美の基準の変容 | ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

主婦にして家事はおざなり、興味あることだけ、猪突猛進の悪妻愚母のドイツ生活

 ドイツに住むようになって何だかんだで19年。

 その間にいろいろと価値観の変容があり、日本から持ってきた"これは良いこと"、"これは悪いこと"という判断がこちらでは必ずしも同じではない と気づきを迫られる機会の連続であった。

 美の基準もその一つ。

 数日前、美容情報を求めて日本語でネット検索をしていた時のこと。

 「美しくなる方法決定版」として方法を伝授してくれるとあるのだが、うーん・・・。

 

 まず引っかかるのが、これを読むのは基本的に日本の女性だと思うのだが、そこに出てくる写真のモデルが全員外国人。もっと言うと白人の若い女性。上から下までこれすべて西洋人である。

 これって日本の女性が読むんだよね。 どうも奇異な感じがしてしまうのだが。

 大げさに言うと、これってある意味、目から入る洗脳ではないだろうか。きれいな人は白人、欧米人が美の基準みたいな。

 そりゃあ記事に出てくるお姉ちゃん達はみなモデルで若くてきれい。スタイル抜群でファッションセンスも申し分ない人達である。

 

  自分だって日本に住んでいた時、そういう風潮に疑問を差しはさまなかったので大きなことは言えないが、日本人向けの商品に登場するモデルが全員外国人というのは変と言えば変じゃないだろうか。ちなみにドイツの広告に出るのはほぼ大半欧米人である。

 

 しかもドイツにある程度住んでいるから思い切って言ってしまうが、欧米人でもモデル並みの美人ばかりではない。特に中年になった白人女性の変容ぶり、横幅の広がり具合はそれは目を見はるものがある。

 

 記事には続いて、「色白は七隈隠す」「キレイで色白の肌はそれだけできれいな女性と周りから思われるでしょう」 とある。

 日本からやって来て一番変わったのがこの美白に関する観念かな。

 日本にいた時の私は美白一辺倒。日焼け止めを塗ったり、いろんなクリームを重ねたり、夏も長袖と用意周到だった。白くて透き通るような肌に憧れていた。

 

 ところが、ドイツに来て最初の年。

 暗くて陰鬱でほとんど日光が射さない悪名高いヨーロッパの冬を過ごした後で、私の価値観はガラッとひっくり返った。

 日光は貴重。日光は美しい。太陽にキスされたような小麦色の肌こそ健康的で美しい。あっさり180度の変節である。

 だからこの人達、2月のまだ肌寒い日、ひざに毛布を掛け、足元に簡易ストーブを持ち出してまで、オープンカフェでうっとり日光に顔を向けているのか。

 だから何かというとすぐタンクトップやキャミソールなど肌をさらしてすこしでも太陽の光を取り込もうとするのだな。

 わかった、わかりました。変な人達だと思っていたけど、納得です。やっぱり過ごしてみないと分からないこともあるのだ。

 

 私は昔語学留学していたイギリスの学校で遠足に参加したところ、初夏で日焼け止めもしていなく、あっという間に焼けてしまった。

 スイス人のクラスメートたちが私を見てなぜかうれしそうに、

 「あらアクサイ、あなたってすごく早く焼けるのね」

と言い、色の白い人に憧れていた私はムッとしたのだが、今にして考えるとあれは彼女たちの誉め言葉だったのだろう。

 紫外線の害が盛んに言われる今になっても、こちらでは日に焼けた小麦色の肌が美の基準である。ほんと、その気持ちわかるわぁ。

 

 19年たった今では自分もすっかり小麦肌派である。

 長年慣れ親しんだ価値観がたったひと冬で変わってしまった。

 やはり住んで体験するって大きなことなんだ。