11月27日(火) どんよりと・・・
昨夜は5、6年ぶりに会う友人T君と酒を酌み交わした。
場所は銀座。4丁目の交差点に近い和風料理の「加賀屋」さん。
「日本一サービスのいい旅館ナンバーワン」を取り続ける能登半島・和倉の「百万石・加賀屋」直系の店。
徳島をこよなく愛する彼は、俺のブログに折に触れてコメントを入れてくれる「徳島」さんだ。
昭和39年4月。思えば東京オリンピックの年だった。
俺と彼は同じ早稲田大から某社に一緒に就職した仲だ。
銀座はもうすっかりクリスマスモードに入っている。たくさんの人々が行き交う。賑やかだった。
並木通りの入り口でパチリ。銀座のど真ん中で見る紅葉が珍しくて。
徳島と阿波踊りは切っても切れない。
その阿波踊りを取り上げ、親子二代の恋物語を大人風に作り上げたのが、映画・「眉山」。
題名の眉山(びざん)は徳島市内にある山の名だ。徳島人の心のよりどころかもしれない。
俺たちの話もその映画で盛り上がった。彼が「11月にはDVDが出るから観てよ」、って俺に言ったのはまだ暑くなる前だった。
そのDVD、俺がそろそろ売り出したかなぁ、と思ってたら、二男のユー坊が5日ほど前に、「お父さん、これ」って差し出した。
ちょっと遅い俺への誕生日プレゼントだと。
「レンタルはとっくに出てるのに、遅いんだよなぁ」と、独り言のようにつぶやき、照れくさそうに。
うれしいもんだよ。
この子のやさしさは、いつも俺の胸にじんわりとした温かさをくれる。
その晩、9時前に部屋へ引き上げ、一気に観た。
松嶋菜々子の着物姿がとてもきれい。うす緑色の無地の着物だ。俺の大好きな色。
母親役の宮本信子もよかった。凛とした、小股が切れ上がった芸妓上がり、っていうような設定。
だが何よりも素晴らしかったのは、ストーリーの脇役、
「阿波踊り」そのものだった。
きれいな衣装、あの笠、あの下駄と白足袋。タップのように下駄の音がお囃子になっている。
絶妙な足の運び、指がピンと伸びた手の微妙な動き。
踊りが最高潮に達したとき、「さぁ、いよいよ三十三連の総踊りです!」と案内が出る。
一斉に地元の名だたる連の踊りが始まる。ゾクッと鳥肌が立ったよ。
圧倒され、その総踊りのシーンだけ何度か繰り返し観た。
「死ぬまでに一度は観ておかなければいけないな」、そう思った。
それほど素敵だった。きれい、なんてもんじゃなかったよ。
作者・さだまさしはこの映画で何を訴えたかったのか、なんてちっちゃなことさ。
阿波踊りをこれだけ多く作品の中に取り入れたってことは、彼が充分この踊りの価値を認めているからだろう。
そんな話を入れながら、二人の回顧話が続いた。
徳島さんの長男がやって来たのはもうそろそろ酒も尽きる頃だった。
彼が息子に話し掛ける様はやさしく、慈愛に満ちていた。
「トクさんのおかげで息子と酒が飲めた」と彼が別れ際に言った。
俺はすっかりオヤジになって、「親孝行してよ!」って息子の肩を叩いて別れた。
こんな酒が飲めるキッカケは俺のこのブログだ。
ときに厄介だが、書き続けて来てよかったと思いながら街を歩いた。