冷戦下の沖縄。北京など中国の主要都市を射程におさめる核ミサイルが配備されていた。悲惨な地上戦の記憶も生々しい同地を訪れた一人の青年。彼の胸中から、祈りにも似た情熱が、ほとばしり出ようとしていた。
詩人は謳った。
「民衆は海である」
「常に民衆とともに歩め」
ここに、一人の人物がいる。
池田大作。
1928年(昭和3年)生まれ。
19歳、太平洋戦争の敗戦から2年後の夏。師と仰ぐ人に出会い、「民衆の海」へ船出した。
いまだ、誰も成し遂げたことのない大航海。
「こんな島国で、そんな絵空事を」
嘲笑う人は数知れなかった。
32歳の5月、師の後を継いで立った。
以来、50星霜を超える。
嵐の朝も、霧の夜も、舵を取り続けた。
「それが師匠との約束だから」と。
迫害があった。中傷があった。裏切りがあった。分断を謀る者たちが。無数のレッテルが貼られ、デマが飛び交った。
──しかし、ある文人は綴った。
「虚構は、事実を以って粉砕される」
「乳液のように曇らされた磨硝子のむこうの歴史を、可能なかぎり鮮明に呼び戻そう」と。
船の名は「創価学会」。
その航跡を辿ると──
「日本」が見えてくる。
「世界」が見えてくる。
「人間」が見えてくる。
池田大作と、その時代。
歴史の真実を求める旅へ、読者の皆様とともに出発したい。
まず、池田のライフワークである小説『人間革命』をテーマに据える。『人間革命』は、池田の師・戸田城聖の伝記小説であり、創価学会の歴史が綴られている。
その連載の日々は、それ自体が、人間の生命そのものの変革=人間革命によって、具体的に平和の国土を創ろうとする挑戦であった。
本稿第一回の舞台は、『人間革命』で論及された一衣帯水の国「中国」、そして執筆開始の地「沖縄」。
では、物語の扉を開こう。