グランド・ブダペスト・ホテル(2014) | きのうは今日の物語

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グランド・ブダペスト・ホテル
The Grand Budapest Hotel(2014)

 

夕食をご一緒しませんか。

そこで、私の物語をお聞かせしましょう。

 

現在。
1人の少女が、著名な作家の墓石の前で本を開く。

1968年。

作家は本の舞台であるグランド・ブダペスト・ホテルに訪れ、謎の人物からこのホテルについての話を聞く。

1932年。

かつて無一文だった彼は、新人ベルボーイとしてベテランコンシェルジュのグスタヴ・H氏とグランド・ブダペスト・ホテルで出会う。
師であり、親のような存在でもあった彼からたくさんのことを学ぶ日々だったが、突然の殺人事件が状況を一変させた。
全ての物語は、そこから始まる。

 

 

 

独特の色調と正面から見るような画面の構成。
だけでなくて、予告の何もかものテンポの良さも映画の中にちゃんとあり、素敵な映画でした。
というか、ウェス・アンダーソン作品は全部予告に魅かれる。本編も順番に見ていきたいものである。

 

完璧な?コンシェルジュである一方で、というかだからこそというかあらゆるご婦人(年齢高め)の夜の相手までするのをさらっと出してくる笑い泣き

でも、それらは何となく優雅で上品で(上品ではないかも)「古き良き時代」を連想させる。
それもそのはずで、このホテルはそもそも上流階級の集まる社交場でもあり、昔の貴族たちの世界の一つだからだ。

 

その色をあっさりと変えてしまうのはいつも戦争の二文字。
そして、ぼかしてみてもすぐわかるナチスの特徴の濃さ魂が抜ける

 

エイドリアン・ブロディがわかりやすい悪役をコメディ含みで演じていて、「戦場のピアニスト」の弱々しい姿とは真逆でした(そういえばこれもナチスだ)。

一番好きなシーンが、エイドリアン・ブロディ演じるドミトリーがホテルで銃撃戦をはじめるところ。

これ、逃げるアガサを追った末に出くわしたグスタヴに威嚇射撃(当てるつもりだったかも)として何発か発射、という短気で衝動的な悪党の一面だったのだが、銃声を聞いた滞在客(接収されているので軍関係者)、スタッフたちがそれぞれ携帯していた武器を取り出し何故か多数の銃撃戦がはじまるという、わけのわからない場面に笑い泣き

 

話の流れは誰が悪いかは最初からわかっているし、推理劇というより逃走劇である。

いわゆる豪華俳優たちの競演なのだが、ウィレム・デフォーが(演じる役の)イメージそのままの役すぎて、この素晴らしい「無駄遣い」(positiv)が素晴らしかった。

エドワード・ノートンはいつもカメレオンすぎて気づかない……凝視(ハーヴェイも)

シアーシャ・ローナンのアガサはとても可愛らしくて、ゼロがグスタヴに口説かないよう度々釘をさしている爆  笑飛び出すハート

 

命懸けの遺産相続、逃亡しながらの犯人捜し、悪党と善人とベテランコンシェルジュたちの戦い。

それらがポップで明るく、でも上品に描かれていて自分には美しい宝石のような、というか美味しいケーキのような(美味しいケーキはいつも幸せにしてくれる)素晴らしい作品だぁー爆  笑

 

というところからのラスト。

 

ウェス・アンダーソン監督の作品には「突然の暴力」もまた、その特色としてあるらしいですが……。

これが、実際は過去の物語であること(正確には本の中の物語である)を考えれば、皆の顛末が描かれていくのは当然の結果だった。

グスタヴ・H氏の最期はとても氏らしいものです。

ナチスは、捕虜のアイデンティティを奪うことにあらゆる手を尽くした。(ナチスだけではないが)

しかし彼らは結局命を奪うばかりだった。

 

これは推理劇というより逃亡劇で、そして一つのホテルが終わりを迎えるまでの物語でした。