”ファーストレディ”同士の対話になった。
通訳は王妃にあいさつした。美しい黒髪を後ろで結んでいる。
「スウェーデンには福祉の長い伝統があります」
洗練された発音で、嫁いだころの記憶をたどりはじめた。
町を歩くと、故国ドイツと比べて、よく身障者を見かけた。バリアフリーが進み、共に生活できる社会基盤が整っていた。
「人間はだれでも、何らかの課題を持っています。身体の障害も、そうした課題のひとつにすぎません。決して欠点でも負い目でもありません」
通訳は、王妃の意見を香峰子夫人に伝えた。むろん、身障者や社会福祉の問題について、専門的に準備してきたわけではなかった。だが・・・・・・。
「その通りだと思います」
白いスーツ姿の夫人は、自然に応じた。
「私どもの創価学会にも身障者のグループがあります。そうした方々と語り合っています。『たとえ身体は不自由でも心は自由です。胸中に必ず自由自在の境涯を開いていけます。宿命に負けず、力強い人生を生きましょう』と」
じっと聞き入る王妃。強い感銘を受けた様子が伝わってきた。