- ベルカ、吠えないのか? (文春文庫 ふ 25-2)/古川 日出男
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うおん、うおん。
「戦争の世紀」、20世紀。
犬たちは、どこにいる。
北のはずれ、アリューシャン列島の島にいる。
日本軍に捨てられた、4頭の軍用犬たちから、物語は始まります。
第二次世界大戦後から、1991年、ソビエト連邦崩壊。
犬たちを追った約45年間。
ちなみに「ベルカ」とは、宇宙探査船スプートニク5号に搭乗した犬の名前。
参考リンク → ソ連の宇宙犬-Wikipedia
さて、物語。
アリューシャン列島で、アメリカ軍に保護された日本の犬が、アメリカに行って、子供を産み、その子供たちが、物語となり、またその子供たちが子供を産み、また物語となる。
とはいえ、かなりバイオレンス色に彩られた1冊でございます。
犬と人間の種族を超えた愛?のつながり。
愛。あります。でも、ハードです。
そこに描かれる場面は、常に戦場です。
涙は、ありません。
犬の血。そのつながり。人間の暴力。そのつながり。
犬に煩悩は、無い。
指名を全うする為生きる。死ぬ。儚い。
暴力的なシーンにぐいぐい、引っ張られる所もございます。
ですが、犬のシーンは、詩的な雰囲気におさまっていたように思います。
たとえ、犬が犬を食べるシーンであっても。
そんな所が、素敵な1冊だったと思います。
追記7/15:
なんなく、すっきりしないので、ぶっちゃけた感想を記しておきます。
ストーリーの展開がですね、現代と過去を行ったり来たりナ訳です。
人間には、ほとんど名前がついていなくて、ついていても犬仮面とか、ニックネームみたいなものなんですね。
現代版のストーリーは、元KGBで、ソ連に人生をささげた人物が中心となって描かれますが、彼はずーっと老人とか元KGBとかそんな具合に書かれていました。
で、現代版でその老人は、ロシアのマフィアのボスの殺戮をしていくわけです。
なんで、殺戮するかというと・・・
老人は、ソ連を愛しとったわけです。人生を賭けとったわけです。
それが、ハイお終いって、ソ連が終わってロシアになって、行き場の無い怒りが芽生えたようですね。で、マフィアのボスを殺して、ロシア国内をマフィアの抗争の渦に巻き込んじゃえ、ついでに中近東あたりも巻き込んじゃえ、そうしてロシアなんて、ぼろぼろになっちまえ。とそんな想いがあるみたいでして。
で、なんで犬かっつーと、犬好き。
いや、それだけじゃなくて・・・犬を殺戮の手先にしよったんですわ。
その戦闘能力には、人間はとうていかなわないと思ってて、過去に犬を中心とした特殊部隊をKGBでつくっとったわけです。
それも犬好きがなせる業。
まあ、優秀な犬たちが彼の元へ集まっていくわけです。
途中には、人間の少女(日本人)まで犬の名前を襲名して、親父のやくざを遣っちまうわけですから、恐ろしいこってす。
で、犬。
その老人の元に集まってくる犬たちがどんな経緯を辿ってきたか?というのが、犬のストーリーになります。過去の話のほうですね。
犬のストーリーは、別個のものとして取り扱われています。第二次大戦後から現代まで、戦争と犬の系譜をシンクロさせて描かれます。けっこう残酷なシーンもありますね。
語りかけるよう文体に引き込まれますが、老人の正体がはっきりするのは、物語の後半なので、真ん中あたりまでは「なんのこっちゃ?」と思うことがあります。
それでも、先に書きましたけど、犬のシーンが迫力があって、人間くさくなくて、淡々とした詩的な描写が随所にちりばめられていて、すごく好感が持てました。