「これから裁判所へまいります」 ②
大和田小向かいの田之頭勝巳宅。泥だらけの家屋を片づけていた夫妻と子どもたちは、車のクラクションを聞いて慌てて外に飛び出した。田之頭は「まさか、まだぬかるんでいた大和田には来られないだろうと思っていて・・・・・先生の気迫に圧倒されて返事するのが精一杯でした」と振り返る。池田は「ともかく誰よりも先に立ち上がるんだ」と励ました。
大和田小を左手に見つつ、佃五丁目で薬局を営む松村文雄宅へ。その場に集った樋口明。家業が酒屋だったが、麻雀にのめり込み、朝帰りで昼まで寝る。仕事は親と妻に任せきり。そうした日々が10年続き、借金もかさんでいった。
「正直、自殺を考えたこともありました。でもその日、初めて先生と間近に出会って、夫は変わりました。きっぱり賭け事をやめ、少しずつ働き始めました。『先生は温かい人だ、心の深い人だ』とよく話していました」(妻の洋子、婦人部副本部長)。
出会いを機に家業は好転。樋口は副本部長などを歴任し、八五年の人生をまっとうするまで真面目一徹の人生を歩んだ。
この松村宅で池田は「これから裁判所にまいりますので、これで失礼させていただきます」と挨拶している。
「車の中から身をのり出して、私達年寄りに『信心第一にいつまでも長生きして頑張ってくださいよ』と励ましてくれました」(古谷志づの手記)。