ノルウェーは、一般的には、フラットな社会、即ち、階級のない社会と言われている。
先代の王様、オラフ王は、1973年のオイルショックの際に、庶民の足である路面電車に乗ったことが逸話となり、「庶民の王様」と呼ばれた。スキーを担いで乗っていた王様に、最初は誰も気づかなかったそうだ。
その写真がこちら↓
先生や上司も、敬称を使わずに、ファーストネームで呼ぶのが普通だったり、
国民全体が「平等」であることを誇りに思っている節がある。
彼らに言わせるとそれは「バイキング精神」なのだとか。
それでも、歴史的に「階級」というのは存在していて、子供たちの会話の中で、
「あの子はベストカンテン(西側)だから。」とか、
「あの子はゲットー(団地などの集合住宅が集まる地区)に住んでいるから。」などと、特に悪気や蔑みの意味を含まずに話していることがある。
「ちょっと、ゲットーなんて言っちゃっていいの?」と私なんか思ってしまうが、友達同士で平気で使う言葉らしい。
ゲットーというのは、ユダヤ人がナチスにより強制的に住まわされた居住地区でしょ?
イメージ的に、えらい、ダイレクトな発言だと思うけど。
その中でよくでてくるのが、「SOSS」という言葉。
「うちの学校にも、SOSSが増えてきて、嫌になっちゃう。」
「あの子はいかにもSOSS。」など。
SOSSを英語にするとSpoiled child あるいはPreppy。
日本語にすると、前者は「甘やかされた子供」、後者は「良家の子女」となるが、
どちらかというと、前者の意味に近いものがある。
「お高くとまっている人」とでも言ったらいいのか。
子供なのにブランド物を着て、勉強よりも社交に力をいれているセレブに憧れているようなタイプの子供達。お小遣いは湯水のように沸いてでてくると思っている子たち。
実際、ブランドもので身を固め、そのまま雑誌のモデルにしてもいいような子供たちを、ノルウェー人が多く住む地区ではよく見かける。
オスロを訪れたことのある人であれば、気付かれたかと思うが、王宮より西側の地区には、邸宅が多く、東側、特にアーケル川をはさんで東側は、レンガ造りのアパートが多い、これらはもとは労働者階級の住居として建てられたらしい。
余談であるが、その辺を勉強されたい方は、フログネル公園の中にある
をお勧めしたい。
ただ、いかに社交的であるか、いかにいいものを持っているか、そんなことにエネルギーを費やすことに疲れている子供も多いらしい。大人の見栄がそのまま子供にも伝染しているのだ。
奥さんが学校の心理カウンセラーをしているという知人から、そんな話を聞いたことがある。
うちの子達なんかは、「日本みたいに制服があったらいいのに。」とよく言っているし、
「うちはオストカンテン(東側)でよかった」とのたまう。
実際、私達は外国人なので、東側のほどよく人種が混ざっている地区に住んでよかったかなと思っている。
日本もある意味「体裁」が重要な社会なので、その辺は理解しやすいかもしれないが、人間形成の上で、物を与えすぎるのはいかがなものかと思う。
やはり、裸で勝負できる人間に育って欲しい。
例えば、頭脳、体力、精神力、などを磨くことが必要だということをわかって欲しい。
それでも、ノルウェーの社会は、基本的には皆平等という精神が息づいている生きやすい社会だと私は思っている。
