数か月以上も前である。
 吾野緒濫人はChatGPTにシェアインターナショナル系の情報を問い合わせた。すると、そんなやばそうなことは知らないみたいな回答だった(今はもすのごく正確) 。
 アップルブランデー吸引法について聞いてみたときには、それは日本では違法なやばいものだというトンデモな回答だった。

 しかし生成AIは、英文の生成は超得意だし、日本語も和歌や俳句を生成したりする。翻訳能力は異常に高く、乱れた日本語でも見事な英語に翻訳して生成してくれる(見事かどうか、英語がわからない緒濫人には分かるはずはないのだが、何となく、直観でそう思う)。

 そう言えば、Google翻訳とChatGPTで行った日本語~英訳は、翻訳者の職業を駆逐することを確認している。が、その逆、英語~和訳は、ほぼほぼOKなのだが、表現の機微において、人間には到底及ばない。

 ところで吾野緒濫人の知人が、ChatGPTと哲学的対話をした記録を送ってきた。
 ChatGPTの回答に〝「無」や「空」の概念を示しています。具体的には、すべての対立や特性を超越した状態、つまり、何ものにも依存せず、形や色、時間や空間、因果関係にもとらわれない存在”という返答があったという。
 知人は、生成AIは、すでに宗教家の代わりになるだろうと予告した。

 吾野緒濫人は、この哲学的言葉をイーメジ化するとどうなるかを、ChatGPTに生成させてみた。

[画像提供:ChatGPT]

 何となくそれっぽいが、深みはない。イラスト画像生成は、まだまだかもしれないが、ここまで作ってくれると、イラスト家は淘汰されちゃうだろう。すでにAI的画像は巷に溢れているようだし……。

 生成AIの翻訳能力を生かして、一冊の日本語コンテンツを翻訳していた時のことである。
 般若心経の冒頭の一節の漢字原稿にぶつかった。
「これ、訳してくれるんかぁ? やってくれなかったら、どうしよう?」
 吾野緒濫人の小さな脳味噌の一角が曇った。
「やらせてみよう」
 何のことはない、あっと言う間に杞憂は溶けた。

 その問いと答えが次である。

「観自在菩薩。行深般若波羅密多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄……」
――生成AIの英訳
"Beholding the wisdom of Avalokiteshvara Bodhisattva, deeply practicing Prajnaparamita, seeing that all five aggregates are empty, thus transcending all suffering and adversity..."

 これを見て、英語が分からない吾野緒濫人なのだが、般若心経の一節の意味が伝わってきた。
「こいつ、おれより知っている……」
 密かに緒濫人は、生成AIの知能にひれ伏しそうになった自分に愕然とした。
 が、本当に生成AIは、仏教の真髄「空論」を理解できているのかどうか、確かめた。
 Googleの生成AI、Geminiに、先の般若心経の一節の英訳の和訳を依頼した。

♣Gemini和訳
慈悲の観音菩薩の智慧を仰ぎ、般若波羅蜜を深く修行し、五蘊皆空であることを悟り、こうしてあらゆる苦しみと逆境を超えていく。

 おお! なるほど。漢字よりもよく理解はできそうだ。では、単純な翻訳をするGoogle翻訳ではどうか?

♣Google翻訳
「観音菩薩の智慧を観て、般若波羅蜜多を深く修行し、五蘊がすべて空であることを悟り、すべての苦しみと逆境を超越する…」

 少し言葉が違うが、予想どおり。さて、ChatGPTは?

♣ChatGPT和訳
「観音菩薩の智慧を見つめ、深く般若波羅蜜を修行し、五蘊皆空と見て、一切の苦しみと逆境を超越する...」

 ぐっと言葉を圧縮しているが、なるほどである。
 そこでさらに聞いてみた。

「これは仏教の何かの教えですか?」
♣ChatGPT
 はい、これは仏教の教えの一部です。具体的には、「般若心経」というお経の一節です。般若心経は、仏教の大乗経典の一つであり、特に空(くう)の教えを中心に説いています。この経典は、多くの仏教徒にとって非常に重要であり、その短いながらも深遠な内容から、日常的に唱えられることが多いです。

「へえー」である。きっちり「般若心経というお経の一節」とまで言い切った。つまり、ChatGPTは、般若心経を知っているのである。さらに解説までしてくれるだろう。吾野緒濫人には、そんな知識も能力もないのに。
 同じことを、GoogleのGeminiでもこう聞いてみた。

「これは何かの哲学の言葉ですか?」
♣Gemini
 引用された英文の哲学的考察
 提示された英文は、大乗仏教、特に法華経と般若波羅蜜経の教えを彷彿とさせる内容を含んでいます。大乗仏教の中心的な哲学概念である空(くう)と慈悲(karuna)を反映しています。

 さらに、主なポイント「観音菩薩、五蘊、空、苦」のそれぞれの言葉の解説、さらに解釈、哲学的意義「空、慈悲」の解説があり、結論「引用された文章は、大乗仏教の核となる教えを凝縮しており、智慧と慈悲の涵養を通して悟りの道を歩むことを強調しています。空性の理解に基づいた深い哲学的視点を反映しており、何世紀にもわたって仏教思想と実践に形を与えてきたものです」とかなり長い解説を宣われた。

 生成AIのどや顔が目に見えるようである。ならばChatGPTにやってもらった。
「どや顔という得意医満面な表情があります。「どや顔」のイメージをお願いします」
 それが次。肖像権は大丈夫か? AI太郎?。さらに数度、再生成をさせたが、どんどん滑稽なお笑いにもならない変顔になってしまうので割愛する。


[画像提供:ChatGPT/AI太郎]