」と聞くと…。
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