電話口で聴いた「変毒為薬」 ①
「非常時事態宣言」の発令から4日後の5月22日。佐々木の携帯電話が鳴った。「池田先生が書いてくださったよ!」電話の主は、佐々木の家に聖教新聞が届かなくなっていたことを知る学会男子部の先輩だった。この日、同紙に池田大作のエッセーが掲載された。先輩はその文面を、一言ずつ電話口で読み上げてくれた。
───大好きな大好きな宮崎は、その名も「日向」すなわち「太陽の宝土」である。太陽は何ものにも侵されない。いかなる闇も必ず打ち破り、万物を蘇えらせる───
───尊き皆様方の「変毒為薬」の勝鬨の轟く日を、深く深く祈念してやまない───
この「変毒為薬」(=毒を変じて薬と為す)とは、信仰によって、自分の受けた苦しみ(=毒)を功徳(=薬)へと変えていく仏法の考え方である。
口蹄疫の広がるスピードは想像を超えていた。宮崎県が三頭の牛に感染の疑いがあると公表したのは4月20日。一週間後には国内初となる豚への感染が確認された。ゴールディンウイークが明け、しばらくすると、殺処分の対象は6万頭を超えていた。感染していなくても、感染を食い止めるために殺処分せざるをえない家畜もいた。
宮崎の人々が絶望に襲われ、仕事の誇りを奪われ、不安に苛まれていた時だった。佐々木はこぼれる涙を拭きながら、電話越しに池田からのメッセージを聴き続けた。