【書名】DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略
【著者】小野塚征志
【発行日】2022年5月21日
【出版社等】発行:インプレス
【学んだ所】
・構想から体制構築までの4つのステップ
・Step1_目指す姿の構想:DXを実現することで、誰に、どのような価値を、どうやって提供する企業を目指すのかを具体化する。=DXを実現したあとの姿を描く。⇒最初の段階からインダストリアルトランスフォーメーションを目指すのであれば、どのような社会/経済になることを望むのか、その実現に向けてどのような役割を担うのかといったことも考えておくべき。
- DXは目指す姿を実現するための「手段」:DXは「デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新」=ビジネスモデルを革新することが目的ではなく、目指す姿を実現するために、ビジネスモデルを革新する。⇒DXの推進は、目的ではなく、目指す姿を実現するための手段。⇒そのために、最初に考えるべきは、DXを進めた成果として「誰に、どのような価値を、どうやって提供する会社を目指すのか」ということ。
- 事業性のある目指す姿を具体的に構想:目指す姿を考えるにあたって基本とすべきは、事業性のあるビジネスモデルを描くということ。⇒「需要性」「経済性」「先行者優位性」「競争優位性」の4つの基本要件を満たした目指す姿を描くことが大事。⇒「需要性」や「経済性」があれば、ユーザーを獲得することも、リターンを得ることもできるはず。「先行者優位性」や「競争優位性」があれば、他社との競争に打ち勝てるはず。⇒これらの要件を基準に目指す姿を具体化し、検証と再考を繰り返すことで、より事業性のあるものにしていくことが期待される。
・Step2_戦略の策定:目指す姿と現状の間にあるギャップを把握したうえで、DXを実現することによりそのギャップをどのように解消するのかを思索する。⇒DX戦略とは、その目指す姿の実現に向けたシナリオを指す。
- 目指す姿と現状のギャップを見える化:目指す姿と現状の間には、さまざまなギャップがある。戦略の策定にあたっては、まずはそのギャップを見える化することが重要。⇒目指す姿を実現するために必要な経営資源を多角的な視点から棚卸することが望まれる。
- DX時代ならではの戦略を探求:目指す姿と現状の間にあるギャップを解消できれば、目指す姿に到達できる。そのギャップの解消の施策をとりまとめたものが戦略。⇒「DX時代ならではのビジネス」を目指すのであれば、従来からある施策に加えて、「DX時代ならではの施策」も検討すべき。⇒目指す姿の実現に向けて、単なるギャップの埋め合わせではない「DX時代ならではの戦略」を探求することが期待される。
・Step3_実行計画の作成:目指す姿の実現に向けて、誰が、何を、いつ実行するのかを定める。⇒短期的な成果の獲得を見込めるクイックヒット(難易度の低い施策)を先行的に実施するなど、「成功しつつあること」を社内外に発信しやすい計画とすることも重要。
- 施策のタスクや手順を具体化:戦略の策定後、次に考えるべきは「何を実行するか」⇒各施策のタスクや手順を具体化し、実行計画を落とし込むことで、担当者が代わっても取り組みを継続できるようにする。⇒施策を実行することでの効果やKPIを明記することで、進捗度や達成度を明確に評価できるようにすることも重要。
- 難易度と効果を基準に施策の実行時期を決定:DXを早期に成し遂げるためには、すべての施策を即座に実行することが望ましいが、人材や資金などの制約もある。⇒難易度と効果を基準に各施策の優先順位を定めて「いつ実行するのか」を考えることが現実的。⇒DXはビジネスモデルの革新であるがゆえに、一朝一夕には実現できない。業務が変わることに対して現場の抵抗を受けることも予想される。DXを進めることの意義や効果に懐疑的な見方をする人もいる。⇒そのため、いち早く「成功しつつあること」を社内外に発信することが大事になる。先んじてクイックヒットを実行し、成果を得ることで、DXの推進に前向きな雰囲気を醸成すべき。⇒一方、ユーザーへの提供価値の拡大や収益の増加などに大きな効果を見込める重要施策は、往々にして時間や手間がかかる。成功確率を高めるためにも、より計画的かつ段階的に進めることが大切。
- 担当者を記すことで責任を明確化:どれほどすばらしい施策であっても、実行されなければ意味がない。⇒「誰が実行するのか」を明確に定めることで各施策の推進力を高めるべき。⇒実行計画には、組織名や役職名だけではなく、個人名を明記することで、責任の明確化を図ることも有効。
・Step4_推進体制の構築:既存事業の維持/強化と、DXによるビジネスモデルの革新を両立できる組織体制を作る。DXの実現に向けた取り組みを加速化するため、PDCAサイクルを高速に回せる仕組みを構築することも大事。
・以上4つのステップは、DXの実現に向けた初期の戦略/体制構築に過ぎない。以降、実行計画に定めた具体的な取り組みを速やかに推進していくことが求められる。
- 両利きの経営を実現する推進体制の構築:「既存と新規」「守りと攻め」「持続的な成長と非連続な成長」を両立させつつ、ビジネスモデルの革新を図る「両利きの経営」の実践が求められる。⇒既存事業を維持/強化する人と、DXを推進する人では、求める人物像や評価のあり方がまったく異なる。⇒ゆえに、DXを推進する組織は、事業部門と別に設置し、異なる評価体系を適用すべき。
- PDCAを高速に回す人材配置とそれによる取り組みの加速化:今後、DXの進展によって事業環境は大きく変化することが予想される。⇒この変化に対応するためにも、優位性を高めるためにも、PDCAサイクルを高速に回すことで、DXの実現に向けた取り組みを加速化することが大事。⇒Planの段階にあっては、時間をかけて綿密な計画を作ることよりも、いち早くDoの段階にシフトすることを優先すべき。クイックヒットは、すべての施策の計画作成が完了すまで待つことなく実行してもよい。⇒Checkは、より迅速かつ柔軟な対応を可能とするため、年次や四半期単位ではなく、月次/隔週で行う。⇒Actionでは、事業環境の変化も踏まえて施策/タスクを見直す。⇒この高速サイクルを実現するためには、DXを推進する組織に構想力や行動力のある人材を配することが欠かせない。進捗度や達成度、事業環境の変化を的確に把握するためのツールを整備することも必要。
・デジタル技術の進歩と活用の拡大を契機とした「DX時代ならではのビジネス」であれば、その変化の幅も大きくなる。⇒一度定めた目指す姿、戦略、実行計画、推進体制を金科玉条のように守るのではなく、柔軟に見直すことで、変化に即応することも重要。
・日本企業はどうしても「自前主義」で戦略を検討しがち。⇒その結果、自虐的な判断で未来の可能性を潰している。⇒しかし、Amazonも、楽天も、最初は何もないベンチャーだった。不足があるのだとすれば、外部から獲得すればよい。⇒「自前主義からの脱却」なくして「DX時代ならではのビジネス」は実現できないと認識すべき。