結局、金曜日。
総務の林さんからは何も言ってこないから、私の方から聞きに行った。
「メールで送りました。」とだけ、私の目も見ずにそっけなく言われた。
社長室戻って、メールみたらメッセージは入ってたけど、なにも書かれていなくって、添付書類で航空券とホテルの予約インボイス3人分あった。
ムカついたけど、気にしないことにした。
10時の休憩時間にミキさんにラインした。
「シカゴじゃなくってフィリピンに行くことになりましたーTT。」って。
シカゴは夜の8時。上手くいけばすぐに返信がくるかなーって思ってたら、来た。
「フィリピン工場? 常務の耳にも入ってるけど、例のクレームの件?」
って。
「はい。そうだと思います。昨日、社長に一緒に来いと言われたんです。」と、私。
「そう。 〇○○社の社長は常務とも仲がいいから、今回の件は、常務もすごく気にしてる。 実際に指揮をとってるのは(本社の)本部長だけど。 」と、ミキさん。 〇〇〇社は、今回クレームを出した顧客。
「そうなんですか。 しっかり社長のサポートをしてきます。 」と言って、会話を終えた。
昼食後、社長室で仕事をしていたら、何か考えてた社長から、話しかけられた。
「エイコさんには話しておこう。 社長室長だ。 僕の右腕だ。」と、びっくりするようなことを言われた。
「実は、今回の市場クレームの件で、顧客から賠償金を請求されているんだ。 本社からは、フィリピン工場が出荷したのだから、そのマザー工場が責任をとって肩代わりしろと言って来た。」
「え? うちがですか?」
やっぱり、出張はクレームの関係だった。
「そうだ。 だからその件で、フィリピン工場に一緒に来てもらう。 本当に原因は工場だけなのか、どうか自分の目で確かめるためだ。」
私が返事をしないでいると、自分に言い聞かせているような口調で、社長が言った。
「確かに不具合を出荷検査で捕まえられなかったという落ち度はフィリピンの工場にある。でも、不具合は進行性不具合だから、出荷の段階ではまだ不具合に発展していなかった可能性がかなり高い。」
進行性不具合というのは出荷の時点では良品だが、最終製品として市場に出てから、ユーザーが使用しているうちに、熱や振動などでどんどん不具合に発展していく症状で、とても頭の痛いモード。
「だからいつまでたっても、原因がわからなかったんですか。」
私は、できるだけ当たり障りのないことを言った。
「そうだ。 設計上の問題の可能性もある。ワイヤーのボンディングの仕方に無理があるのに加えてマージンが狭すぎる。 デザインレビューの段階で、工場側はそれを指摘したらしいが、本社から押し切られた感じだ。 本社はマスプロに移管さえしてしまえば、あとは知らん顔だからね。」
「え? じゃあ原因は本社にあるかもしれないってことですか?」
「可能性は否定できん。」
「。。。」
「とにかくフィリピンで実際に自分の目でラインを見たい。賠償金を肩代わりするかどうかは、それからだ。」
私は思い切って聞いてみた。
「賠償金っていくらなんですか?」
「20億だ。」と、社長。
「20億。。。」
あまりにも大金すぎて、現実感がなく、どんなリアクションをしていいかわからなかった。
「当然だが、20億なんてない。 出したらうちは潰れる。」
と、社長。
「出さなかったら?」私は聞いた。
「出さなくても潰される。 責任をとれないということで、マザーの役割をとりあげられ、生産設備などすべて他の国内工場に移すと本社が言うだろう。」
お先真っ暗。 入社してまだ2カ月なのに。。。
あーあやっぱコンビニでバイトしてればよかったって思った。
でも、社長にはあきらめとか、焦燥している感じはなかった。
「社長、どうするおつもりなんですか?」
私は、恐る恐る聞いてみた。
「耐え忍ぶよ。」と言って、私に微笑んだ。
いじわるー。 でも、格好いい-。
長くなるからまたねー
20億ー