今回の記事では、可積分系、特に、ソリトン理論の入門文献を簡単に書きたいと思います。その内元気が出たら可積分系やソリトン理論の中身についても書きたいです。

このブログもいつもと同様に常に未完成で常に更新されます。おすすめの文献があればコメントして頂けると幸いです。

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インターネット上で読める記事について:

梶原健司, ソリトン ~ 不思議な波が運んできた,古くて新しい数学の物語 ~

この記事はソリトン理論の"雰囲気"を味わうのに良いです。しかし、実際にこの資料を使って計算をしたり、研究をしたりするのは難しいでしょう。その意味でこの資料に載っている計算は流し読みしながらソリトン理論の雰囲気を味わうのが良いでしょう。

武部尚志, ソリトンの数学

この記事も上の記事と同様にソリトン理論の雰囲気を味わうのに良いです。但し、こちらの資料はより"分かった気にさせる"ことに重点を置いており、無限次元行列の計算を有限次元行列の計算で代用し計算例を与える等、学部初年度の学生にとって良い資料と成るかもしれません。

及川正行, 非線形波動 -ソリトンを中心として- 第7章 佐藤理論入門

この記事は、日本流体力学会誌の連載記事の様で、そのうちのいくつかの章は無料で読む事が出来ます(注:全てではないようです)。この記事は表題の通り佐藤理論の入門的資料です。佐藤理論について多少まじめに勉強するつもりがある人は読んでみる事をお勧めします(個人的に一番オススメかも)。

離散可積分系・離散微分幾何チュートリアル2012

この資料は九州大学で開かれた(現在も開かれている)大学院生に向けの離散可積分系の入門講義の配布資料です。可積分系の本は少ないし、高いし…、という方は、この資料を一読し、興味を持った分野について、それぞれの講義資料の参考文献を参考にすると良いかも知れません。

書籍について:

・可積分系全般

中村佳正, 可積分系の応用数理, 共立出版 (2000年)

この本は、数名の著者の手によって可積分系の分野の様々な基礎概念がまとめられています。可積分系の入門にはもってこいの本といえるでしょう。但し、あまり数学的な議論には踏み込まないので、そちらに興味がある方には不満かもしれません。

・ソリトン

広田良吾, 直接法によるソリトンの数理, 岩波書店 (1992年)

この本はどうも絶版のようです。やたら高いオンデマンド版が出たようです。買えないよりはマシでしょうか?)直接法の開発者本人である広田先生ご自身による直接法の解説として一読の価値有ります。この本ほど直接法に関して計算が詳しく書かれている本もないでしょう。研究などで"利用したい人"にお勧めできるかもしれません(実際、某大学で卒研生に読ませている所を見た事があります)。

広田良吾, 高橋大輔, 差分と超離散, 共立出版 (2003年)

この本は、広田先生(離散系パート)と高橋先生(超離散系パート)からなっていて、その名の通り差分方程式論や再帰方程式、超離散について詳しく扱っています。離散系や超離散系に興味がある人にとって手放せない一冊といえるでしょう。

・ソリトン理論及び佐藤理論

三輪哲二 et al., ソリトンの数理, 岩波書店 (1993年)

この本は、最短経路でKdV方程式及びKP方程式とその階層、そして共形場理論的記述から佐藤理論の基礎まで至る道を示しています。最短距離を進む所為か、数学的な定義が曖昧に進む所為か、初学者には読むのが難しいかもしれません。が、得難い一冊だと思います。

高崎金久,可積分系の世界 ,共立出版 (2001年)

この本は、可積分系の大家、戸田盛一氏が考案した戸田格子方程式を中心として、可積分系の世界をめぐるという特徴を売りにしてます。特にソリトン理論の大理論、佐藤理論まで、かなりしっかり書いてある本です。

・その他

井ノ口順一, 曲線とソリトン, 朝倉書店 (2010年)

この本は、幾何学的な立場からソリトンについて論じている本です。例えば曲線の等長、等曲率変形で曲線の従う運動からmKdV方程式を導きだしたり、と言った感じです。この手の研究はまだまだ新しく、その意味で最先端への切符でもあります。