また褒められちゃったぜぃ | ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

主婦にして家事はおざなり、興味あることだけ、猪突猛進の悪妻愚母のドイツ生活

 しつこいようですが、私のヴィシヴァンカ自慢はまだまだ続きます。

 

 去年の年末にネットで購入したウクライナの伝統衣装ヴィシヴァンカ(ソロチカ)。

 びっしりと袖に施された赤い刺繍が美しいワンピースは着るたびに優しい気持ちになり、飽きることなく愛でているのであるが、前のブログに書いた通り、この服を着て歩くとなぜか頻繁にウクライナ人を引き寄せる。

 今日またこれを着て外出したところ、引き寄せたのは前方を走るウクライナナンバーの車だけだったが、別のエピソードがあった。

 

 街に出て、大きなビオラーデン(オーガニックのお店)でぶらぶらしていた時のこと。

 このビオラーデンはかなり大きめの規模で食料品ばかりでなく、奥の半分はエコファッション、自然派化粧品のスペースとなっている。

 奥の方に足を踏み入れ、レジにいた店員さんと目が合って「こんにちは」

 そのままあれこれ売り場を眺めていたら、いきなりすうっと背後から

 「あなたのそのお洋服、とても素敵」

 !!音もなく後ろから声をかけられた私はギョクンとして飛び上がりそうになっちゃった。

 「あぁ、びっくりした!」

 と言いながら振り向くと、さっきの店員さんが立っている。

 「あら、ごめんなさい。驚かせちゃって」

 と言いつつ、あまりすまなさそうにも見えない顔つきである。初老の女性で、ウェーブした銀髪に丸くて太い黒縁の眼鏡がおしゃれな感じ。

 

 落ち着きを取り戻した私は愛しのヴィシヴァンカが褒められたのがうれしくて、さっそく

 「あ、これはウクライナの民族衣装なんです」

 「え、なんですって?」

 私の発音が悪かったのか聞き返すマダム。

 「ウクライナからの民族衣装なんです

 「まあそうだったの。とっても素敵よ。どこでお買い上げになったの」

 レジでは電話が鳴っているのに気がついた私は

 「あの...電話に出られたらどうですか。私待っていますから」

 「いいの、別に構わないわ」

 客が店員に電話に出るよう勧めてどうするってんだ。しかも出ないし!まあこんなことはドイツではよくあることだから一々呆れてもいられませぬ。

 

 しかし、シャイな人が多いこのフランケン地方でここまで食いついてこられたのは珍しく、さすがヴィシヴァンカの威力。褒められた私としても悪い気分はしない。

 私はレシートの裏に、ヴィシヴァンカ、ビンテージと書いて私が購入したサイトを教えてあげた。これでまた一人、ヴィシヴァンカや手仕事の美しさに打たれる人の輪が広がっていくと嬉しいな。

 

 今日の私の格好は、ヴィシヴァンカの上に、黒いノースリーブのダウンジャケット。中国人の友達がくれた少数民族の赤いネックレスに耳元は日本の赤い折り紙ピアス。帽子はモスグリーンの男性用中折れハットといろんな国が集まったなかなか個性的ないで立ちである。自分ではいいと思っているのであるが、店員さん以外には何も言われないので、本当のところはわからない。

 

 ちょっと前なら、男物の帽子を被るのはいかがなものか、とか、こんな変わったものを着て外出したって、行くところはスーパーだしなどとためらって無難な格好をすることも多かった。

 しかし思い切って自分の好きなものを着て外に出ると、とても楽しい。しかも他の人が誰も自分のような恰好をしていないのがまた楽しい。

 ドイツ人のように洋服をカッコよく着こなせる長い手足や小さな顔はないが、その分創意工夫を凝らし、自分に似合うもの、着ていて楽しい纏う悦びを見つかられたのはある意味贈り物であった。と、灰色の空の下、黒やグレーの無彩色の装いで行きかうドイツ人を見ながら思うのであった。