スウェーデン王宮は、水に浮かぶ宮殿である。メーラレン湖とバルト海を結ぶ水路に位置している。
ストックホルムに滞在していた会長がアーチ型の入り口をくぐったのは、1989年(平成元年)6月5日の午前10時だった。
ガラスの格子戸を抜けると、広い中庭を囲み「ロ」の字型に焼失した王宮跡に建設されたものである。建築様式もバロックとロココが混在する。
部屋数608。多くが公開され「世界で最も開かれた王室」の名にふさわしい。
一行は王宮の奥へ招き入れられた。「シビラの間」。随行者は、はっとした。「シビラ」は現国王の母君の名前ではないか。親しい来客を遇するときだけ使用される。
香峰子夫人の通訳がサッと室内に目を走らせた。職務柄、配席は一大関心事である。
マントルピースの前に黒い円形テーブルと白いチェアセットが対になっている。一対だけではない。同じような組み合わせが部屋にいくつもある。
通常の会見では、先方と池田会長を中心に、同席者が取り囲む。この配置では、そうならない。国王と会長。王妃と香峰子夫人。それぞれ個別の会見になる。