この夫婦、英国に40年住んでいるけど、

英国人の友人がいない。


奥さんは、私と3才くらいしか変わらない。


彼女には、電話をかけるローテンションリストがあって、

朝は、日本在住の友人に、順番にスカイプ電話をしている。

なぜ、スカイプなのか、不思議だった。


私も、リストに入っていたようで、

日本にいた時は、よくスカイプ電話がかかってきた。

用事も特にないのに、なんだろう、

覚えていてもらって、ありがたい、ぐらいに思っていたが、

ローテンションだったか。


電話で近況を確認すると、

今度は、別の人にスカイプ電話をかけて、さっき聞いた近況を伝えている。

ま、ゴシップですね。

私も含めて、皆、ゴシップのネタにされている。


ロンドンにいるのに、日本の芸能ニュースと 日本人の情報を、私より知っているなあ、

とは思っていた。


そんなわけで、このご婦人、一日中、古ぼけたデスクトップ パソコンの前に座っている。

それなら、ブログなど書いて、発信してみたら、と提案してみた。

ネットサーフィンは、できるけど、パソコンでなにかを作成することはできない、という。

ご主人は、もっとパソコンにうとい。

夫妻は、アマゾンショッピングも、できないと言う。


食事も、パソコンの前で、お茶漬けを食べる。

NHKのドキュメンタリーにうつるような、日本の風景。


日本のネットニュースと、

日本のテレビバラエティ番組

日本の天気予報を見て暮らしている。


あとは、日本のパソコンゲームを1日中。

ゲームの ピコピコという音は、早朝から聞こえてくる。


パソコンは、食卓のすぐそばにある。

食卓イスを、小さなモニターの前に置いて、妻が座る。

夫は、その後ろに 食卓イスを置いて、モニターをのぞいている。

なぜか縦列座り。

そうやって、長時間過ごしている。

もっと、くつろげるテレビの見方があるだろうに。

もう ずっと こうしてきたのだろう。


費用をかけなくても、

クオリティ オブ ライフ をあげることはできるのになあ、

と2人を見て思う。

他人が、口を挟むことではないから、私は黙っている。


この家のカルチャーは、

マナー、コミュニケーション、住環境、

ゴミ出しに至るまで、

英国の文化と違う。


私には、ものすごいカルチャーショックだ。


奥さんは、英国の食事は、全部きらい、と言い切る。

食べるのは日本食だけ。
パンもきらい。

白いご飯だけ食べる。

ご主人が、日本食を扱う職場なので、和食材はそこからゲット。

英国の情報は
日本語のコミュニティー紙
日本語のブログ
日本語のYouTube
から、得ている。


英国 や ロンドンの情報は
英語でなくても
日本語で そん色なく得られる時代。

在英は長いけれど
職人さんなので 

英語は今もほとんどわからないとのこと。
当然 こちらの人とソーシャルライフもない。

ゲームと日本のドラマや番組を見て、

毎日過ぎていく。


日本にしか興味がないのに、

なぜ英国に住み続けているのか、聞いてみた。


英国の年金を、日本で受け取ると、

金額が少なくなるらしい。


移民局の政策が変わるといけないので、

最近 パスポートも英国に変えてしまった。

これで 本当の英国人になったのに

気持ちは前より、日本人になってしまったようだ。


これまで見てきた家庭の中で、

この老夫婦の暮らし向きは、1番厳しい。

小さな古いテラスハウス。

食洗機も 乾燥機もない暮らし。

私が来るまで、トースターもなかった。

内装は、30〜40年前に購入した時のまま。

昔、英国の家は安かった。

その頃に購入したので、

持ち家があるのは幸いだ。

年金の未払いがある、とのこと。

私の部屋代が、少しは足しになるなら、嬉しいなあ。


この夫婦とは別に、

50年も住んだ英国を離れて、

日本に帰った老人の話を、近所で聞いた。


在英日本人は、老後は日本で、と思っている人が多い。

英国は、不動産も物価もものすごく高い。

物価の安い日本なら、老後は安心だ。

英国の家を売れば、まさに左うちわ。


私は、逆をやっているのかなあ〜

英国のソーシャルライフが楽しいから ここにいるのだけど。


試験が終わったら、引越ししなければ。


この家にいたら、

何のために日本を出てきたのかわからない。