【書名】世界一わかりやすいSAPの教科書 入門編
【著者】とく
【発行日】2021年8月31日
【出版社等】発行:秀和システム
【学んだ所】
・SAPは、ドイツのSAP社が開発・販売している企業向けの業務システム。
・ERPシステムとは、会社の基幹業務を担うシステムで、基幹業務とは経理や販売、調達、生産、物流、人事など、会社になくてはならない中心的な業務のこと。
・SAP ERPが世界中で使われている3つの理由
- どのような業種の会社業務にもマッチできる仕組み:業種が異なれば、業務も変わる。SAPは、この業種間の業務の差異を「カスタマイズ」という機能を使って、業種に合わせたシステムとしてセッティングができるようにした。⇒さらに、カスタマイズ機能を使って、それぞれの企業固有の業務にフィットするシステムにすることもできる。
- グローバルスタンダードシステム:SAPは世界標準の業務に合わせた作りをしている。⇒業務をSAP標準に統一することのメリットは2つある。⇒1つ目は、海外展開の際の運用コストやトレーニングコストを下げることができ、日本本社のメンバーとも意思疎通が取れやすいことにある。SAPの標準業務に統一することにより、データの粒度も各国・各地域で揃えることができるため、グローバルで分析したいデータが整えられている状態が作れる。それによって高度な分析からスピーディーな経営判断につなげられるようになる。⇒2つ目は、将来的にデジタル領域の拡張がしやすくなること。SAP標準機能を使えば、常に最新バージョンのSAPを使うことができ、それだけ最新のデジタルシステムとの連携も容易になる。
- 広範囲の業務をカバー:SAP ERPは、経理や販売、調達、生産、物流、人事など、広範囲の会社業務をカバーしている。そのため、1つの基幹システムに会社業務のデータを統合することができる。⇒システムを1つに統合するメリットは、データ間の関連をリアルタイムで把握できること。SAPでは、1つにシステムで会社全体の業務をカバーしているため、リアルタイムに関連し合う業務データを統合的に見ることができるようになり、瞬時にデータ分析ができるようになる。⇒これからの会社経営には、ビッグデータ分析が必要不可欠。会社データを多角的に分析し、スピーディーな経営判断が求められる。
・SAPを理解するために必要な3つの知識
- 会社業務の知識:SAPは、グローバルスタンダードなERPシステムであり、そのため、SAP導入プロジェクトはSAP業務に合わせるための業務改革プロジェクトでもある。それゆえ、業務改革を提案するためには、会社業務について詳しく知っておく必要がある。⇒会社業務は、世間一般的な顧客業務(あるべきの業務の姿)のこと。特に日本企業は、カイゼン活動により、それぞれの会社ごとに、企業固有の業務になっていることが珍しくない。そのため、SAP(グローバルスタンダード)と会社固有の業務にGAPがあり、この差を埋めるためには、「To-Be(あるべき姿)の業務」を知っておく必要がある。
- SAPの知識:SAPの知識とはSAPの標準機能のこと。⇒SAPはERPパッケージシステムなので、パッケージとして標準で機能が備わっている。そのため、お客様の業務がSAPの標準機能で実現できるか、はたまた機能追加のために個別で開発しなければならないのかを判断する必要がある。⇒SAPは世界一のERPと言われるだけあって、数多くの便利機能が標準で備わっている。しかし、これらの便利な機能も知らなければ、追加で開発をしましょう、という残念な提案しかできない。⇒また、SAPプロジェクトではSAPの使い方をトレーニングする必要がある。⇒SAPの知識は、「お客様の業務をSAPの標準機能で実行できるかを判別するため」、「ユーザートレーニングをするため」に必要。⇒SAPの知識をつけるには、SAPの実機に多く触り、多種多様なプロジェクトに参画することが一番。
- ITの知識:ITの知識には、「プログラミング」、「データベース」、「ネットワーク」、「ハードウェア」などなど、ITに必要な知識はアプリからインフラまで、多岐にわたる。⇒SAPは、ITシステムであり、そのため、ITの知識がなければ、ロジックがバラバラな要件定義になったり、インフラを無視した無茶な設計になったりする。ITシステムを導入するプロジェクトを進めていくためには、最低限のITの知識は必要不可欠。
・メーカーであれば、製品を作る業務の流れは、ほとんど同じである。使う材料・受注の方法・製造方法・お届け方法が違うだけで、業務の流れはほとんど同じ。⇒同じメーカーでも作るものによって、業務形態によって、調達・生産・受注の順番が違う。どの業務を先にやるかは、業務形態によって異なる。しかし、順番が異なるだけで、業務でやること自体は同じで、業務同士つながりがある。⇒会社の業態によって、調達、受注、生産、出荷の順番が異なることがあるが、基本的には、この4つの業務にはつながりがある。
・お金の管理には、2種類ある。
- 社外向けお金の管理=財務会計
- 社内向けお金の管理=管理会計
・お金の管理をして、社外向けにレポートを出す業務を財務会計と言う。
- B/S(Balance Sheet)貸借対照表:財務状況がどうなのかを見るレポート。会社にいくら資産があるのか、いくら負債があるのか、純資産がいくらあるのかなど、現時点の会社の財務状況を見る。
- P/L(Profit&Loss Statement)損益計算書:この1年間(もしくは四半期間)で、どれだけ売上を上げたか、どれだけ利益を出したかを見るレポート。特徴は期間が定められていること。いわば、成績表みたいなもの。
- C/S(Cash flow Statement)キャッシュフロー計算書:現金の流れを把握するレポート。⇒P/Lでは、買掛金や売掛金などで収支を把握しているが、実際に現金としていつお金が出ていって、いつ入ってくるかは分からない。C/Sでは、「今」手元にいくらお金があるのかを把握することができる。⇒売掛金(ツケ)があって、将来的に現金が入ってくる予定があるとはいえ、現金がなければ材料の仕入れやスタッフの給料を払うことができない。=現金がないと会社の経営ができないということ。⇒B/S、P/Lを見るだけでは、会社の正確な経営状況はわからないが、C/Sも合わせて見ることで会社のお金の状況を正確に把握することができる。
・管理会計は、社内向けのお金の管理業務。特に「原価管理」が業務の軸になる。
・管理会計の業務
- 間接費管理:家賃や水道光熱費、人件費など、モノを作るのに直接は関係のない、間接的な費用の管理。
- 製造原価管理:モノを作るのにかかる費用を計算する。
- 収益性分析:売上と費用(原価)がいくらだったのかを分析する。
・会社の基幹システムであるSAPは、モジュールと呼ばれる業務領域ごとの機能群に分かれる。
- 財務会計:FI(Financial accounthing)
- 管理会計:CO(Controlling)
- 販売管理:SD(Sales and Distribution)
- 調達・在庫管理:MM(Material Management)
- 生産計画・管理:PP(Production Planning and Control)
- 品質管理:QM(Quality Management)
- プロジェクト管理:PS(Project System)
- プラント保全:PM(Plant Maintenance)
- 人事管理:HR(Human Reaources)
- ベーシス:Basis
・SD(販売管理)、MM(調達・在庫管理)、PP(生産計画・管理)をロジ系、FI(財務会計)、CO(管理会計)を会計系と呼ぶ。
・マスタとは、普段の業務で購買発注、受注伝票、会計伝票といったデータを登録するときに使う「あらかじめ登録しておいたデータリスト」みたいなもの。⇒マスタデータがなければ、購買発注、受注伝票、会計伝票といった業務データの登録ができない。
・SAPはシステムの機能を業務ごとに分けて管理するために、モジュールという形で分けているが、実際の会社業務では、業務間のつながりがある。⇒この業務間のつながり(モジュール間のつながり)を理解することで、会社全体の業務の流れを理解することができる。
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