春が来た | ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

主婦にして家事はおざなり、興味あることだけ、猪突猛進の悪妻愚母のドイツ生活

 昨日、ドイツにおける制限措置の緩和が発表されて以来、急に物事が再び動き出したような感がする。

 

 朝メールをチェックすると、領事館からのお知らせで、一部の措置が緩和されるとあった。

 子どもを持つ親としては、来週からの段階的な学校再開に加えて、遊び場がオープンされるというのが大きなニュース。

 すぐ子どもたちに伝えたところ、娘二人は行く気満々。はいはい、まず宿題を終えてからね、とけん制。

 

 右隣の親切な老夫婦N家のご主人に呼び止められ、庭越しに切ったばかりのFlieder(日本語ではライラック)の花束を手渡される。

 「すごい!私これ大好きなんですよ。どうしてわかったんですか」

 「去年も差し上げたからね。覚えていたんですよ、あなたがこの花好きだってこと」 うれしーい!さっそく花瓶に入れて記念撮影。

 フリーダは今まさに花盛りで、通りを歩いていると、家々の庭から漂ってくる、えもいわれぬいい香りが鼻をくすぐる。

 

 続いて、こちらも規制緩和の一環である美容院へ。ここ数週間で、私の髪も後ろが伸びてぼさぼさになっている。再開のビラを見た時すぐに予約を入れた。

 近所の美容院に行くと、店の前に看板が立っている。入店に当たっての留意事項 マスク着用、ソーシャルディスタンス順守がイラスト入りで示されている。

 店に入るや否や、トイレで手洗いをするか、消毒用スプレーで殺菌するか選んでくださいと言われ、スプレーを選択。

 店も客と客との間を大幅に離して、何だかガラーンとした印象だ。

 私はただでさえマスクが苦手なのに、美容師さんたちは一日中これを付けて仕事をするわけで、本当に頭が下がる。

 しかしこの人達、よっぽどおしゃべり好きなのか、馴染みの顧客なのか、マスクをものともせず、ずっとお客と世間話に興じている。黙って髪を切られているのは私だけ。

 

 ちなみに、日本人(アジア人)の間ではかなり悪名高いドイツの美容院。理由は東洋人の堅い髪質に慣れていないドイツ人美容師にザンバラジャキジャキの無残な髪型にされるから。

 ここも隅の谷のはっきり言って場末の美容室なので、かっこよくしてもらおうとか大それた望みを抱いてはいけない。

 ただ幸運なことに、店長の女性はそれなりに技術があるので、私はいつも店長指名、ごく無難なカットという条件で、ここに通っている。

 今回も、後頭部刈り上げにされそうなのを直前で阻止し、ショートボブに収めてほーっと一息。まずまずの出来である。店長はもちろん大満足で、

 「うーん、すごくいいわ。とても素敵に見えるわよ」

 はっきり言って、彼女はいつも、うーん、すごくいいわ、とても素敵に見えるわよ、である。私とはかなり見解を異にするのだが、今回はまあまあお互い気に入ったかな。

 しかし支払いの段になってびっくり。通常の12%も割り増しされている。これも新しい規則なのだとか。一度に沢山の顧客を入れられないサロンをサポートする措置なのだろうが、これならミュンヘンの日本人美容院と変わらない値段だ。もちろん技術サービスの差は言うに及ばず。

 外に出て、むしり取るようにマスクを外すと、店の外で待つ子連れのお母さんに、

 「あー、やっと人間に戻れた、みたいな感じなんじゃない」

と笑われた。その通りです。

 

 家に帰ると、待ちかねていた娘二人と一路公園へ。

 途中にある地元の幼稚園2か所とも開いていて、緊急託児の子どもたちが少人数ではあるが、楽しそうに庭で遊んでいる。こうでなくちゃ。やっと見慣れた日常生活が戻ってきた感じである。

 通りに面した窓には

 Ohne euch ist nix los! (きみ達がいなくちゃ、つまんないよ!)

のプラカードが。本当に早くまたみんなで遊べるといいね。

 そして公園に就くと、まあ、いるわいるわ、通常をはるかに超える子どもの数。大半が男の子である。小2の娘のクラスメートの男子のうち、半分ぐらいが来ているのではないか。

 一応入り口に、1.5mの距離を守って遊びましょうなどと書いてあるが、興奮した子ども達は鬼ごっこをしたり、一緒に遊具によじ登ったりおかまいなし。まあしょせん無茶な注文だな。

 しかし本当に楽しそうに、エネルギーを爆発させながら走り回る子ども達。見ている私もうれしくなってくる。やっぱり子どもはこうでなくちゃ。

 

 子ども達が遊び始めたのを見届けて、私はこの時期旬のアスパラガスを買いに、近くの農家に自転車を走らせる。

 着いたところ、本日売り切れと張り紙が出ている。

 えー、せっかく来たのに、とあきらめきれず入っていくと、おばさんが、

 「白いアスパラガスは売り切れよ。グリーンの方だったらまだあるわ」

 それそれ、うちは緑がいいんです!と思わず手を叩き、おばさんに笑われる。

 意気揚々とグリーンアスパラガスを積んでうちに帰る。日本ではあまり食べたことのなかったアスパラガス。4月の終わりから5月いっぱいまでの季節限定野菜。ほくほくのジャガイモとバターたっぷりのソースオランデーゼと一緒に食べるとおいしい。

 

 食後は中国語の宿題を始める。

 ホンからのお達しで、今学期は、中国語のテレビドラマを教材に授業を進めるという。現代が舞台の刑事ドラマである。

 こりゃ完全にホンの個人的好みだな。先学期も、古代を舞台にした、武侠小説かつラブストーリーというわけのわからない教材だったが、今回もかなりポップな題材である。

 しかも、第一話の最初の15分の字幕をドイツ語に訳せという宿題。はっきり言って中国語の字幕を書き起こすだけで、むちゃくちゃ時間がかかる。ホンがこんなにスパルタ先生だったとは意外であった。そやけど、コロナ封鎖の間ロックダウンしていた私の脳みそは、そんな簡単には動き出さへんでぇー。

 

 というわけで、盛りだくさんの日であった。コロナ封鎖の静かな数週間を経て、激流のように物事が再び動こうとしている。

 静かな時期も悪くなかったが、こうやって新しい流れが始まると、やはりウキウキしてくる。

 何が起こるかな。わからないけど楽しみな予感がする。まさにやっと春が来たという感じである。