内山悟志「新しいDX戦略」を読んで② | 昔のテレビ番組や日商簿記1級などの雑記

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【書名】未来ビジネス図解 新しいDX戦略

【著者】内山悟志

【発行日】2021年7月1日
【出版社等】発行:エムディエヌコーポレーション

 

【学んだ所】

不確実性の時代といわれる今日は、過去の成功体験や先行事例に基づいて立案した戦略や、これまで育んできた競争優位性が、何年にもわたって機能する時代ではなくなっている一方、IoT技術の進展やスマートデバイスの浸透といったテクノロジーの進化がビジネスの最前線におけるITやデジタル技術の活用の可能性を飛躍的に拡大させつつある。また、クラウドサービスの浸透は、企業がITやデジタル技術の導入を推進する際のハードルを下げることに大きく寄与している。企業は、既存ビジネスの効率化や対応力向上のためだけでなく、ビジネスモデルの転換、新規ビジネスの創出、業界構造の変革といった分野に、デジタル技術の活用の可能性を見出そうとしている。

これまでの情報化では、社内に目を向けると業務の効率化を目的として、作業の自動化・省力化管理の計数化・見える化情報の伝達・共有・再利用などを推し進めてきた顧客や取引先といった社外に対してもビジネスの対応力向上を目指して顧客との関係の強化、販売チャネルの拡張、品質や納期の改善などが取り組まれてきた

一方、DXでは社内においても業務の変革を目指して業務そのものの自動化・不要化意思決定方法の変革指揮命令・組織運営の改革などを実現しようとしている。さらに、対外的な取り組みとして新規の顧客価値の創出ビジネスモデルの転換新規事業分野への進出などビジネスの変革が期待されている。

現状の延長線上にあるような発想ではなく、「今までやっていたことをやめてしまう」、「まったく違うやり方に変える」、「違うやり方をゼロから創り出す」というように、これまでの常識を打破するような斬新な発想が必要となる。デジタル技術を活用した抜本的な業務改革を発想するためには、ゼロベースで適用の可能性を探ることが求められる。

デジタル化がもたらす3つの価値

  1. あらゆるデータが補足できるようになる今や、普段の生活の中でさまざまなデータを生みだしている。⇒今後、生活者の衣・食・住、交友関係、健康状態、購買・移動などの行動にかかわるさまざまな情報、企業における事業や業務にかかわる営みなど、あらゆる情報をデジタルデータとして補足できるようになっていく。これらのデータが分析や予測に活用されることで、利用者がより便利になったり、新しいサービスやビジネスが生まれたりして、現実の社会にフィードバックされるということが重要なポイント。
  2. インターネットなどのネットワークによって人やモノがつながりを持つ人と人がつながるという体験もSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の普及で広がってきた。⇒あらゆる行動や事象がデジタルデータ化されると、それをやり取りすることで新しい価値が生み出される。また、こうした人と人、消費者と事業者とのつながりを活用することで、企業のマーケティングや顧客との接点の作り方も変わってきている。⇒大量消費の時代が終焉し、「モノ」や所有に価値を見出してきた時代から、モノの先にあるコトへと価値が移り変わり、さらにはSNSに典型的に見られるようにコトに対する体験共感が重視される時代へと消費トレンドが進化しており、つながりの重要性が高まっている
  3. 物理的な世界のほかに仮想的な世界が存在し、それらを行き来できるデジタルデータがネットワークを通じて行き交うことで、仮想的な空間・体験という新しい概念が生み出された。⇒物理的な世界に加えて、もう1つの仮想の世界で仕事や遊びなどの社会生活が体験できるようになってきている。

DXの定義(2018年12月経済産業省「DX推進ガイドライン」)企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

DXの本質社会や経済活動全体が高度にデジタル化され、あまねく浸透している世界が開け、「アフターデジタルの世界観が広がると、それに適応した企業にまるごと生まれ変わること。

ビジネスモデル、取引や顧客との接点、働き方や社内の業務プロセス、意思決定や組織運営の方法、組織カルチャーなど、すべてがデジタルを前提として組み立てられている企業が、今後の目指すべき姿となる。すなわち、DXとは企業をデジタルに変革することを意味する。

DXの全体像DXは、「DXの実践DXの環境整備2つから構成される。具体的なDXの実践施策を遂行しながら、それと並行して企業内改革を含む環境整備も推し進めていく必要がある。

具体的なDXの実践には、業務の高度化や顧客への新規価値の創出を行う漸進型イノベーションと、新規ビジネスの創出やビジネスモデルの変革を行う不連続型イノベーションの2つのタイプがある。

  • 漸進型イノベーション主に既存事業を対象とし、デジタル技術やデジタル化したデータを活用して、業務のあり方を大きく変革したり、これまでに実現できなかったことをしたりする
  • 不連続型イノベーション自社がこれまで展開してこなかった分野の事業を創造したり、新しい市場を切り開いたりするもの。

DXを推進するための環境整備には、意識・制度・権限・プロセス・組織・人材を整備・変革する企業内変革既存IT環境とITプロセスの見直し・シンプル化・再構築を行うIT環境の再整備の2つが含まれる。

  • 企業内変革デジタル時代に対応できるように多岐にわたる企業内部の変革を推進すること。
  • IT環境の再整備朽化した社内システムを刷新したり、迅速なシステム化を実現するために開発や運用のプロセスを見直したりすること。

デジタル化には、「デジタイゼーションデジタライゼーションの2つの意味がある

  • デジタイゼーション物理的なモノやアナログの情報をデジタルデータ変換して表現すること。たとえば印鑑という物理的なモノを電子印鑑に置き換えること。⇒アナログカメラの写真フィルムがデジタルカメラの画像ファイルに置き換えられたり、紙の帳票がExcelファイルに置き換えられたりすることと同様のもので、これまでにもさまざまな分野で進められてきた。
  • デジタライゼーションまずはデジタイゼーションを前提として、それを通じて業務のやり方や取引の形態が変わる現象を表している。
  • デジタイゼーションとデジタライゼーションは包含関係にある。⇒たとえば、楽曲や映像は、「デジタイゼーション」によってデジタルデータになっていることが前提となり、それによって入手や提供の方法をダウンロードや配信に置き換えることができるようになる。さらに、物理的な受け渡しや不要となり、取引の形態や決済の方法も変わる。

デジタイゼーションデジタライゼーションの2つのデジタル化を駆使して、企業をデジタルに変革することが、DXの重要な1つの側面したがって、DXはデジタイゼーションデジタライゼーションを包含した、より広範な取り組みといえる。これにより、働き方、社内外のコミュニケーションや業務プロセス、商取引、顧客サポートなど、企業のあらゆる営みをデジタルに適応させていくことができる

デジタルを前提とした企業運営に向けたDXの推進においては、技術そのものよりも重要であるものの、難易度が高く多くの日本企業にとってネックとなっているのが組織カルチャーの変革たとえば、働き方の変革でコロナ禍の影響で在宅勤務やテレワークが推奨され、これに対応するためには業務のデジタル化の重要性が広く認知された。⇒しかし、テクノロジーを導入するだけで働き方を変革することはできないどこにいても業務遂行できるリモートワークを支える通信環境、協調的な作業を促進するコラボレーションシステム、業務の進展やパフォーマンスを可視化ツールなど、テクノロジー側の準備はおおむね整っている。⇒そうしたテクノロジーの恩恵を最大限に活用し、デジタル時代に適合した企業となるためには、組織カルチャーの転換が求められる。⇒仮に、デジタル化によって在宅勤務やテレワークでも業務が遂行できるような環境が整ったとしても、組織カルチャーが以前のままという状態では、新しい働き方は定着せず、すぐに元のやり方に戻ってしまう

日本の企業にありがちな3つの呪縛

  1. 抱える重荷の呪縛日本の企業は過去の常識や資産を捨て去ったり、大きく転換したりすることなく平成の30年を過ごしてしまったために、過去の成功体験、旧来の組織制度や企業風土、老朽化し複雑化した既存システムを捨て去ることができず重たい荷物を背負ったまま、これまでと異なる、身軽さが勝敗を左右する新しいルールの戦場で戦いを挑んでいる
  2. 経営者のデジタル感度の呪縛「技術のことはよくわからない」、「担当者に任せている」という経営者が少なくない。これではデジタル時代に変革を起こすことは難しい。⇒経営者が将来に対する慧眼と強力なリーダーシップを持ってトップダウンでDXを牽引することを前提としている。⇒一方、トップダウン型のDXを断行できる企業は多くはないというのが日本企業の実態といえる。経営者のトップダウンを待っていては、DXが始まらないということも考えられる。⇒日本には、欧米と異なる日本流の起こし方、進め方があるはず。⇒ボトムアップ、あるいはミドル層から変革を巻き起こすことができるのが日本企業の強さDXの重要性を認識した中堅や若手の中の誰かがDXの最初の一歩を踏み出し賛同者や協力者を増やしながら、経営者の理解や支援を得るように働きかけていく、「ボトムアップ型ミドルアップダウン型の推進アプローチが有効な場合もある。また、大きな投資を傾けたり強力な陣容を固めたりしなくても最初のひと転がりとなる試行的な取り組みができるのがDXの特徴でもある。
  3. 組織マネジメントの呪縛組織カルチャーも組織マネジメントの呪縛の1つの要素。⇒日本企業は、同質性を重んじ、コンセンサスと前例主義を重視したマネジメントと意思決定によって運営されている傾向が強い。それは、日本の経済や企業における過去の大きな成功体験が関係している。日本経済や多くの大企業は、大量生産・大量消費を前提とした1960年から1990年の高度成長期に大きな成功を収め、躍進した。そして、その時期に形成された業界構造、商慣習、事業形態、組織文化を温存し、その後停滞の30年を過ごしてきたことで、デジタル後進国といわざるを得ない状況に陥ったといえる。高度成長期に形成された日本的経営モデルとそれを支えてきた組織マネジメントの考え方は、大量生産を前提とした時代には合理的だったが、デジタルを前提とした時代には不適合と考えるべきであり、日本的経営の寿命はすでに尽きているといわざるを得ない。

デジタルの時代では過去の成功体験や先行事例に基づいて立案された戦略や過去に生み出された競争優位性が何年にもわたって有効に機能することはなくなっている。⇒これは、新しい価値を生み出し続けなければ生き残れないことを意味し、そのためにはこれまでの常識を捨て去らなければならないデジタル化する社会に適応した企業に転身できるかどうかが、これからの日本企業の生き残りを左右するといっても過言ではない。

デジタル化が企業に及ぼす3つの影響

  1. 既存事業の継続的優位性の低下同業他社がデジタル技術やデータを活用して優位性を向上させたり、異なる優位性を持つ新規の参入者が台頭することで、自社の相対的な優位性が損なわれる可能性が高まっています。企業はデジタル技術やデータを活用した業務の高度化コスト構造の変革により、既存の事業や優位性を維持・拡大していかなければならない
  2. ディスラプター(破壊者)による業界破壊の可能性デジタル技術を活用して新規の顧客価値を提供したり、異なるビジネスモデルで顧客を奪ったりする、いわゆるディスラプターが台頭することで、既存市場が破壊される可能性が高まる。アメリカではAmazonショックと呼ばれる現象によって、大手デパートだけでなく、専門小売店が大きな打撃を受けている。⇒国内でもあらゆる業界にディスラプションの波が押し寄せており、対岸の火事ではなくなっている。⇒企業は、製品・サービスをデジタル化したり、デジタル技術やデータを活用した新たなサービスを創出したりして、ディスラプターに対抗しなければならない
  3. デジタルエコノミーがもたらす社会全体の構造変革デジタル化による社会システムや産業構造の急速な変化についていけず、取り残される恐れがある。

企業が今後、生き残り、成長していくためには、デジタル化が企業に及ぼす3つの影響に対応する形で、3つの能力を身に付けなければならない

  1. 既存事業の継続的優位性の低下に対応漸進型イノベーション推進力デジタル技術やデータを活用して、既存の事業や業務を高度化・変革していく能力同業他社がデジタル技術やデータを活用して優位性を向上させたり、異なる優位性を持った新規参入者が台頭したりするのに対抗するためには、他社に先んじて、より有効にデジタル技術やデータを活用して、競争優位性を維持・拡大しなければならない
  2. ディスラプター(破壊者)による業界破壊の可能性に対応不連続型イノベーション創出力デジタルを前提とした新規の顧客価値やビジネスを創出していく能力場合によっては、自社の既存事業を破壊する可能性を持った新規事業を自ら創出しなければならない。自社がやらなければ、他社がやると考えなければならない。
  3. デジタルエコノミーがもたらす社会全体の構造変革に対応変化適応力社会や市場のデジタル化に対応して、自ら継続的に変革して時代の変化に適応していく能力